受賞

最優秀演題賞を受賞しました(内科学 総合診療科 太田好妃 講師)

「最優秀演題賞」を内科学 総合診療科 太田好妃 講師が受賞しました。

授与団体名

日本麻酔科学会第62回学術集会

概要

JADE Study(日本薬剤性有害事象研究)とは
 兵庫医科大学 臨床疫学 森本剛教授を代表とする、日本における薬剤の安全性を一般診療の場で評価する多施設共同研究です。製薬メーカーや行政機関が新薬などの安全性を評価する市販後調査のように、医療機関からの自発的報告や薬剤使用情報を集めて分析するデータとは異なり、直接多くの患者集団(コホート)を観察する中で、薬剤情報や患者背景、有害事象を定量的に分析する研究です。これまで成人患者、小児患者、精神病院入院患者などの多様な診療環境での多施設研究が行われています。現在は介入研究も行われています。

研究の背景

近年、病院などの医療機関で受けた治療による有害事象についての報道が多くなってきていますが、すべての市民が何らかの医療機関を利用している中で、実際の有害事象の発生率は明らかではなく、有害事象の真の影響も分かっていません。医療機関ではインシデント報告やヒヤリハット報告として事例を収集し、分析を行っていますが、事例が発生しない患者との比較が出来ないことから、発生要因や防止対策の分析は限定的であり、患者の重症度が高いICUにおける日本の現状については全く分かっていませんでした。

 本研究は、成人患者におけるデータを、内科学総合診療科の太田講師がICU患者に焦点を当て、入室時の患者重症度を軸に分析した結果です。教養部英語 作間未織講師も指導に当たっています。

 ICU在室患者における薬剤性有害事象の疫学や患者に与える影響が明らかにすることで、ICU入室患者の状態の変化を薬剤性有害事象の視点から評価し、患者の予後を改善することが期待されます。

研究手法と成果

1、日本のICU入室患者における薬による健康被害(薬剤性有害事象)の発生率を日本で初めて多施設共同コホート研究(JADE Study)で検証しました。
2、薬剤性有害事象は100入室あたり21.6件、1000患者日あたり30.6件発生していました。
3、薬剤性有害事象のうちの7%は命に関わる健康被害でした。
4、入室時の重症度とは薬剤性有害事象発症との関連は認められませんでした。
5、薬剤性有害事象の発生とICU内死亡率との関連性は認められませんでしたが、年齢や重症度を調整した上で、薬剤性有害事象が発生した患者のICU入室期間は有意に長くなる傾向がありました。

今後の課題

このJADE Studyを通じて、周術期管理などの薬剤以外による医原性有害事象も浮かび上がることになりました。現在、包括的な医原性有害事象に関する多施設研究が進行中であり、引き続き診療の質の直接的な向上につながる実証的研究を報告していきます。

研究費等の出処

独立行政法人日本学術振興会「科学研究費補助金」

掲載誌

Int J Qual Health Care 2014;26:573-8.