胃手術に関する術後合併症

  手術の合併症には、麻酔に関するもの、臓器障害(心臓、肺、肝臓、腎臓、神経、脳神経)に関するもの、外科手術に直接関与するものがあります。

 

  手術を行う前に種々の全身検査をして手術に耐えうるかどうかのリスク判定を行います。全身の合併症が多ければ多いほど、麻酔のリスクは高く術後に合併症が起こる可能性は高くなります。しかし、合併症が実際起こってもその被害を最小限に食い止めるような処置はおこないます。

 

 1)麻酔に関するもの

麻酔科の医師より説明があります。

 

2)        臓器障害(心臓、肺、肝臓、腎臓、内分泌、神経、脳神経)に関するもの

各臓器に関連する診療科と連絡をとり、必要に応じて術後、集中治療部(ICU)での治療、術後管理をおこないます。

 

3)        外科手術に関連のあるもの

縫合不全

  胃切除後、胃と十二指腸、または胃と小腸の吻合部(つなぎ目) がほころびることがあります。

a)     胃十二指腸吻合部の縫合不全:

ほとんどが絶飲食で治癒します。

b)     食道空腸(小腸)吻合部縫合不全:

小さい漏れは絶飲食で治癒しますが、大きく漏れると左の胸に水、膿がたまり、左の胸から細いチューブを入れ、膿を吸い出することがあります(ドレナージ)。

 

  1990年以降で縫合不全により命を落とした患者さんはおられません。 全員、元気で退院されています。

 

術後膵炎

膵臓と胃とは、解剖学的に近い場所にあり、手術操作により術後膵炎を起こすことがありますが、ほとんどの症例で絶飲食、注射、投薬で治癒します。

  

横隔膜下膿瘍

術後に縫合不全等に起因する横隔膜下膿瘍(“うみ”がたまること)が生ずることがあります。現在、ほとんどの症例でエコー下で膿瘍(膿みの袋)を穿刺しドレナージをおこなっています。

   

○術後膵液瘻

  胃全摘後、膵臓尾部及び脾臓を同時に摘出した場合、膵臓に炎症が起こり術後横隔膜下に留置したドレーンからヨーグルト様の排液をみることがあります。これは、腹腔内に膵液が漏れた証明ですが、ほとんどの症例で、絶飲食で治ってしまいます。まれに、再手術、ドレナージを要する場合があります。

 

術後出血:

胃癌の手術をする場合、癌の切除に加えてリンパ節郭清を行います。リンパ節は、血管の周囲にあり、術後出血を起こすことがあります。まれに、再手術を要することがあると考えています。

 

○術後肺炎、無気肺

○腸閉塞

  術後に腸が癒着して、通過障害をおこすことがあります。 ほとんどの症例は 絶飲食、胃あるいは小腸までのチューブの挿入で軽快します。 再手術になる可能性は低いです。

  その他、合併症が発生した場合は必ず、担当医から説明があります。

○輸血について

われわれもできる限り出血量を減らし輸血をしないように努力しています。しかし、まれに予期せぬ出血があり、輸血をしなければ生命に危険を及ぼすことがあります。そのために手術に関して、輸血用血液を用意することをご了承ください。

 

MRSA感染症

胃癌の手術はそのほとんどの症例で、胃酸の分泌領域を切除してしまいます。普通の人(胃を切除していない人)は、酸が細菌を殺してしまう作用がありますが、胃を切った人は細菌を殺す力が弱り、また、手術という侵襲による抵抗力の低下が加わり、術後MRSA感染症にかかりやすくなります。つまり、MRSAは、一般の成人には、病原性はありませんが、手術という体の抵抗力の弱った人には、強い病原性を発揮する事があります。 特効薬としてバンコマイシンがありますが、近頃、この薬に抵抗するMRSAも出現しているのも事実です。

 

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