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Br J Surg誌に論文が掲載されました

Br J Surg (British Journal of Surgery) 誌に外科学 肝胆膵外科 大橋浩一郎 病院助手 及び 藤元治朗 主任教授の論文が掲載されました。

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外科学 肝胆膵外科
大橋浩一郎 病院助手

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外科学 肝胆膵外科
藤元 治朗 主任教授


論題

「Interferon-γ and plasminogen activator inhibitor 1 regulate adhesion formation after partial hepatectomy」

 

論文著者名

Koichiro Ohashi, Tomohiro Yoshimoto, Hisashi Kosaka, Tadamichi Hirano, Yuji Iimuro, Kenji Nakanishi and Jiro Fujimoto

 

概要

肝切除後に生じる癒着形成は強固であり患者にとり大きな苦痛である。深刻な問題であるにもかかわらずそのメカニズムはいまだに解明されておらず、近代外科から取り残された領域である。今回我々は、肝切除後の癒着形成について、マウス及びヒト肝切除組織を用い免疫学的・血液凝固学的なメカニズムを解明しその制御法について明らかにした。概要は、肝切除により肝組織・末端神経障害部より神経ペプチドであるタキキニンが産生され、それが肝内T細胞(主にNKT細胞)を刺激、IFN-γが産生される。IFN-γは肝細胞(hepatocyte)に働き、凝固線溶系阻害因子であるPAI-1(plasminogen activator inhibitor)が産生される。その結果、手術に伴う凝固亢進による形成されたフィブリンが溶解されずに癒着が引き起こされることが判明した。さらに以前より抗線維作用を有することが知られているHGF(hepatocyte growth factor)をマウスに投与することにより発現が抑制され癒着を制御することができた。

 

研究の背景

腹部手術後の癒着は90%以上に形成され、術後に腸閉塞・疼痛・不妊など様々な合併症を繰り返し引き起こす。近年、悪性肝疾患に対する初回肝切除後の肝内再発に対して再肝切除を選択することが多くなってきたが、肝切除の癒着は他の腹部手術に比して強固な癒着が形成されることで、再手術時における手術時間の延長・出血量増多・癒着剥離時の臓器損傷が問題となっている。癒着形成のメカニズムに関して様々な分子や細胞の関与が報告されているが決定的因子及び治療法は確立していない。今回我々は、マウス肝切除モデルを用いその癒着形成の免疫分子メカニズムを解明し、さらにこのメカニズムが実際の臨床におけるヒト肝切除でも再現性があることを明らかにし、今後の臨床応用への可能性を示した。

 

研究手法と成果

【方法】マウスを用いて肝部分切除を行い、肝切除後癒着モデルを作製した。マウスは、野生型マウス(以下、WT)以外にNKT細胞・IFN-γ・PAI-1の各ノックアウトマウス(以下、KO)を用いた。術後7日目に犠牲死させ、再開腹して癒着の程度をスコア化し組織学的にも検討した。また、癒着部における各分子の経時的な発現(mRNA)も測定した。続いて、リコビナントHGF (20µg/匹)をWTマウスに投与して癒着抑制効果を検討した。ヒト肝切除において、切除開始時及び切除開始3時間後の肝切離面の肝サンプルを採取し免疫染色及び各分子の発現を検討した(兵庫医科大学倫理委員会承認 No:835)。

【結果】WTマウスを用いて肝切除を行うと、術後7日目には周囲臓器が肝切離面に強固に癒着しており、組織学的には癒着部に炎症細胞や線維芽細胞を認め線維化の形成を認めた。また免疫染色では切離部及び肝内でのフィブリンの沈着を認めた。各マウスを用いた検討では、WTマウスと比較するとNKT KO及びIFN-γ KOマウスで癒着スコアは低値を示した。PAI-1 KOマウスでは全マウスにおいて癒着は皆無であった。WTマウスにおける肝でのIFN-γの発現は3時間後に、PAI-1は6時間後に有意な発現がみられた。しかしNKT KOマウスでは3時間後のIFN-γの発現は有意に低値を示し、またIFN-γ KOマウスにおける6時間後のPAI-1の発現も有意に低値を示し、以上より術後にはNKT細胞由来のIFN-γがPAI-1を発現し、これらの因子が癒着形成に重要であることが示された。WTマウスにリコビナントHGF投与すると、癒着スコアが低値を示し、IFNγ(3時間後)及びPAI-1(6時間後)の発現は抑制されていた。ヒト肝切除3時間後の肝切離面での免疫染色では、切離面近傍にNKTの集簇を認め、肝細胞でのPAI-1発現が著明であった。また3時間後での肝におけるPAI-1の発現量は有意な上昇を認めた。

 

今後の課題

  1. 神経ペプチドによるNKT細胞刺激、IFN-γ産生にいたる機序解明。
  2. IFN-γによる肝細胞刺激、PAI-1が産生にいたる機序解明。
  3. 現在臨床で使用されているT細胞抑制剤・pAI-1抑制剤の検討。
  4. HGFの作用機序解明および探索医療への展開。

 

研究費等の出処

独立行政法人日本学術振興会科学研究費補助金
基盤研究(B): 22390250, 252932280

 

掲載誌

Br J Surg (British Journal of Surgery) 2014,101:398-407

 

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