広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学での研修を終えて

五明 祐介さん(第5学年次)

8月6日から13日にかけて、兵庫医科大学5年生10名でアメリカのシアトルに行きました。そこで、McCormick先生やKing先生をはじめとする先生方の貴重な講義を受けることができました。
まず、今回のワシントン大学医学部の夏期研修に行こうと思った理由について述べていきます。兵庫医科大学に入学した時から、在学中に海外に行って勉強したいという思いがありました。比較的時間的に余裕のある学生の間に、何らかの目的をもって海外へ行くことは、有意義で刺激的なものになると考えたからです。海外研修プログラムの中でも、これまでの一般教養や臨床医学に関する知識もある程度備わってきた5年生の夏休みのタイミングで参加できるワシントン大学医学部の夏期研修に興味を持っていました。また、英語で何かを伝えたり、文章を書いたり、聴いたりすることが英語圏の環境下でどのくらいできるのかということにも挑戦したいと思っていました。そして、今回の生命倫理に関する講義を通して、これからどのような道へ進むことになったとしても、将来的に何か物事を考える際のツールとして使えるものを吸収して帰りたいと思っていました。 ワシントン大学だけでなく、シアトル小児病院、シアトルがんセンターアライアンス、ノースウエスト腎臓センター、ハーバービュー医療センターへ施設見学もしました。それぞれの施設で大変貴重な講義をしていただきました。中でも、印象に残っているものを取り上げたいと思います。
McCormick先生による症例分析の4ボックスメソッドについての講義を受けました。医療の現場においては、様々な倫理問題に直面することがあり、臨床的判断が求められるということでした。そのようなときにどのような過程で考えていくのかということについて、シャーロックホームズを例に、バイオエシックスにおいても患者とのコミュニケーションを通して手がかりを探していくということを説明してくださいました。4ボックスは、患者の受ける治療、患者の意思、QOL、周辺状況という4項目に分けて、情報を整理します。そして、ケースごとに生命倫理の四原則である自律尊重、無危害、仁恵、正義の中から、鍵となる原則を考えるというものでした。この考え方は、将来医師になってから自分も実践していきたいです。McCormick先生が主にアメリカにおける臓器移植に関する歴史と現状について説明してくださいました。1950年代に初めての腎移植が行われたことを皮切りに、1963年の肺移植、1967年の成人女性への心臓移植、1984年の子供の心臓移植と行われてきたということでした。当時、ドナーが囚人という移植例もあり、これに関しては倫理的問題があります。授業の中では特に脳死に関してハーバード大学医学部の委員会の脳死判定基準が紹介されました。その内容は、無感覚、無反応、自発運動の消失、無呼吸、反射消失、平坦脳波です。具体的な臓器移植の症例をいくつか挙げながら、アメリカの臓器移植の現状と日本の現状を比較しつつ、議論を深めていきました。
Van Voorhis先生の低所得の国において医学生が従事すべきだという話についてです。様々な感染症の中で、年間1.5億から3億人の人が罹患し、年間43万人の人が亡くなっているというマラリアについて紹介がありました。直面している問題と今後の課題について、殺虫剤に対する耐性が出てきているということから、新しい殺虫剤が必要であるということであった。世界規模でコントロールと根絶していく必要があるということであった。その他にも疾患が紹介されていました。循環器系や呼吸器系をはじめとするNon-Communicable Diseases(非感染性疾患)の低・中所得国での増加が興味深いものでした。食生活や高血圧や喫煙や飲酒などがリスクファクターとして大きく関与しているということでした。こうした現状に対してどのような取り組みが国際的に行われているのか気になって調べてみました。世界保健機構(WHO)は 低・中所得国やNCDsの頻度の高い地域に焦点を合わせて、国際的NCDs活動計画の目的を達成するためNCDネットを創設しました。また、2009年に世界心臓連合(WHF)は国際糖尿病連合(IDF)、国際対がん連合(UICC)と、2010年には国際対結核肺疾患連合(The Union)が合流して、全体として170カ国、880の会員組織からなるNCDアライアンスを形成しました。NCDアライアンスの活動により、2011年9月、米ニューヨーク国連本部で世界30カ国の代表者が国連サミットを開催しました。本サミットは、国際的、国内的レベルの努力により、数百万の人々の生命を救いNCDsによる社会的、経済的な脅威を取り除くことが期待されているということです。高所得国がどのような形で中・小所得国に対して援助していくか知るには良い例でした。この講義の終盤に、医学生の間に海外へ行くということについてどう思うか、ディスカッションをしました。医学生にできることは限られていると思いますが、低所得国が中・高所得国へとなっていくためにはただ金銭や物資のサポートだけではなく、現地での教育も必要と感じました。
Green先生の尊厳死の講義についてです。オレゴン州における尊厳死法は有名な話です。ワシントン州もオレゴン州と同様、尊厳死が認められています。対象年齢は18歳以上、ワシントン州在住で3回にわたって依頼する必要があり、2回は口頭で1回は文書でする必要があるということです。そして、医者が同意したら、その医者は別の医者に対してその患者の診断が必要となります。予後が6カ月以内に死亡という診断をして、2人の医師が同意したら精神科医の診察をする必要があるということです。医師はこの判断を拒否することが可能であるということで、その場合は他の意思を紹介する義務があるということでした。医師は致死薬を患者に処方することはあっても、それを飲むか飲まないかは患者の判断に委ねられるということでした。日本には尊厳死に関する規定はありませんが、果たして個人主義の強いアメリカと同様に、集団主義の強い日本でどのような議論が繰り広げられていくか注目していきたいです。
勉強以外も、パイクプレスマーケット、スターバックス、クルージング、King先生宅でのホームパーティー、ウェルカムパーティー、フェアエルパーティーなどシアトルでの観光や食事も充実しており、楽しく過ごさせていただきました。
最後に、今回のワシントン大学夏期研修の機会を与えてくださった山西先生と団長の古山先生をはじめとする枚方療育園の方々、古瀬先生、蒲生先生、講義をしてくださったMcCormick先生、King先生をはじめとする先生方、ありがとうございました。

研修中の様子

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