正解です。


解説

ブレンステッド・ローリーの定義では、酸塩基の平衡は平衡定数で表されます。
酸塩基平衡の平衡定数を考えるときには、酸のpKa塩基の共役酸のpKaを用いて考えます。

a. ベンゼン(酸): pKa=43より [C6H5-][H+]/[C6H6] = 10-43
a. アンモニア(塩基の共役酸): pKa=9.2より [NH3][H+]/[NH4+] = 10-9.2
 したがって、C6H6 + NH3 → C6H5- + NH4+ の平衡定数は
 K = [C6H5-][NH4+] / [C6H6][NH3] = 10-43 / 10-9.2 = 10-33.8
 平衡定数が1よりも小さいので、平衡は左辺に大きく偏っている。
 したがって、アンモニアはベンゼンからH+を引き抜くことはできない。

b. アセチレン(酸): pKa=25より [HC≡C-][H+]/[HC≡CH] = 10-25
b. メタノール(塩基の共役酸): pKa=15より [-O-CH3][H+]/[HO-CH3] = 10-15
 したがって、HC≡CH + -O-CH3 → HC≡C- + HO-CH3 の平衡定数は
 K = [HC≡C-][HO-CH3] / [HC≡CH][-O-CH3] = 10-25 / 10-15 = 10-10
 平衡定数が1よりも小さいので、平衡は左辺に大きく偏っている。
 したがって、メトキシドイオンはアセチレンからH+を引き抜くことはできない。

c. アセトン(酸): pKa=20より [H3C-CO-CH2-][H+]/[H3C-CO-CH3] = 10-20
c. ピリジン(塩基の共役酸): pKa=5.2より [C5H5N][H+]/[C5H5NH+] = 10-5.2
 したがって、H3C-CO-CH3 + C5H5N → H3C-CO-CH2- + C5H5NH+ の平衡定数は
 K = [H3C-CO-CH2-][C5H5NH+] / [H3C-CO-CH3][C5H5N] = 10-20 / 10-5.2 = 10-14.8
 平衡定数が1よりも小さいので、平衡は左辺に大きく偏っている。
 したがって、ピリジンはアセトンからH+を引き抜くことはできない。

d. 水(酸): pKa=15.7より [HO-][H+]/[H2O] = 10-15.7
d. 炭酸(塩基の共役酸): pKa=6.4より [HCO3-][H+]/[H2CO3] = 10-6.4
 したがって、H2O + HCO3- → HO- + H2CO3 の平衡定数は
 K = [HO-][H2CO3] / [H2O][H2CO3] = 10-15.7 / 10-6.4 = 10-9.3
 平衡定数が1よりも小さいので、平衡は左辺に大きく偏っている。
 したがって、炭酸水素イオンは水からH+を引き抜くことはできない。

e. 酢酸(酸): pKa=4.8より [H3COO-][H+]/[H3COOH] = 10-4.8
e. 炭酸水素イオン(塩基の共役酸): pKa=10.2より [CO32-][H+]/[HCO3-] = 10-10.2
 したがって、H3COOH + CO32- → H3COO- + HCO3- の平衡定数は
 K = [H3COO-][HCO3-] / [H3COOH][CO32-] = 10-4.8 / 10-10.2 = 105.4
 平衡定数が1よりも大きいので、平衡は右辺に大きく偏っている。
 したがって、炭酸イオンは酢酸からH+を引き抜くことができる


一般に、pKaが小さい物質は強い酸で、pKaが大きい物質は弱い酸である。
したがって、塩基の共役酸の pKa が酸の pKa よりも大きい場合に、塩基が酸から H+ を引き抜くことができる。


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