心臓支配神経の形態学的特性 心臓に分布する迷走神経節前ニューロンは、延髄の迷走神経背側運動核、疑核、およびこれら二つの核の介在領域に位置し、これらから起始する遠心性線維によって、心拍数の低下(変時)、心筋収縮力の低下(変力)、房室間伝導速度の低下(変伝導)といった三種類の調節がなされている。これらを調節する中枢性の起始核として疑核が主要な役割を果たすと報告されているが、それに対する疑問点も指摘されており、各ニューロンの特徴とそれぞれの心臓機能との関係は、現在でもなお十分には解明されていない。 我々の先の研究では、ラット迷走神経節前ニューロンにはコリン作動性と非コリン作動性ニューロンが存在することが示されたが、これをふまえて種々の神経伝達物質の抗体を使用し、迷走神経節前ニューロンの非コリン作動性ニューロンの分布とその形態的特徴を、さらに洞房結節、房室結節などの末梢各部位と中枢内投射部位との対応と、その神経核内の細胞の特徴を明らかにすることによって、陰性の変時、変伝導、変力といった機能的な差異と、形態学的な特徴を総合的に解明しようとしている。 自律神経系は、突然死に関係する心室性不整脈を含む多数の不整脈の主要な病因であり、本研究の臨床的意義を強調している。