排尿障害・尿道狭窄

排尿障害 排尿について

「排尿」は、膀胱と尿道(男性では前立腺を含む)、 および尿道括約筋で構成される下部尿路の機能であるといえます。
それでは、皆さんが日々行っている正常な排尿とはどういうものをいうのでしょうか。

◎正常な排尿とは?
 ◎主観的には
・おなかに力をいれなくても排尿できる。
・尿が途中で途切れたり、なかなか終わらなかったりすることはない。
・残尿感がない。
・尿失禁や尿の漏れはない。
・排尿後すぐに尿意を感じることはない。
・排尿のために夜に起きることはない。
・尿意をはっきりと感じ、ある程度我慢もできる。

 ◎客観的には
・1回排尿量:200〜400ml
・1回あたり排尿時間:20〜30秒
・1日の排尿量:1000〜1500ml
・1日の排尿回数:5〜7回
・ 排尿間隔:3〜5時間に1回

したがって排尿障害とは以上のようなことがうまくいかなくなった状態なのです。
排尿障害の原因疾患も多様ですが

●「前立腺肥大症」
男性で代表的
●「過活動膀胱」
男女ともに多い

(過活動膀胱は最近非常に潜在患者数の多いことが判ってきました。)

●「尿道狭窄症と尿道形成術」
について少し詳しく説明します。

前立腺肥大症

日本では、現在約100万人の患者が治療を受けており、その4倍もの潜在患者がいると言われています。年齢とともに尿の出具合が悪くなることをあきらめていませんか?

(1)病因

前立腺は、男性の膀胱の前下部、直腸膨大部の前面に位置する栗の実様の器官であり(図1)、精液の一部となる液を分泌して生殖に関与すると言われていますが 正確な機能は未だに解明されていません。
主として加齢およびデヒドロテストステロンという男性ホルモンの影響でこの器官が大きく肥大したものが前立腺肥大でありそれにより症状が出現すれば、前立腺肥大症といいます。

(2)症状

前立腺肥大症などで現れてくる症状を下部尿路症状といいます。
前立腺肥大症では、特に就寝後にトイレにいく回数が多くなる(夜間頻尿)ことで始まることが多く、やがて尿線が細くなり、残尿感や排尿の最後に尿がポトポトこぼれる(排尿終末時尿線滴下)などが現れます。

(3)検査

前立腺肥大症では、まず前立腺がんではないことを診断する必要があります。 一般には前立腺の触診や採血でPSA(前立腺特異抗原)という腫瘍マーカーが高くないかを調べます。もしがんの疑いがある場合は通常はがんの診断・治療を優先します。

次に排尿障害の程度を全世界的に客観化したスコアを付けてもらいます。
これを国際前立腺症状スコア(I-PSS) といい、非常に便利ですからダウンロードして活用して下さい。
次に、実際に検査室で排尿してもらい、尿の勢いに客観的評価を加える検査(尿流量測定)、さらに超音波断層法による残尿の測定を行います。

(4)治療

いつから治療が必要かということは特に決まっていません。
この病気で生命予後が悪くなることはまずない反面、排尿回数・夜間頻尿などで生活に支障をきたすようであれば治療をお勧めします。

1.薬物療法
現在ではαブロッカーという前立腺肥大による尿道の圧迫や緊張を緩和することにより排尿を改善するお薬の内服から始めるのが一般的です。
その他に前立腺自体を縮小させる5α還元酵素阻害剤と言うお薬もあります。

2.手術
副作用などで薬物療法が不可能、あるいは効果が減少してきた場合などは手術療法を行います。特に、50ml以上の残尿が持続する状態は手術が必要といえます。方法は経尿道的前立腺切除術が標準的です。

尿道から専用の器械を挿入しますので手術痕がなく術後の回復も早いのが特徴です。最近さらに超音波やラジオ波などの低侵襲な経尿道的手術法が次々に開発されてきましたが、 効果や安全性を総合すると現在有用なものは、経尿道的前立腺切除術(TURP)、経尿道的前立腺核手術(HoLEP、TUEB)などがあります。当院で行っているTUEBについて説明しますと、最もスタンダードなTURPでは通常の電気的切除・凝固が行われるため、術中使用する灌流液に非電解質溶液を使用する必要があり、その非電解質溶液が体内に吸収される事により起こる低ナトリウム血症(TUR症候群)という合併症の可能性があります。つまり血液が薄くなることで水中毒と呼ばれる状態に陥る事です。大きな前立腺肥大症の手術ではこの合併症の頻度が高くなり、出血量も増加する事がよく知られています。現在このような合併症の頻度を減少させるためホルミウムレーザーを用いた手術(HoLEP)や体内に電流の流れないバイポーラー電極を使用した手術(TUEB)が可能となり、当院ではTUEBを採用しております。これらの手術では体内に電流が流れないため灌流液として生理食塩水(電解質溶液)を使用することが可能で、先に述べましたTUR症候群が起こる可能性がほとんどありません。また強い止血・蒸散効果により出血量を減少させる効果もあります。


また、重大な合併症などでこれらの手術ができない場合には、前立腺尿道にステントを挿入する場合もあります。
当院および関連病院では積極的にこれらの新しい治療を取り入れています。


過活動膀胱

膀胱は排尿と蓄尿に関与する器官ですが、1日のうち大半は尿を貯めている状態といえます。
したがってその蓄尿機能が障害されますと、頻尿のみならず特有の突然起きる強い尿意(尿意切迫感)に悩まされることになり、 時にはトイレに間に合わずに尿失禁をおこします(切迫性尿失禁)。
従来は、このような状態を診断する検査として膀胱内圧測定を行っていましたが、 最近検査をしなくても本人の症状のみで診断できることに国際的に定義が改定され、「過活動膀胱」と言われるようになりました。日本でも疫学調査を行ったところ、40歳以上で推定810万人の患者がいるとされ、その半数以上が尿失禁を伴っていることが判りました。

日々頻尿や尿意切迫感に悩まされているのに、こんなことぐらいと我慢している人はいませんか?

(1)症状

3大症状は、尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁です。 このうち尿意切迫感は必須ですが切迫性尿失禁はなくてもかまいません。

(2)診断

前述の症状による診断が基本ですが、ここで大事なことは除外診断です。 すなわち表1に示すような疾患がある場合にはその疾患の治療が必要になります。 がんなどの場合もまれにはありますので、たかが頻尿というわけにもいきません。

表1 除外すべき主たる疾患・状態

 

(3)治療

1.薬物療法
過活動膀胱の治療の根幹は薬物療法です。
膀胱の緊張をゆるめる抗コリン製剤の内服が第一選択であり、 最近は日本でも副作用の少ない新薬の発売が相次いでおり使用の選択の余地が増えています。

2.行動療法
ある意味では副作用のない安全な治療法といえます。
生活指導、少しずつ排尿を我慢する時間をのばす膀胱訓練、さらに理学療法として骨盤低筋訓練、 バイオフィードバック法、高齢者には排泄介護があります。それぞれの詳細は省きますが、 これら行動療法と薬物療法の併用効果が認められています。

尿道狭窄症と尿道形成術

尿道狭窄症は様々な原因で尿道が狭くなったり閉塞して、尿が出なくなったり、出しにくくなる病気です。男性の尿道は女性よりも長いので、様々な部位・原因で尿道狭窄症が発生します。

(1)尿道の部位について(図)

男性の尿道は振子部(陰茎)・球部(股間)・膜様部(前立腺とのつなぎめで尿道をしめる括約筋のある部位)に分けられます。


(2)尿道狭窄症の原因(図)

1.外傷
二つの代表的なパターンがあります。一つは股ぐらを強打する騎乗型外傷で、球部尿道が恥骨と挟まれてつぶれることで狭窄になります。もう一つは骨盤の骨折で、膜様部で尿道が前立腺から切り離されることで断裂します。完全に閉塞や断裂となった場合には、おなかから膀胱に直接管をいれる「膀胱ろう」をつくり、炎症がおさまるまで3ヶ月ほど待ってから尿道形成術を行います。

2.医原性
尿道内のカテーテル操作や内視鏡手術で尿道に傷がはいったところが硬くなることで狭窄が発生します。内視鏡治療を繰り返すことで悪化することは珍しくありません。狭窄が発生する部位は振子部または膜様部です。

3.尿道下裂術後
先天性疾患のために小児期に皮膚などで尿道をつくった後に、成人になってから狭くなることがあります。狭窄が発生する部位は振子部です。

4.その他の尿道疾患
硬化性苔癬という皮膚疾患が尿道に進展して狭窄をおこすことがあります。狭窄が発生する部位は振子部からときには尿道全長に亘ります。

 

(3)治療

1.内視鏡治療・ブジー
内視鏡で狭いところを切開する内尿道切開という手術と、ブジーという金属の棒やプラスチックの管による尿道拡張は一般の泌尿器科で広く行われています。軽い狭窄では有効なことがありますが、治療後にふたたび狭窄する症例では、内尿道切開や尿道ブジーを繰り返しても、あまり効果はありません。尿道を傷つけて狭窄範囲をさらにひどくしてしまう可能性もあります。

2.尿道形成術
尿道形成術は開放手術による尿道の再建手術で、内尿道切開や尿道ブジーでは治らない再狭窄例、狭窄が長い例、外傷による狭窄や断裂を根本的に解決する方法です。代表的な手術方法は A.尿道端々吻合術、B.口腔粘膜利用尿道形成術、C.尿道会陰ろうです。

【A. 尿道端々吻合術】
2cm未満の球部尿道狭窄と、膜様部狭窄が対象になります。 股間の陰嚢から肛門のやや上までを切開して尿道に到達し、狭い部分を切除して健康な尿道同士をつなぎ合わせます。成功率は90%以上です。 術後は尿道に管(カテーテル)を2-3週間おいて、つないだところが治癒するのを待ってから抜去します。

【B. 口腔粘膜手術】
振子部狭窄全てと、2-3cm以上の球部狭窄が対象になります。 頬などから採取した粘膜を尿道の材料として用いる方法で、一回で手術を終了する一期手術と二回に分けて行なう二期手術があります。本来尿道ではない組織を利用するので長期的な成功率は尿道端々吻合術よりやや低く7-80%くらいとされています。 一期手術は尿道の内腔がたもたれている場合に選択します。狭窄部を切り開いて粘膜をパッチとしてあてます。 二期手術は尿道が完全につぶれている場合や距離が長い場合に選択します。一回目の手術では健康な尿道の間に粘膜を貼り付けておきます。術後は座って股間から排尿する状態になります。約半年後に二回目の手術を行い、貼り付けておいた粘膜をまるめて尿道がふたたびつながった状態とします。 いずれの場合にも術後は尿道に管(カテーテル)を2-3週間おいて、縫い合わせたところが治癒するのを待ってから抜去します。

【C. 尿道会陰ろう】
尿道の膀胱寄りの正常部分を直接股間に開くことで、座って排尿できるようにすることです。ボディイメージの変化はありますが、膀胱癌などで内視鏡検査や手術を今後も予定している方には現実的な選択です。

 

(4)兵庫医科大学泌尿器科での尿道形成術について

当科では小児の尿道形成手術の伝統がありましたが、成人の尿道形成に取り組み始めたのは比較的最近です。2014年から徐々に導入し2016年から独自チームで本格的に行っています。尿道形成術の件数は毎年増加しており、現在では複雑な病状の方を含めあらゆるタイプの尿道形成術に対応しています。他院で内視鏡手術などを行ない治療困難と言われた方は、ぜひ御受診ください。

 

 

 

 

 

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