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「平成25年度第8回JACET AJINOMOTO AWARD」を受賞しました

「平成25年度 第8回 JACET AJINOMOTO AWARD」を臨床工学室 鈴木 尚紀 臨床工学技士が受賞しました

臨床工学室 鈴木 尚紀臨床工学室 鈴木 尚紀 臨床工学技士

授与団体名

日本臨床工学技士会

概要

【背景】Low-density lipoprotein apheresis (LDL-A)の治療効果として,LDLや酸化LDLの除去に加え,炎症性サイトカイン・ケモカインの低下や,血管透過性を亢進させる液性因子の吸着などが考えられている.しかし,LDL-Aによる各種サイトカインの推移については一定の見解が得られていない.

【目的】腎障害や蛋白尿に関連のあるサイトカインに着目し,LDL-A治療前後や吸着カラム通過前後での推移を測定することで,LDL-Aによる各種サイトカインの除去効果を解明することとした.

【方法】5名の患者に2回ずつ施行したLDL-A 10例を対象とし,サイトカインとしてtransforming growth factor-β(TGF-β),tumor necrosis factor-α(TNF-α),monocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)への影響を検討した.治療前後の血液および吸着カラム通過前後の血漿を採取し,各サイトカインの濃度を測定した.また,LDL-A治療で使用した吸着カラム計7本をin vitroにおいて洗浄・賦活化し,賦活液中へ遊離した各サイトカインの濃度を測定した.

【結果】治療前後における各サイトカインの推移としては,TNF-αおよびMCP-1において,治療後の濃度に有意な低下が認められた.しかし,TGF-βでは有意な変化は認められなかった.吸着カラム通過前後では,全てのサイトカインにおいて,吸着カラム通過後の濃度に有意な低下が認められた.in vitroにおける賦活処理では,賦活液中に遊離した各サイトカインの存在が全ての吸着カラムで確認された.

【考察】吸着カラム通過前後およびin vitroでの賦活処理によって,TGF-β,TNF-α,MCP-1はLDL-Aによって吸着除去されることが示唆された.治療前後における吸着動態には,サイトカイン産生率や血漿処理量,体内分布容積の違いによるリバウンド現象,患者の病態など様々な要因が影響する可能性が考えられる.

研究の背景

LDL-Aはデキストラン硫酸をリガンドとした吸着カラムを使用し,low-density lipoprotein(LDL)やvery low-density lipoproteinを選択的に吸着する血漿吸着療法である.LDL-Aは難治性ネフローゼ症候群に対して適応となっており,FSGSや膜性腎症などによる難治性ネフローゼ症候群に対するLDL-Aの有効性が報告されている.LDL-Aの効果としては,LDLや酸化LDLの除去に加え,炎症性サイトカイン・ケモカインの低下や,血管透過性を亢進させる液性因子の吸着などが考えられている.一方,LDL-Aによる各種サイトカインの推移に関する検討は多く行われているものの,単回のLDL-A治療前後に関するものが多く,カラム前後における推移は明らかにされていない.また同じサイトカインでも,検討によって異なる推移を示すものがあり,現状では一定の見解が得られていない.本研究の目的は,腎障害や蛋白尿に関連のあるサイトカインに着目し,治療前後および吸着カラム通過前後,またin vitroにおいて吸着カラムの賦活処理液中に遊離したサイトカインを測定することで,LDL-Aによるサイトカインの除去効果をより明確にすることとした.

研究手法と成果

【方法】
LDL-A施行前後および吸着カラム通過前後,in vitro実験の検討項目としてTGF-β,TNF-α,MCP-1を測定した.

① 治療前後および吸着カラム通過前後における検討
治療前後に採血を行い治療前と治療後の各サイトカインの濃度を比較した.吸着カラム入口側(In側),吸着カラム出口側(Out側)から,それぞれ血漿処理800 ml時に血漿を採取し,In側とOut側のサイトカインの濃度を比較した.
② in vitro実験
LDL-Aを施行した吸着カラムを,in vitroで賦活化し,吸着カラムより賦活液中に離脱した各サイトカインを測定した.

【結果】
① LDL-A治療前後の推移
TGF-βは8例中5例で治療後の値が上昇,3例で低下する結果となり,全体として有意な変化は認められなかった(変化率 9.5 (-19.7 − 9.5)%).TNF-αは全例で治療後に低下しており,治療後濃度に有意な低下(変化率 -25.2 (-29.7 − -23.8)%)が認められた.MCP-1も全例で治療後に低下しており,治療後濃度に有意な低下(変化率 -67.6 (-73.6 − -60.0)%)が認められた.
② 吸着カラム通過前後の推移
 TGF-βは全例でOut側濃度の有意な低下が認められた(変化率 -26.3 (-43.7 − -10.3)%).TNF-αは全例でOut側濃度の有意な低下が認められた(変化率 -56.1 (-59.4 − -47.4)%).MCP-1のOut側濃度は,7例中6例で検出感度以下であり,Out側濃度に有意な低下が認められた.
③ in vitro実験
 in vitro 実験において,洗浄後の流出液中における各サイトカインの濃度は,いずれも検出感度以下であった.賦活液中におけるTGF-β,TNF-α,MCP-1は7例全例において陽性であり,それぞれ,0.50 (0.43 − 0.57) ng/ml,4.45 (2.67 − 5.62) ng/ml,42.0 (24.9 − 368.1) pg/ml検出された

今後の課題

本検討で測定したサイトカインは全てLDL-A吸着カラムによって吸着除去された.治療前後における結果は,サイトカイン産生率や血漿処理量の違い,体内分布容積の違いによるリバウンド現象,患者の病態,血中での二次的変化などによる様々な影響を受ける可能性が考えられる.LDL-A によるサイトカイン除去について正確に評価するためには,治療前後だけでなく,吸着カラム前後での変動も含めて検討することが重要である.吸着カラムと各サイトカインとの吸着機序については,今後さらなる検討が必要である.

掲載誌

日本臨床工学技士会会誌. in press.

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