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Clinical & Experimental Allergy誌に論文が掲載されました (免疫学 福岡あゆみ 助教)

Clinical & Experimental Allergy誌に免疫学 福岡あゆみ 助教の論文が掲載されました。

免疫学

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福岡 あゆみ 助教
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善本 知広 主任教授

論題

Diesel exhaust particles exacerbate allergic rhinitis in mice by disrupting the nasal epithelial barrier.

 

論文著者名

Ayumi Fukuoka, Kazufumi Matsushita, Taiyo Morikawa,Hirohisa Takano, Tomohiro Yoshimoto

 

概要

 これまでの疫学研究から、微小粒子状物質(PM2.5)はアレルギー疾患の増悪に働くことが示唆されている。しかし、PM2.5がどのようなメカニズムでアレルギー性鼻炎の増悪に働くのかは、不明な点が多い。
 本研究で我々は、ブタクサ花粉で免疫したマウス (ブタクサ花粉症モデルマウス) にブタクサ花粉単独またはブタクサ花粉とPM2.5を主成分とするディーゼル排気微粒子(Diesel exhaust particles: DEP)を点鼻する実験を行った。その結果、ブタクサ花粉単独の点鼻と比較し、ブタクサ花粉とDEPを点鼻したマウスにおいて、くしゃみ回数が顕著に増加することが明らかとなった。また、DEPの点鼻は、鼻粘膜組織へのアレルゲンの侵入を防御する鼻粘膜上皮細胞間の「タイトジャンクション」を破壊することが明らかとなった。更に、酸化ストレスの抑制に働く抗酸化剤 (N-アセチルL-システイン) を点鼻したマウスでは、DEPによるタイトジャンクションの破壊が抑制され、それに伴いくしゃみ回数の増加も抑制された。
 以上の結果から、DEPは鼻粘膜上皮細胞のバリア機能を破壊することで、アレルギー性鼻炎の増悪に働くことが明らかとなった。また、抗酸化剤の投与はPM2.5によるアレルギー性鼻炎の悪化の予防に繋がる可能性が示唆された。

 

研究の背景

 PM2.5は大気中に浮遊している2.5μm以下の微小粒子状物質である。PM2.5の発生源として工場の煤煙や黄砂などの土壌粒子、船舶や自動車の排気ガスが挙げられるが、その大部分はディーゼル排気微粒子(DEP)が占めると考えられている。PM2.5がアレルギー性疾患の発症や増悪の原因となることは、疫学研究により明らかになってきた。また、PM2.5はアレルギー発症に重要なTh2サイトカインやIgE抗体の産生を促進することで、アレルギー性疾患の発症に関与することが報告されている。一方、PM2.5によるアレルギー疾患の増悪機序については明らかではなかった。
 アレルギー性鼻炎は、鼻腔内に侵入したアレルゲンが鼻粘膜上皮細胞のバリアを通り抜けることで鼻粘膜組織へ侵入し、免疫担当細胞に作用することで誘導される。鼻粘膜上皮細胞のバリア機能には、細胞間に形成される「タイトジャンクション」が重要である。タイトジャンクションは隣接する細胞同士を密着させ隙間を埋めることで、アレルゲンの組織への侵入を防いでいる。そのため、タイトジャンクションの破綻はアレルギーの増悪に繋がると考えられている。従来、肺上皮細胞株を用いた培養実験で、DEPがタイトジャンクションに関与する遺伝子の発現を低下させるという報告はある。しかし、マウスを用いた実験で、DEPが鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションに与える影響についての報告はなかった。

 

研究手法と成果

【研究手法】

ブタクサ花粉症モデルマウスに、ブタクサ花粉またはブタクサ花粉とDEPの点鼻を4日間行った。点鼻直後10分間のくしゃみ回数の測定と、最終点鼻から24時間後の頸部リンパ節細胞のTh2サイトカイン産生および鼻粘膜組織への好酸球浸潤を解析した。また、DEPの鼻粘膜上皮バリアへの影響を解析する目的で、DEP点鼻後、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの構成タンパク質の発現を免疫組織学的に解析した。更に、マウスに抗酸化剤であるN-アセチルL-システインを点鼻し、DEPによるタイトジャンクションの破壊およびくしゃみ回数の増加に対する影響を解析した。

【成果】

  1. ブタクサ花粉のみの点鼻と比較し、ブタクサ花粉とDEPを同時に点鼻したマウスでは、くしゃみ回数の顕著な増加が観察された。
  2. 頸部リンパ節細胞が産生するTh2サイトカイン産生量や鼻粘膜組織への好酸球の浸潤は、ブタクサ花粉のみの点鼻群とブタクサ花粉とDEPの点鼻群で差は認められなかった。
  3. DEPを点鼻したマウスでは、鼻粘膜上皮細胞間のタイトジャンクション構成タンパク質の発現が低下していた。
  4. マウスに抗酸化剤であるN-アセチルL-システインを点鼻した結果、DEPで誘導されるタイトジャンクションの破壊とくしゃみ回数の増加が抑制された。

以上の結果から、DEPは鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションを破壊し、アレルゲンの鼻粘膜組織への侵入を亢進させる結果、アレルギー性鼻炎を増悪する可能性が示唆された。

 

今後の課題

ブタクサ花粉症モデルマウスを用いた本研究から、DEPがアレルギー性鼻炎の増悪に関与することが明らかとなった。しかし、DEPがどのようなメカニズムで鼻粘膜上皮細胞に酸化ストレスを誘導するのかは現在不明であり、今後の課題である。

 

研究費等の出処

文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 (S1001055)
独立行政法人日本学術振興会科学研究費、基盤B(24390253)
独立行政法人日本学術振興会科学研究費、挑戦的萌芽研究 (26670480)
独立行政法人日本学術振興会科学研究費、若手B (15K19139)
武田科学振興財団 生命科学研究助成

 

掲載誌

Clinical & Experimental Allergy (published ahead of print July 23, 2015)

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