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「日本臨床免疫学会第43回総会ポスター賞」を受賞しました(内科学講座 リウマチ・膠原病内科 講師 東 直人)


「日本臨床免疫学会第43回総会ポスター賞」を内科学講座 リウマチ・膠原病内科 東 直人 講師が受賞しました。


リウマチ・膠原病科 東 直人講師(右):
同賞受賞後、佐野 統主任教授(左)
と一緒に

リウマチ・膠原病科 東 直人講師(右):
同会会長ポスター賞受賞の同科荻田千愛病院助手(中)、
佐野 統主任教授(左)と一緒に

授与団体名

日本臨床免疫学会

概要

我々は、シェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome: SS)では進行に伴い唾液分泌量のみでなく、唾液中に含まれ口腔と消化管の粘膜保護や組織修復に促進的な役割を果たすとされるepidermal growth factor(EGF)量も低下しており、唾液中EGFの減少は短期間で進行することを見出しました。そして、唾液中EGF低下という「唾液の質」の低下が口腔内病変の形成や難治化、口腔内QOLの低下と強く関連することを検証しました。本研究成果を平成27年10月に開催された第43回日本臨床免疫学会総会で発表したところ、高く評価され、同学会総会ポスター賞を受賞しました。

研究の背景

 SSは全身諸臓器、特に涙腺と唾液腺などの外分泌腺にリンパ球が浸潤し、腺組織のアポトーシスが誘導される原因不明の慢性炎症性自己免疫疾患です。腺組織の破壊により涙液や唾液の産生低下を来たし、眼や口腔内の乾燥症状を呈します。SS患者では口腔乾燥症状に加え、口腔粘膜や舌乳頭の萎縮、難治性口内炎などを生じ、それに伴う口腔内の疼痛や不快感によりQOLが著しく低下します。このような口腔内病変の形成は主に唾液分泌量減少による口腔内クリアランスの低下に起因すると考えられています。しかし、唾液には種々の生理作用があり、その障害が病態形成に関与している可能性があると考えました。

 EGFは1962年に歯の萌出や開眼を促進させる物質としてマウスの顎下腺から発見されました。53のアミノ酸からなる分子量6.045kDaのサイトカインで、上皮細胞の細胞分裂と増殖を促進します。人体では唾液腺(特に耳下腺)と十二指腸のブルンネル腺で主に産生され、口腔と消化管の粘膜保護や組織修復に促進的な役割を果たすとされています。難治性口内炎患者や頭頚部への放射線照射に伴う口腔粘膜障害を生じた患者において唾液中EGF濃度が低いという報告があり、口腔粘膜障害と唾液中EGFに強い関連性があると考えられますがSS患者での解析はこれまでなされていませんでした。

 我々はSSにおける口腔内病変の形成と唾液中EGFの関連性について検討し、将来の治療介入の可能性を追求しました。

研究手法と成果

 口腔内病変の形成、唾液やEGFの分泌、口腔内QOLに影響しうる要因を有する者を除いたSS患者40人(原発性SS 27人、続発性SS 13人)とコントロール群として非SS 23人を対象としました。ガム試験で得られた唾液の質量(ml/10分)、唾液中EGF濃度(ELISA法)および口腔内病変の定量的評価としてOral Health Impact Profile簡易版(OHIP-14)問診法で得られた口腔内QOLスコアを用い、それらの関連性について検討しました。さらに、継続診療できたSS患者23人、非SS 14人において3年間の変化を評価し、それぞれの関連性を検証しました。

 SS群は非SS群に比べ唾液中EGF量が有意に少なく(9238 vs 13297 pg/10分, p=0.033)、特に罹病期間が長い者、口腔内QOLが悪い者でより顕著でした。SS群において、唾液中EGF量は唾液量と正の相関を(rs= 0.824, p=0.0005)、罹病期間およびOHIP-14スコアとの間に負の相関を認めました(rs=−0.484, p=0.008: rs=−0.721, p=0.012)。また、SS群では3年間で唾液分泌量に変化はありませんでしたが、口腔内QOLは有意に増悪し、唾液中EGF量が有意に低下していました(10158 vs 8353 pg/ 10分, p=0.032)。このような変化は非SS群では認めませんでした。

 これらの結果より、SSでは進行に伴い唾液分泌量のみでなく唾液中EGF量も低下すること、唾液中EGF量減少は唾液分泌量減少に比べ短期間で進行することが判明しました。そして、この唾液中EGF量低下という「唾液の質」の低下が口腔内病変の形成や難治化、口腔内QOLの低下と強く関与していることが示唆されました。

今後の課題

 SS症例において唾液中に不足しているEGFを何らかの方法で口腔内に補充し、粘膜面に接触させることで口腔内病変や口腔内QOLの改善効果が期待でき、水分補充やそれによる口腔内クリアランス改善が主となっている現在のSS治療と異なり、「唾液の質」の改善という新規治療介入ポイントになる可能性があると考えます。

研究費等の出処

  1. 文部科学省科学研究費補助金(MEXT KAKENHI 22791820)

  2. 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等克服研究事業)

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