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兵庫医科大学医学会

汕頭大学医学院での研修を終えて

大城 葵さん(第2学年次)

1年のときにこの留学の話を先輩から聞き、とても魅力的なプログラムに感じました。先輩の報告書を読み、プログラムを詳しく見て、自分が実際に留学したら、現地に行くことでしかわからないようなこと、感じられないようなことを学びに行きたいと思いました。私は医療体制、それに基づく人々の暮らしに興味があったので、今回の留学の目的を『地元の方々の暮らしを見て、日本と比較すること』としました。
7日、汕頭に到着したのは16時ごろでした。ホテルまでの道中で、ここの交通ルールに大変驚きました。バイクがとても多く、2人乗りから4人乗りまでいて座席もそれように広くなっていました。またヘルメットをかぶっていない人も多いし、逆走するバイクも何台も見ました。進路変更や交差点の進入もクラクションを鳴らして強引に行く、という感じでした。ここでは譲り合いとか言っていたら一生目的地にたどり着かないかもしれません。これは中国全体ではなく、汕頭地域に限ったことだそうですが、地域性のひとつを発見したようでした。一般に発展途中の地域ではバイクが多いそうです。このような状況でも車両はかなりのスピードでぶつからずに進むことができていたので、運転技術がうまくなりそうだ、と思うと同時に運転するのがすごく疲れるだろうと思いました。ホテルにつき、ウェルカムパーティーでたくさんのおいしい食事と先生方にあたたかく迎えていただきました。どの先生も日本語や英語が堪能で、たくさんのお話をしていただきました。その後、外に散歩に連れて行っていただきました。内海沿いに大きな歩道が整備されており、多くの人が散歩をしていたり、音楽をかけてダンスをしていました。一緒に行った男子たちが少し混じるような素振りを出すと温かく迎え入れてくださり、日本にはおそらく見られないノリの良さが感じられました。汕頭は20度くらいで過ごしやすい気候でした。これが正月や冬休みの期間に重なるため、外にも人が多く、噴水パレードや合唱などさまざまな催しも行われていました。これらは仕事を引退した人たちがほぼ毎日しているそうで、明るい町だと感じました。
8日、田舎を訪問しました。この地域には診療所はなく、1ヵ月に1度ほどテントを張って診療施設を仮設し、医師が問診に行ったりするそうです。まず血圧を測り、診療記録を書く紙を配布し、中で必要な検査、処置を受けるようなシステムでした。とはいっても、ここでできるのは視力検査や簡単な外科的治療で、日本のどこの田舎の診療所よりも簡単なものにすぎないようでした。ここで医師について血圧測定を手伝わせていただきました。電動のものは数が足りず、私は授業で習った水銀を使った原始的なものを使いました。服の上からマンシェットを巻く点や患者さんがタバコを吸ったままで測ってしまう点日本との相違でした。聴診器も慣れない作業で難しく、結局正しく測定できたのは3回ほどでした。私が測りそのあとで医師が測る、とすると二度手間になり、時間もかかるのに、患者さんは私が測ることを特に気にしてないようでした。何度か話しかけられましたが、さっぱりわからず笑顔でごまかすことしかできませんでした。医師が患者さんに私について説明してくださいましたが、こんな怪しいのに嫌な顔せず測らせてくれるのも国民性ではないかと思いました。日本で勉強するときに、原始的なものを使ったとき、「今はこんなもの使わないし、看護師さんが測るでしょう。」と使い方を確実には理解しませんでした。それは日本のように設備が整ったところから出なければ別に問題ないかもしれなませんが、発展途上国で医療を行う場合、それではいけないと思いました。私の中では日本の田舎が医療制度の最底辺にありましたが、この見学でその視野が広くなりました。その後問診に同行しました。訪問先は仕事ができなかったり、安定した収入のない方のお家だそうです。だから米や油などの支援物資をもっていきました。こうして簡単に診察をして処方箋を書き、薬は先ほどの仮設施設に自分で取りに来てもらうそうです。あるお家は排泄物のにおいもきつく、ハエが多く飛び交う環境でした。貧しすぎて結婚できない、自分の名前が書けない方もいました。目の前にはアップルストアがあり、最新のスマホが売られていました。格差を目の当たりにしたようでした。当然、中には飲料水を買うお金も満足にない方もいて、薬を飲む水は清潔ではないかもしれないと聞き、公衆衛生学の発達の重要性を感じました。急病の場合は近くの病院に運ばれますが、保険制度やお金のために必ずしも全員が診察してもらえるかどうかはわからないそうです。往診先の方も、仮設施設に来られた方も、医師が来るのが待ち遠しく、診察のあとはほんの少し安心しているように感じられました。その後昼食をいただき、いくつか公園を散歩しました。とても大きな公園で、多くの家族連れが楽しそうに休日を過ごしていました。パチンコ店などは見当たりませんでしたが、トランプや囲碁っぽいゲームで賭け事をしている成人グループは多かったです。
9日は、病院や大学を見学しました。ここも多くの人であふれていて、病室の外にベッドが出ている点、手術後の患者が使うエレベーターと外来やお見舞いの人が使うエレベーターが同じだという点が驚きでした。本当は病室の外にベッドを置くのは違法ですが、患者を受け入れないよりはましだという考えのために、このようになっているそうです。さらには禁煙マークのすぐそばで喫煙している方も多くみられ、問題があるように思いました。ここでは、退院した方がつくる輪について学びました。術後の人々のネットワークがかなり強く、山登りやごはん会などの集いを定期的に開き、精神的なケアまでサポートをするそうです。日本にも『患者の会』はありますが、どちらも素晴らしい活動だと思いました。昼食後は医学院生と話しながら大学へ向かいました。会話の中で「中国の医師は日本の医師のように信頼されていない、だから私は留学して日本の医師が信頼される理由を学びたい。あなたはなぜ日本の医師は信頼されていると思うか。」と聞かれました。「わからない・・・」としか答えられませんでした。昨日見学した感じでは医師は信頼されていると思ったので、とても驚きました。同じ国内でも地域によるのかもしれません。大学は国立の総合大学だけあってとても広く、医学院には臨床技術の練習できる施設が充実していました。模擬オペ室は医師になってから使えるそうで、人形の汗のかきかたや痛みの感じ方も本物のヒトのようでした。人体生命科学館では解剖の教科書が3Dになったように展示されていました。私は特に、時期も様々な胎児の展示に引きつけられました。実際にヒトが展示されているので、これが学内にあれば倫理的な理解も解剖の知識と合わせて深まると思いました。図書館も立派で、テスト時期に兵医で勃発する席とり戦争など無縁でした。こんなところで勉強したい、とみんな言っていました。
10日、ホームビジット型のホスピスについて学びました。癌末期で経済的に困難なひとに無償で痛み止めなどの治療を行います。また、家族の精神的サポートも看護師、場合によっては精神科医などと共に行います。中には病院に行き外科的処置ができれば治る人もいますが、お金がないから放置して末期になってしまった人も多くいるそうです。家族のためにまだ働きたいと言っている患者さんもいて、こんなに元気そうなのに末期のがん患者さんなのだということが信じられませんでした。昼からのお話で、3、4年の医学生もボランティアとして関与することがあり、「医学的知識はなくとも、話をきくだけでも痛みを取り除くことができると学んだ」と言っていて、こういう経験から“きく”という医師として大事な能力が身に付くのではないかと思いました。
11日は口唇口蓋裂、感染症、眼科病棟を見学しました。口唇口蓋裂の先生には「医師として胎児がこういう状況なら妊娠を続けるか」など難しい質問をされ困ってしまいました。「医師は患者の家族と話し合いながら、科学者として付き合わなければならない」と言われ、“科学者”という言葉が焼付きました。この向き合い方は医師としてどこでも共通なのかもしれません。
12日は潮州観光のあと田舎の眼科病院を見学しました。ここには医師が30人、ベッド数は60ほど、6万人が暮らすにしては小さすぎる規模でした。救急の場合はヘリが飛ぶこともありますが、ヘリポートの整備などは整っていないそうです。救急車は病院にもあり、中には多くの医療機器備わっているため、通報とともに医師が乗って現場に向かいます。しかし、道路は一車線なのに住民が茶葉を広げていたり、がれきが転がっていたり、幹線道路と生活道路が混ざっていて大きなトラックも田舎まで入ってくるので、現場に早く着くのは難しいこともありそうでした。
13日はお土産を買ったあと産婦人科を見学しました。妊婦さんのお腹をさわって胎児を確認し、不妊治療検査をみせていただきました。また診察の順番がなく、妊婦さんたちが「我先に」とカルテを先生の前に置く姿が印象的でした。男子禁制と書かれていても男性が入ってくるし、胎児が死んでいるというバッドニュースを伝えるのも周りに多くの人がいる環境でした。それがここでは当たり前のようでした。そんな忙しい状況でも私たちに日本語で説明をしてくださり、基礎しか勉強していなくても何が起きているかわかりました。配慮がとてもありがたかったです。先生の診察のスピードも素晴らしかったです。またこの日、道端で心疾患を抱えた患者さんが亡くなるのを目にしました。病院はすぐそこなのに、先生が何度も電話して催促していました。催促しないともっと来るのが遅くなるそうです。救急隊が来たときには大きな野次馬ができていて、これは日本でも同じだと思いました。
全体を通して、食事の際には自分で食器をお茶で洗ったり、トイレにドアがなかったり、トイレットペーパーを持ち歩いたり、クラクションの音がずっと鳴っていたり、日本にない習慣を経験しました。私たちは日本で衛生状態が良すぎるところで生活しているので少しデリケートになっているのかもしれません。今回、1週間という期間でとてもとても濃い経験をさせていただきました。見学したものは大変印象深いもので、貴重な経験になりました。本当に多くのことを学ばせていただき、感じたことをすべては書ききれません。多くの経験から様々な比較をし、目的も果たすことができました。このような研修ができたことを本当にうれしく思います。たくさんの方のご配慮により、何不自由なく過ごせました。充実した研修をさせていただき、本当にありがとうございました。

研修中の様子

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