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Hepatology誌に論文が掲載されました

Hepatology誌に病原微生物学 筒井 ひろ子 主任教授の論文が掲載されました。

病原微生物学 筒井 ひろ子 主任教授病原微生物学 筒井 ひろ子 主任教授

論題

「Interferon-gamma-mediated tissue factor expression contributes to T-cell-meidated hepatitis through induction of hypercoagulation in mice.」

 

論文著者名

Junko Kato, Tomohiro Okamoto, Hiroyuki Motoyama, Ryosuke Uchiyama, Daniel Kirchhofer , Nico Van Rooijen, Hirayuki Enomoto, Suhei Nishiguchi, Norifumi Kawada, Jiro Fujimoto, Hiroko Tsutsui

 

概要

T細胞活性化レクチンであるConcanavalin A (CoA)をマウスに静脈内投与すると、急性の劇症肝炎になる。この劇症肝炎に炎症性サイトカインであるIFNgやTNFが関連することは周知の事実である。一方、私たちは、血液凝固を阻害すると、IFNgやTNFが正常に産生するにも関わらず、本劇症肝炎を回避できることを既に報告した(Hepatology 1997;27:497-506)。今回、この血栓性劇症肝炎の細胞・分子メカニズムを検討した。野生型マウスにCon Aを投与すると、即座にIfngとTnf発現が肝臓に誘導され、次いで血液凝固先導因子であるtissue factor (TF)と線溶阻害分子であるplasminogen activator inhibitor type 1 (PAI-1)のmRNA発現が誘導された。遅れて、肝内には高度のフィブリン沈着が観察され、広範囲の肝細胞壊死に至った。逆に、IFNg欠損マウスやIFNg・TNF両欠損マウスは、肝臓のTfやPai1の発現誘導、更には肝障害を回避した。TF中和抗体を野生型マウスにあらかじめ投与しておくと、Con A劇症肝炎は回避されたが、PAI-1欠損マウスは正常に劇症肝炎になった。肝類洞を構成する肝臓マクロファージ(Mø)と類洞内皮細胞 (EC)はTF発現能力を持つが、両者ともCon A投与後Tfを発現した。あらかじめMøを除去したマウスに、IFNgのシグナルに不可欠のSTAT1を欠損した骨髄細胞を移入して再構築しておくと、Con Aを投与しても肝臓のTf発現低下と肝障害の軽減が観察された。逆の組み合わせでも同様に軽減した。組換えIFNgとTNFを投与しておくと、T細胞を欠如してCon A肝炎抵抗性であるRAG2欠損マウスも、Con Aに対する感受性が著しく亢進した。
【結論】以上まとめると、肝MøとECにおける、IFNg、TNFそしてCon Aを介するの炎症性信号が、病的凝固亢進性の劇症肝炎に必要不可欠であることが判明した。

 

研究の背景

 ・Con Aをマウスに静脈投与すると劇症肝炎に成る。
・IFNg中和抗体やTNF中和抗体、更には両者を投与するとCon A肝炎は回避される(Hepatology 1997;27:497-506)。
・抗凝固剤のヘパリンを前もって投与しておくと、血清中のIFNgやTNF濃度は正常に上昇するが、肝障害が回避される。このことから凝固・線溶系の重要性が示唆される(Hepatology 1997;27:497-506)。

 

研究手法と成果

 野生型マウス、IFNg欠損マウス、TNF欠損マウス、IFNg・TNF両欠損マウス、PAI-1欠損マウス、TF中和抗体を投与した野生型マウスにCon Aを投与し、血漿中のトロンビンのインジケーターであるTATをELISAで、肝臓の炎症性サイトカイン・ケモカイン並びにTFとPAI-1のmRNA発現レベルをq-RT-PCRで、肝臓のフィブリン沈着を免疫化学で、肝障害の程度を血漿ALT濃度測定並びに肝臓の組織学的解析で検討した。
成果を列挙する。

1)Con Aを野生型マウスに投与すると、肝臓にIfngとTnf発現が誘導され、次いでTfとPai1発現が誘導された。
2)遅れて、肝類洞壁にフィブリン沈着と広範囲の肝壊死像、血漿ALT上昇が観察された。
3)IFNg欠損マウスやIFNg・TNF両欠損マウスは、肝臓のTfやPai1の発現、更には肝障害を回避した。
4)TFを中和すると肝臓並びに全身の凝固亢進は阻止されて肝障害も回避されたが、PAI-1欠損マウスは正常に肝障害に陥った。
5)Con Aを投与すると、肝MøとEC両者ともTF発現が増加した。
6)野生型マウスとSTAT1マウスの再構築マウスでは、いずれも肝障害が部分的に回避された。
7)RAG2欠損マウスにIFNg+TNF+Con Aを投与すると、血栓性劇症肝炎に陥った。

 

今後の課題

今回証明した炎症応答により誘導される異常凝固亢進が、劇症肝炎臨床症例でも認められるのか、今後の臨床研究が待たれる。このような症例に対しては、積極的に凝固亢進を標的とした治療が有効と考えられる。

 

研究費等の出処

文科省科研費(挑戦的萌芽研究)22659328、24659806

 

掲載誌

Hepatology 2013;57:362-372.

 

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