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Journal of Allergy and Clinical Immunology誌に論文が掲載されました

Journal of Allergy and Clinical Immunology (published ahead of print June 8, 2016)誌に免疫学 善本 知広 教授の論文が掲載されました。

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善本 知広 主任教授

論題

Allergen endotoxins induce T cell-dependent and non-IgE-mediated nasal hypersensitivity in mice

 

論文著者名

Naruhito Iwasaki,Kazufumi Matsushita,Ayumi Fukuoka,Masakiyo Nakahira,Makoto Matsumoto,Shoko Akasaki,Koubun Yasuda,Takeshi Shimizu,and Tomohiro Yoshimoto

 

概要

1型(アトピー型)アレルギー疾患の代表であるアレルギー性鼻炎は、抗原特異的IgEと抗原によって活性化されたマスト細胞と好塩基球から放出されるヒスタミンなどによって発症する。一方、鼻炎患者の中には抗原特異的IgEが全く検出できない症例も存在し、非IgE型アレルギー性鼻炎またはnon-allergic rhinitisと診断されていたが、その発症機序は全く不明であった。本研究では、アレルギー性鼻炎モデルマウスに黄砂や花粉などに含まれるエンドトキシン(グラム陰性菌細胞壁外膜を構成する内毒素)を含む抗原を点鼻すると、IgE非依存性にアレルギー性鼻炎を発症することを発見した。解析の結果、従来からの「IgE —— マスト細胞/好塩基球 —— ヒスタミン」経路とは全く異なる、「T細胞 —— エンドトキシン —— 好中球/マクロファージ —— ヒスタミン」経路がその発症に重要であることが明らかになった。

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研究の背景

アレルギー性鼻炎は抗原特異的IgEと抗原によって活性化されたマスト細胞と好塩基球から放出されるヒスタミンなどの作用で“くしゃみ、鼻水、鼻づまり”を発症する1型(アトピー型)アレルギー疾患の代表である。わが国では国民の40%がアレルギー性鼻炎に罹患している。一方、これまでアトピー症状を全く経験したことがないヒトでも、ある年突然花粉飛散時期に鼻炎症状を発症する症例も多く存在する。その中には、抗原特異的IgEが血清や鼻粘膜で全く検出できない症例も存在し、非IgE型アレルギー性鼻炎またはnon-allergic rhinitis (非アレルギー性鼻炎)と診断される。しかし、非IgE型アレルギー性鼻炎患者でも、アトピー型と同様に鼻粘膜にアレルギー担当細胞が数多く集まり、その症状は抗ヒスタミン剤の投与で緩和される。 非IgE型アレルギー性鼻炎の発症の引き金に関しては不明な点が多く、「黄砂や大気汚染物質または花粉に含まれる病原微生物やその成分が関与するのではないか」と考えられている。さらに、鼻炎症状に留まらず、“非IgE型アレルギー疾患”は新生児や乳児に多く発症する消化管アレルギーでも認められる。しかし、IgEを介さない非IgE型アレルギー性鼻炎や非IgE型アレルギー疾患の発症機序は全く不明である。この様な背景から、これら疾患の発症機序の解明と診断法および治療・予防薬を開発することが急がれる。

 

研究手法と成果

【研究手法】
マウスに卵白アルブミン(OVA)と水酸化アルミニウムの混合液を腹腔内投与してマウス体内にOVA特異的Th2細胞を誘導する能動免疫または、in vitroで作製したOVA特異的Th2細胞をマウスの尾静脈から投与する受動免疫を用いて、OVA特異的Th2マウスを作製した。 次に、上記マウスに4日間エンドトキシン(グラム陰性菌細胞壁外膜を構成する内毒素; LPS)を除去したOVA(Ef-OVA)またはエンドトキシンを含むOVA(Ec-OVA)を点鼻投与し、点鼻後10分間のくしゃみ回数と、最終点鼻24時間後の鼻粘膜の組織、ELISA法による血清IgE値と頸部リンパ節細胞からのTh2サイトカイン産生を検討した。 IgE受容体遺伝子欠損マウス、TLR4/MyD88欠損マウス、Mas-TREKマウス(ジフテリア毒素を投与するとマスト細胞と好塩基球が除去される)および、マウスにクロドロン酸内包リポソームを投与した好中球/マクロファージ除去マウスを用いた。
【成果】
1. IgE受容体遺伝子欠損マウスを用いた能動免疫型鼻炎モデルでは、Ef-OVA点鼻ではなく、Ec-OVA点鼻にのみ反応してくしゃみ回数は著しく上昇した。即ち、エンドトキシン(LPS)を含むOVAは非IgE型アレルギー性鼻炎を誘導する。
2. 鼻粘膜局所での抗原特異的Th2細胞の活性化が非IgE型アレルギー性鼻炎に必須である。
3. 非IgE型アレルギー性鼻炎の発症にLPSの受容体(TLR4)とその細胞内シグナル伝達分子(MyD88)が必須である。
4. 鼻粘膜局所でのTh2細胞の活性化に引き続き、LPSに曝露されると鼻炎症状を発症する。
5. 非IgE型アレルギー性鼻炎はヒスタミン依存性である。
6. 非IgE型アレルギー性鼻炎にはマスト細胞/好塩基球は関与しない。
7. 非IgE型アレルギー性鼻炎は好中球/マクロファージ依存性である。

 

今後の課題

本研究では、マウス生体内から好中球/マクロファージを除去すると非IgE型アレルギー性鼻炎の発症は完全に抑制された。しかし、実際に好中球/マクロファージが活性化したTh2細胞とLPS刺激によってヒスタミン産生を誘導するかは不明であり、今後の研究課題である。また、活性化したTh2細胞がどのような機序で好中球/マクロファージに作用するのかを明らかにするのも今後の研究課題である。

 

研究費等の出処

文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 (S1001055)
独立行政法人日本学術振興会科学研究費、基盤B(24390253)
独立行政法人日本学術振興会科学研究費補助金、若手B (26860340)
武田科学振興財団 生命科学研究助成

 

掲載誌

Journal of Allergy and Clinical Immunology (published ahead of print June 8, 2016)

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