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アスピリンの心血管イベントや癌の発症予防効果が体重や用量の影響を受けることを解明~本学が参加した国際共同研究結果~(臨床疫学 教授 森本 剛)

Lancet誌(12 Jul, 2018)に臨床疫学 森本 剛 教授の論文が掲載されました。

 
  臨床疫学 森本 剛 教授
臨床疫学 森本 剛 教授

論題

Effects of aspirin on risks of vascular events and cancer according to bodyweight and dose: analysis of individual patient data from randomised trials
体重と用量に基づいたアスピリンの心血管イベント及び癌の発症予防の効果:ランダム化比較対照試験の統合解析

論文著者名

Rothwell PM(オックスフォード大学), Cook NR(ハーバード大学), Gaziano JM(ハーバード大学), Price JF(エジンバラ大学), Belch JFF(ダンディー大学), Roncaglioni MC(マリオネグリ研究所), 森本 剛(兵庫医科大学臨床疫学), Mehta Z(オックスフォード大学)>

概要

研究者グループがそれぞれ実施したアスピリンによる心血管イベント一次予防のランダム化比較対照試験の患者単位データを統合し、アスピリンの用量及び患者の体重別に分析した。
その結果、低用量アスピリン(75-100mg/日)の心血管イベント予防効果は、体重が増加するにつれて減弱し、心血管イベント予防効果は体重70kg以下の患者で認められることが明らかとなった。逆に、高用量(325mg/日以上)では、体重が大きい患者で効果があることが明らかになった。
体重によるアスピリンの効果の増減は大腸癌予防においても同様であった。
これらの結果から、低用量アスピリンの有効性は、体重が70kg以下の患者に限られ、世界的にはこれらの体重基準を満たす患者は男性では20%、女性でも50%であり、低用量アスピリンと一括りにした処方は適切ではないことを世界で初めて明らかにした。

研究の背景

低用量アスピリン(75-100mg/日)による脳梗塞や心筋梗塞の再発予防は広く世界で普及しており、冠動脈ステント後の血栓予防薬としても標準的な治療薬となっている。また心血管イベントの一次予防としても、ハイリスク患者を中心に世界で広く利用されており、近年では大腸癌の予防効果についても報告がなされている。
しかし、低用量アスピリンによる心血管イベント一次予防に関する研究結果は安定せず、近年では効果がない、との報告も散見される。その理由として、降圧薬や糖尿病治療薬のように、降圧効果や血糖値を指標に用量を調整する薬剤とは異なり、全ての成人に対して低用量アスピリンとして一括りに処方されていることから、患者個人での効果に違いがあるのではないか、その効果の違いの原因に体重の差異があるのではないか、と考えられた。
そこで、世界中のアスピリンによる心血管イベント一次予防の研究者が協力して、データを統合して解析を行うこととした。

研究手法と成果

国際共同研究チーム及び文献データベースからアスピリン群と対照群を比較した心血管イベントに関する研究を検索し、統合対象となる研究を抽出した。個別の研究組織から患者単位のデータを入手し、定義やデータ構造を統一化した上で、統合解析を行った。
10研究が統合対象となり、11万7279人の患者データが分析された。心血管イベント一次予防では体重が70kg以下の患者では、全ての心血管イベント(ハザード比(HR)0.77)、脳卒中(HR0.71)、心筋梗塞(HR0.81)、心血管死(HR0.79)はいずれも有意差に低用量アスピリン群で予防効果が認められたが、70kg以上の群ではいずれも予防効果が認められなかった。
癌予防効果については、登録時に70歳未満で、体重が70kg以下の患者では有意に大腸癌の発生リスクが低用量アスピリン群で低下していたが、70kgを超えると、大腸癌予防効果が認められなかった。

今後の課題

低用量アスピリンと一括りにした(one-dose-fits-all)処方は、少なくとも心血管イベント一次予防には適切でないことが明らかとなったことから、体重別などの至適な用量を今後検討していく必要があり、研究を進める予定である。また、一次予防だけでなく、二次予防で用いられている低用量アスピリンも、効果があることは示されているが、実際には体重の影響を受けている可能性があり、二次予防領域においても検討が必要である。

研究費等の出処

厚生労働科学研究費補助金(H27-循環器等-一般-001)
Wellcome Trust and National Institute for Health Research Oxford Biomedical Research Centre

掲載誌

Lancet(12 Jul, 2018)

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