message01.png

私は1983年に医学部を卒業し、1年ずつ3つの病院にて研修した後、基礎医学教室の大学院生として入学しました。その理由は医学博士を取りたかったことと、アカデミックなことをしてみたかったことからであり、学位取得後は臨床に戻るつもりでした。しかしながら、基礎医学研究の面白さの虜になり、ついに臨床医に戻ることなく今に至っています。私が感じた基礎研究の面白さとしては、まず若い自分が考え実験をして自分のデータを発表出来るという点、これは若い臨床医が自分で考えた治療方法でデータを出すということはほぼ不可能であり、結果が早くでる基礎研究の良さでした。第2には、その自分のデータを英語の論文で発表、さらに海外で発表するということの、知的喜びが何とも心地良かったからです。文献でしか知らなかった外国人の有名研究者とたどたどしい英語で会話をして、自分のデータを褒めてもらった時の何とも言えないワクワク感は一生忘れられない思い出です。このようにそれぞれ理由は違うけれども、医師が基礎医学研究を継続して最終的に基礎医学の教員となったものが、以前の日本では少なからずいたわけです。
しかし2004年からの臨床研修の必修化や医師不足による多忙、さらに若手医師の間で医学博士より専門医資格が重視されるようになり、これらの結果日本におけるMD研究者は減少し、さらに日本からの医学研究論文発表の漸減がこの10数年明らかであります。現時点での医学研究論文の質と量の低下は、結果的に日本の医学研究、生命科学の暗澹たる未来を暗示しており大いに心配な点です。こうした日本の医学界が抱える問題に対する一つの策として、兵庫医科大学は2014年度に「研究医枠」による定員2名の入学定員増加を文部科学省から認可されました。2015年には本学と神戸大学、関西医科大学、兵庫医療大学でコンソーシアムを結成し、2016年度からは各大学の特徴・強みを活かしながら充実した研究医コースをスタートさせました。
本学の研究医コースは、医学研究を十分に行う時間を取るだけでなく、本学の重要な使命である医師としての質の保証、つまりしっかりした医学教育を受けて医師国家試験に合格できるシステムを構築しています。研究医コースを取るということと将来基礎医学者になるということとは必ずしも同じではなく、若い時期にきっちりした基礎研究を経験することで、科学的なものの考え方、実験方法、データ分析法、論文作成方法、さらに英語での発表等を身につけることは、臨床活動においても極めて重要な資質を高めることとなります。
兵庫医科大学は若い皆さんのために最良のシステムを作って、研究力を備えた医師になることを最大限支援したいと考えています。