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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学での研修を終えて

奥間 政矢さん(第5学年次)

今回、シアトルの研修に参加させて頂いて多くのことを学び、自分自身成長したように思います。この研修に参加したのは、僕自身英語が好きでアメリカの大学で英語で議論を交わしながら、大学の雰囲気を体験してみたかったというのもありましたが、5年生になり臨床の現場に立ってみて、4年までの教室という空間で学んだこととはまた違ったことを考えさせられる機会が多々あったからです。治療法に関しての例を挙げてみると、教科書的にはこの治療をすることがベストで、端的に言うと、患者さんもこの治療法を享受するべきであると学んできました。つまり、患者さんもこの治療法を選択するだろうということと、どの患者さんにとってもまずは治療する、病気を消滅させることがベストであるという前提に立った上での考えでした。僕自身もその前提に気づかず、当たり前のものとしてただただ疾患と治療法をセットで覚える形で満足していました。もちろん、最善策は完治することでそれを目指すことは医療においては大切であり、それが医療の根幹を成しているということは周知の事実です。しかし、実際に臨床の現場には様々な患者さんがおり、そこには色々な社会背景があり、またそれぞれが自分の考えをもってらっしゃるかたがいて、必ずしも完治を目指すことがそのかたにとってベストとは限らないということを知りました。それと同時に思ったのが、治療を施す側としての私たちは、疾患を完治させてあげたいと思い、完治しないといけないという義務を持ちながら、も患者さんの気持ちも尊重しなければならないという葛藤があるのではないかということです。これは、答えがなく、何が正しいのかわからない、大変難しい問題だなと感じていました。そんなときに知ったのが、今回の研修のことでした。アメリカで生命倫理を学べるという、僕にとっては願ってもないほどの経験ができるということを知り、応募しました。研修内容は、スケジュール的にはかなりタイトでかつ、議論のテーマがほぼすべての授業で生命倫理に関してであったので、中身の濃いハードなものでありましたが、毎回の授業でのスピーカーがかなり丁寧に教えて下さり、しかも情熱的に問いかけて下さったので、こちらのやる気も掻き立てられ、頑張らないといけないという気持ちになりました。内容についても、日本でも難しい倫理問題として議論になっているものばかりで興味をひかれました。僕の中で印象に残っているものは、上にも挙げた治療法の選択と尊厳死についての話でした。
治療法の選択については、議論のケースが、エホバの証人の両親をもつALLの10歳の女児が輸血をしないと助からないということになったときどのようにすればいいのかというものでした。この場合、輸血をすれば90%の確立で救命できるとのことでしたが、患者に自己決定権がないため両親は宗教上の理由から輸血を拒否したときにどのようにしたらよいかを議論しました。去年、学校で習ったのは治療を受けるために説得するというものでした。正直、そうすることしか医療者側もできないのだろうと思います。この場合、何もできないまま救命を諦めるという可能性もあるわけで、それをきいてから疑問に残っていました。しかし、アメリカのワシントン大学で新たに知ったことは、ワシントン州では輸血するか否かを法廷の場で決めることができるということであった。これは、かなり衝撃的で、うやむやにせず白黒はっきりさせることができるのもアメリカらしいなと思いました。これですっきりするのかとは思ったが、そのときぼくが思ったのは、治療の決定を法廷の介入によって第三者に判断を委ねるということは、医者が決めることと変わらないのではないかということです。やはり、倫理問題は難しいなと感じました。
尊厳死については、日本では敬遠されていて好ましくないと言われているが、アメリカのワシントン州では実際に行われていて、それがどのように行われているか詳細に聞くことができました。尊厳死はまず、ワシントン州在住であること、2人の医者の許可が必要、患者さんは尊厳死をいつでも辞退することができるなどの決まりがあることや、また、最期の過ごし方についても細かく教えて頂いた。日本では聞けない内容でかなり生々しく聞けたので驚きを隠せませんでした。将来的に日本でも実施されることはあるのか気になったが、文化的な背景からは厳しいのかなとも思いました。
このように日本でもトピックとなっている倫理問題について学ばせて頂きましたが、その他にもアメリカの医療制度やシステムについての授業もありました。その中でいいなと思ったことは、アメリカにはChaplainという患者さんの精神的な部分をケアする職業があるということだった。日本の臨床心理士とは違うらしく、医者が紹介する形や、患者さんが直接Chaplainの紹介をお願いすることもできるとのことでした。それと比べると、日本では、身体の機能改善にたいして重要視していて精神ケアに対しては重点を置いているとは言い難いと思いました。医師や看護師が話を聞きに行く程度で、しかも日本人は自分の気持ちを表現することを遠慮する人が多いこと、さらに精神的に安定することで、さらにそれが身体の状態にも影響を与える治療成績がよくなるなではないかという考えからも、日本にこそChaplainのような存在が必要だと感じました。
以上のことが特にアメリカでの印象に残ったことですが、初日と2日目にはショッピングや観光、5日目にはクルージングの時間も頂き、シアトルの雰囲気も楽しむことができました。これらのこともあり、シアトルに来たいなと思うようになりました。 最後になりますが、今回の研修では、今後二度とないような経験をし、有意義な時間を過ごさせて頂きました。この研修で学んだことを将来への糧となるように今後も精進して参りたいとおもいます。このような貴重な機会を与えて下さった枚方療育園の山西先生、古山先生をはじめ多くの先生方、また山下さん、金澤さんをはじめとする職員の方々にお世話になりました。この場をお借りして、感謝申し上げます。ありがとうございました。

研修中の様子

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