広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学での研修を終えて

杉谷 味保さん(第5学年次)

今回、8月6日〜8月13日の日程でシアトルでのワシントン大学医学研修に参加させていただきました。McCormick先生を始めとする先生方から生命倫理に関する講義を受け、講義の内容に関するディスカッションを先生を交えて行ない、シアトル大学の関連施設であるSeattle Children’s Hospital、Cancer Care Alliance、Northwest Kidney Center等を見学させていただきました。1週間という短い間でしたが、言葉では言い表せられないほどの沢山の経験をさせていただきました。その中でも特に印象に残った講義についていくつかご報告いたします。
まず私が最も印象に残った講義は、McCormick先生によるfour box methodを用いた倫理問題に関する講義です。four box methodはその患者さんが抱えているMedical Indications(医学的情報)、Preferences of the Patient(患者さんの意思)、Quality of Life Considerations(QOL)、Contextual Features(社会的、経済的といった周辺環境)という4つの項目ごとに問題を列挙し、その患者さんに対して何がベストであるかということを倫理的に考えるというものでした。実際に私たちもこの方法を用いていくつかの倫理的な問題について考えましたが、患者さんの精神状態や年齢、病気の進行具合によっても何がベストであるかというのは変化してくるため、非常に難しいと感じました。しかしこのfour box methodを的確に考える事が出来るようになれば、医療者側も患者さん側も納得のいく結果になると思うので、普段からこの様に考えていく訓練をしていけたらと思います。また、医療者である私たちだけでなく、患者さん自身も自分のことを客観的に考えられるのではないかと思いました。
Lam先生によるEthical Issues with Patients with Kidney Failureという講義では、58歳の女性で癌の遠隔転移があり、敗血症を生じ腎不全、呼吸不全を来し意識不明という状態の患者に対して透析を行うべきかどうかという問題について実際に自分たちでfour box methodに分類してディスカッションを行いました。私たちは、その患者の旦那さんが望んでいる、透析を行ってお家に連れて帰りたいという意見を支持し透析を行うべきだと述べましたが、現実的には透析をすれば亡くなるまでICUに居ることになってしまい、家に帰れなくなりますし、更に透析を行ったとしても予後は改善されないため、透析は行わないほうが望ましい、と先生に言われました。透析をしてもしなくても予後に変化が無いのならば、残される旦那さんの気持ちを尊重し、後悔しないよう出来る限りの治療を行うべきという、Patient Preferencesを重要視した考えだったのですが、実際透析を行っても家に帰ることができるのか、というQuality of Life Considerrationsの問題に関してよく考えてなかったことに気づきました。また、これ以上患者さんに対して侵襲を加えてしまうのも良く無いし、医療費や医療資源を無駄にしてしまい、他の助かるかもしれない命も助からない、というContexual Featuresの部分も考えが甘かったです。この講義だけではなく、ワシントン大学で様々な講義を受け、アメリカでは患者や家族の意思や自立尊重を最も大切にするのは勿論ですが、必ずしもそれだけが優先されるわけではなく、four box method1つ1つそれぞれのバランスが大切であると知ることができました。このfour box methodのバランスを成り立たせるためには患者さん1人1人とよく話し、その医療行為を行った後本当に患者さんやご家族が幸せになるかどうか、というその後のことも考えた上で治療方針を患者さんやご家族に説明することが重要であると思いました。
最後は見学させていただいたSeattle Children’s Hospitalについて述べたいと思います。Seattle Children’s Hospitalはアメリカの中でも数少ないこども病院のうちの1つであり、様々な州から患者さんが来られるそうです。小児科に特化した病院ということで病院内の廊下には可愛い絵が描かれていたり、子どもたちが病院という場所を忘れてのびのびと遊べるように医療者が介入しないプレイルームがあったり、プールで泳げたり、また、子どもだけでなくそのご両親のことも考え、疲れをとってもらえるようにマッサージルームがあったり様々な工夫がしてありました。病院自体も開放的な空間となっていて、病院にいることを忘れているようでした。こんなに子どものことを考えている病院を見るのは初めてで非常に印象に残りました。
1週間日本を離れ、アメリカという日本とは全く異なる医療に対する考え方や医療制度を持つ国で医学や生命倫理の問題に関する講義を英語で聞き、そしてディスカッションにて自分の意見を相手に英語で伝えるということは自分にとって非常に難しいものであり、自分の英語の未熟さを痛感しました。しかし同時に、患者さん1人1人のケースに沿って考える重要性、価値観の違いを知る事ができました。医師国家試験に合格する為に日頃医学の勉強をすることはもちろんですが、患者さんにとって何がベストなのか、患者さんに寄り添える医療がどういうものであるか、自分には何が出来るのかを実習中や日頃から考えていかなければならないと思いました。 また英語に対するモチベーションも高まり、いつかは海外でも医師として働きたいと思った研修となりました。
最後になりましたが、大学にいるだけでは決して経験出来ない、このような貴重な機会を私達に与えてくださった枚方療養園の山西先生をはじめとして、古山先生、山下さん、金沢さん、杏林大学の蒲生先生、英語科の古瀬先生、国際交流センターの鳥井さん、そして素晴らしい講義をしてくださったWashington大学のMcCormick先生やKing先生、沢山の先生方に心から感謝申し上げます。本当に有難うございました。

研修中の様子

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