受賞

「第23回日本鼻科学会賞」を受賞(耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 准教授 都築 建三)

 2016年10月13日から15日かけて宇都宮市で行われた第55回日本鼻科学総会・学術講演会にて、耳鼻咽喉科・頭頸部外科学の都築 建三 准教授が「第23回日本鼻科学会賞」を受賞しました。
 「日本鼻科学賞」は、日本鼻科学会誌あるいは国内外の関連学術誌に優秀な論文を発表した者、もしくは、国際学会において鼻科学およびこれに関連した内容で優秀な発表した者に贈られる賞です。

授与団体名

第55回日本鼻科学会総会・学術講演会

概要

慢性副鼻腔炎の治療は、薬物治療と内視鏡下副鼻腔手術(ESS, endoscopic sinus surgery)がある。副鼻腔炎は術後も再発するため、術後の治療も非常に重要である。そこで我々は、術後の鼻副鼻腔領域における内視鏡所見をスコア化した新たな評価方法(術後内視鏡スコア、Eスコア)を提唱した。その妥当性と有用性と検証して、Eスコアによる術後成績を検討した。

研究の背景

薬物治療に抵抗する慢性副鼻腔炎症例には、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)の適応となる。ESSは、病的な副鼻腔を開放して洗浄することにより、副鼻腔炎の治癒を促すことを目的としている。術後も再閉鎖(再発)しないように適切に治療することが必要で、術後の治療は非常に重要である。術後の鼻副鼻腔領域を評価するには画像検査が最も正確かつ有用であるが、全例に経時的に行うことは困難である。そこで我々は、術後の鼻副鼻腔領域における内視鏡所見についてスコア化する評価方法(術後内視鏡スコア、Eスコア)を提唱し、その妥当性と有用性と検証した。

研究手法と成果

術後内視鏡スコア(Eスコア)は、手術により開放した副鼻腔(上顎洞、前・後部篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)と嗅裂部の内視鏡所見をスコア化(%)したものである。各部位において、異常なし(0点)、貯留物あるいは粘膜腫脹があるが内部の観察は可能である部分病変(1点)、内部の観察ができない完全病変(2点)の3段階で評価し、その合計点(A)を求めた。Eスコアは、開放した副鼻腔と嗅裂部について最も悪い状態の合計点(B)に対する現在の状態を示す(Eスコアは、A/Bを百分率で表した値である)。 EスコアのIntraclass Correlation Coefficient (0.922)から、評価者間で結果が類似し評価者間信頼性が高いことが示唆された。またEスコアは、過去に報告された内視鏡評価(Lund-Kennedy法の鼻腔スコア)および画像検査(Lund-Mackay CT スコアリングシステム)とも、それぞれ統計学的有意な相関を認めた。内視鏡で最初に挿入し評価する部位の前部篩骨洞について検討した結果、前部篩骨洞のスコアがEスコアに大きく影響していることが分かった。

今後の課題

内視鏡スコアは、術後経過を示す指標の一つとして用いられることが期待される。我々が提唱したEスコアは、術後経過良好例に正確な指標となるが、再発例で内視鏡の観察が制限されることに影響を受ける。内視鏡評価法をさらに進展させるために、自覚症状を反映させるための評価にすること、スコア項目をより簡略かつ適格に評価なものにすること、手術(ESS)所見との関連を評価することが今後の課題である。

研究費等の出処

科研費・基盤研究C (課題番号25462671) 平成27年度兵庫医科大学教員助成

掲載誌

Tsuzuki K, Hinohira Y, Takebayashi H, Kojima Y, Yukitatsu Y, Daimon T, Sakagami M. Novel endoscopic scoring system after sinus surgery. Auris Nasus Larynx. 41: 450-454, 2014.