受賞

「第19回日本摂食嚥下リハビリテーション学会 奨励賞」を受賞しました

「第19回日本摂食嚥下リハビリテーション学会 奨励賞」をリハビリテーション部 福岡 達之 言語聴覚士が受賞しました。

授与団体名

日本摂食嚥下リハビリテーション学会

概要

我々はこれまでに嚥下機能を定量的に解析する方法として、舌圧センサシートを用いた嚥下時舌圧の研究を行ってきました。本研究では、嚥下リハビリテーションで広く用いられているChin-down肢位について、頭頸部肢位のバリエーションが嚥下時の舌口蓋接触に与える影響を検討しました。この度、本研究成果が平成26年9月に開催された第20回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会(東京)において高く評価され、日本摂食嚥下リハビリテーション学会奨励賞を受賞しました。

研究の背景

嚥下障害のリハビリテーションにおいて、Chin-down肢位は誤嚥を軽減させる嚥下肢位として最もよく用いられています。頭頸部の前方屈曲を機能解剖学的にみると、頭部屈曲位、頸部屈曲位に分類され、さらに両者の複合である頭頸部複合屈曲位の3種の肢位が存在します。臨床的にはこれら3種の肢位がChin-downとして区別なく用いられていますが、各肢位の嚥下機能に対する効果は明らかではありません。さらにChin-down肢位の先行研究は、主に嚥下の咽頭期に焦点を当てたものが多く、口腔期の嚥下運動に与える影響を検討した報告は少ないのが現状です。舌は下顎と協調して咀嚼と食塊形成を行い、舌と口蓋の間で産生される舌圧によって食塊を口腔から咽頭へ送り込む重要な働きを担っています。このことから、Chin-down肢位のバリエーションが、嚥下の口腔期、特に舌圧にどのような影響を及ぼすかについて検討することは、その効果機序を解明する一助となります。

研究手法と成果

対象は健常有歯顎者22名。頭頸部肢位は、中間位、頭部屈曲、頸部屈曲、複合屈曲の4肢位とし、各肢位で水5mlを嚥下した時の嚥下時舌圧、舌骨上筋群筋活動を測定しました。嚥下時舌圧は、5箇所の感圧点(Ch.1-5)を有する舌圧センサシートシステム(SwallowScan, Nitta)を用いて測定し、対象者の硬口蓋部にシート状義歯安定剤で貼付しました(Ch.1:正中前方部、Ch.2:正中中央部、Ch.3:正中後方部、Ch.4-5:口蓋周縁部)。解析項目として、舌圧持続時間、舌圧最大値、舌圧積分値を算出しました。舌骨上筋群筋活動は表面筋電図を用いて顎下部より導出し、%最大筋活動量と持続時間を解析しました。結果から、舌圧持続時間は、頭部屈曲の時に全ての測定部位で延長する傾向がみられました。舌圧最大値および舌圧積分値は、頭部屈曲と複合屈曲の時に高く、頭部屈曲は全ての測定部位において中間位と比較し有意差を認めました。舌骨上筋群筋活動は、頭部屈曲の時に最も高く、持続時間も有意に延長していました。本研究の結果から、頭部屈曲、複合屈曲は中間位と比較し、舌口蓋の広い部位において嚥下時舌圧を高めていることが明らかとなり、口腔期における食塊の推進力に影響することが推察されました。

今後の課題

今後は嚥下障害者のデータを収集するとともに、嚥下時舌圧と咽頭圧の同時測定、嚥下造影解析を行い、頭頸部肢位の違いによる効果についてさらに検討していく必要があります。

研究費等の出処

2013年岡田澄子記念国際研究基金、兵庫医療大学大学院研究費

受賞の様子