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「第8回日本シェーグレン症候群学会奨励賞」を受賞しました (内科学講座 リウマチ・膠原病内科 講師 東 直人)

「第8回日本シェーグレン症候群学会奨励賞」を内科学講座 リウマチ・膠原病内科 東 直人 講師が受賞しました。


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リウマチ・膠原病内科 東 直人講師(左):同賞受賞後に佐野統主任教授(右)と一緒に

授与団体名

日本シェーグレン症候群学会

概要

 我々は、シェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome: SS)では進行に伴い唾液分泌量に加え唾液中epidermal growth factor(EGF)分泌量が低下し、その唾液中EGF低下と口腔内quality of life(QOL)低下に強い関連性があることを見いだしました。そして、それに基づき、SSでは唾液中EGF低下という「唾液の質」の低下が口腔内病変の修復の遷延化による口腔内病変の難治化や口腔内QOL低下と関連する可能性があることを提唱しました。本研究成果は高く評価され、平成26年9月に開催された第23回日本シェーグレン症候群学会学術集会において第8回日本シェーグレン症候群学会奨励賞を受賞しました。

なお、本研究成果はModern Rheumatology誌に掲載されました。

研究の背景

 SSは全身諸臓器、特に涙腺と唾液腺などの外分泌腺にCD4陽性Tリンパ球が浸潤し、腺組織のアポトーシスが誘導される原因不明の慢性炎症性自己免疫疾患です。腺組織の破壊により涙液や唾液の産生低下を来たし、眼や口腔内の乾燥症状を呈します。口腔乾燥症状に加え、口腔粘膜の萎縮、難治性口内炎、舌乳頭平低化などを生じ、口腔内の疼痛や強い不快感を伴いQOLが著しく低下します。このような口腔内病変の形成は、主に唾液分泌量の減少による口腔内クリアランスの低下に起因すると考えられています。しかし、唾液には種々の生理機能作用があり、その障害が病態に関与するのではないかと考えました。
 EGFは分子量6.045kDaのサイトカインで、上皮細胞の細胞分裂と増殖を促進します。人体では唾液腺(特に耳下腺)と十二指腸のブルンネル腺で主に産生され、口腔や消化管の粘膜保護作用や組織修復に促進的な役割を果たしているとされています。また、皮膚におけるEGFが皮膚創傷の治癒を促進するとされています。
 難治性口内炎患者や頭頚部への放射線照射に伴う口腔粘膜障害を生じた患者さんにおいて唾液中EGF濃度・量が低いという既存報告があり、口腔粘膜障害と唾液中EGFの間に関連性があると考えられていましたが、SS患者さんでの解析はこれまでなされていませんでした。
 SSにおける口腔内病変の形成と唾液中EGFの関連性を検討し、将来の治療介入の可能性を追求することを目的としました。

研究手法と成果

 口腔内病変の形成、唾液やEGFの分泌に影響しうる要因を有する者を除外したSS患者さん40人(原発性SS 27人、続発性SS 13人)とコントロール群として非SS 23人を対象としました。ガム試験で得られた唾液の質量(ml/10分)、唾液中EGF濃度(ELISA法)および口腔内病変の定量的評価としてOral Health Impact Profile簡易版(OHIP-14)問診法で得られた口腔内QOLスコアを用い、それらの関連性について検討しました。
 SS群では非SS群に比べ唾液中EGF量が有意に少なく(9237.6 vs 13296.9 pg/10分, p=0.033)、特に罹病期間が長期のSS患者さん、口腔内QOLが強く損なわれているSS患者さんで唾液中EGF量の低下はより明確でした。SS群において、唾液中EGF量は唾液量と正の相関を示しました(rs=0.824, p=0.0005)。唾液中EGF量と罹病期間の間に負の相関を認めました(rs=−0.484, p=0.008)。唾液中EGF量とOHIP-14スコアの間に負の相関が見られました(rs=−0.721, p=0.012)。
 これらの結果より、SSでは進行に伴い唾液分泌量に加え唾液中EGF分泌能も低下し、この「唾液の質」の低下が口腔内病変の形成に関与することが示唆されました。

今後の課題

 SS症例において唾液中に不足しているEGFを何らかの方法で口腔内に補充し、粘膜面に接触させることで口腔内病変や口腔内QOLの改善効果が期待でき、水分補充やそれによる口腔内クリアランス改善が主となっている現在のSS治療と異なり、「唾液の質」の改善という新規治療介入ポイントになる可能性があると考えられます。

研究費等の出処

文部科学省科学研究費補助金(MEXT KAKENHI 22791820)
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等克服研究事業)

掲載誌

Modern Rheumatology. 24(4): 626-632, 2014.

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