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兵庫医科大学医学会

「日本病理学賞」を受賞しました(病理学 主任教授 廣田 誠一)


平成28年5月14日、仙台にて開催された第105回日本病理学会総会において、廣田 誠一 主任教授(病理学)が「平成28年日本病理学賞」を受賞しました。日本病理学賞は、日本病理学会が設ける賞で、病理学領域における特定の課題について優れた業績を挙げていると判断された会員に授与されるものです。
当日は、宿題報告として「Gastrointestinal stromal tumor(GIST)の病態解析と診断」に関する研究の報告を行った後、賞状と楯が授与されました。


授賞式(学会理事長、総会会長と)

受賞報告後に新家理事長と

授与された賞状と楯

授与団体名

日本病理学会

概要

日本病理学賞は、病理学領域における特定の課題について卓越した業績を挙げていると判断された日本病理学会会員に授与される。その選考要件には、1)国内外の評価のある業績であること、2)断片としての学術情報ではなく、体系として受け取れる内容であること、3)演者の示す問題把握のしかた、課題の解決法、学問観などが会員にとって大いに資するものであること、が挙げられ、代表的な論文の学術的評価、その領域自体のもつ重要性や将来性、応募者の学術性や適格性などを含めて多面的に判断され、病理学会学術委員会で厳正に選考される。日本病理学賞の内容は「宿題報告」として3日間の病理学会総会会期中に毎日1演題ずつ、他の会場はすべてクローズし、メイン会場にて講演が行われる。「宿題報告」は明治44年(1911年)に始まり、多くの偉大な病理学の先達によって行なわれてきた。なお、兵庫医科大学では初めての受賞である。

研究の背景・成果

われわれは1990年代前半に、Ws突然変異ラットというc-kit遺伝子機能喪失性突然変異動物を用いて、消化管蠕動運動のペースメーカー細胞であるカハールの介在細胞 (interstitial cell of Cajal; ICC) とc-kit遺伝子産物 (KIT) の関係を調べ、KITの機能喪失によりKITを発現するICCが欠損し、消化管運動に異常を来たすことを明らかにした。

この研究を遂行する過程で、c-kit遺伝子の機能獲得性突然変異が ”ICCの腫瘍” を引き起こすのではないかと想定し、起源の不明であったGastrointestinal stromal tumor (GIST) をその候補と考えた。実際にGISTのほとんどにKITの発現がみられ、そのc-kit遺伝子に高率に機能獲得性突然変異を認めることを示し、1998年にScience誌に報告した。この論文はGISTの細胞起源がICCであることと、GISTの原因がc-kit遺伝子の機能獲得性突然変異であることの両者を明らかにしたもので、2016年5月現在、Web of Science (Thomson Reuters) における引用回数が2000回を超え、この論文の科学的価値の高さを示している。

また、この研究結果を基盤として、GISTに対する分子標的薬の開発がなされ、固形腫瘍における初の著効を示した分子標的治療として多くのGIST患者の生命予後の改善をもたらしたとして広く評価されている。ほぼ同時期に、生殖系列のc-kit遺伝子変異が多発性GIST家系の原因であることもNature Genetics誌に報告している。また、c-kit遺伝子に変異を持たないGISTの研究を行い、血小板由来増殖因子受容体α(PDGFRA)遺伝子の機能獲得性突然変異がその原因となることも明らかにした。

さらに、多発性GIST家系のモデルとして、ジーンターゲティング法により生殖系列にc-kit遺伝子の機能獲得性突然変異を導入したマウスを作製し、ICCの過形成やGISTの発生がみられることも示した。このモデル動物が、in vivoでの分子標的薬の効果の評価に有用であることも報告している。また、分子標的薬に対する二次耐性の機序がc-kit遺伝子における二次変異が主たる原因であることも報告した。散発性GISTや多発性GIST家系における新規のc-kit・PDGFRA遺伝子変異の同定を継続的に行い、それらの変異に対する分子標的薬の効果なども報告している。

このような基礎的研究と並行して、日本における分子標的薬イマチニブの承認に結びついた、転移・再発GIST患者における分子標的薬イマチニブの第Ⅱ相臨床試験 (STI571B1202) の病理診断の中央判定医を務めた。その後も、現在進行中のものを含め、多くのGIST関連の臨床試験・研究においてGISTの診断や遺伝子変異の同定などを行ってきている。さらに、全国から診断困難例の消化管間葉系腫瘍のコンサルテーションを受け、臨床の最前線で診断に当っている病理医の支援も行っている。

GISTにおける分子標的薬の使用が患者の生死に直結するようになった現在、GISTの病理診断は極めて重要となっており、その支援も重要な責務と考えている。

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