広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

カリフォルニア大学サンディエゴ校での実習を終えて

● 金本 佑子さん(第6学年次)

01.jpg3月30日~4月25日までの4週間、UCSDのPulmonary Laboratoryで実習させて頂きました。この研究室では、主に呼吸器疾患における肺機能検査の活用について研究されていました。
日本の実習でも肺機能検査が多くの場面で活用されていることを学んでいましたし、呼吸生理学の奥深さにも興味をもっていました。数ある選択科目の中からこの研究室を選択したのは、このチャンスにより深く学びたいと考えたからです。私がお世話になった研究室は、教授がpulmonary physicianで、その他十数名のtest technicianの方がいらっしゃいました。毎月のように複数の留学生が学びに来ているようで、初日から居心地よく過ごさせてもらいました。またPulmonary General & Critical Care Departmentに所属するラボだったため、呼吸器内科の診察や処置、ICU管理やラウンドなど、とても多くの経験をさせていただくことが出来ました。毎日7:30-8:00スタートで、曜日ごとにある程度スケジュールが決まっており、laboratory以外にも、pulmonary general clinic、sleep clinic、COPD clinic、Cystic fibrosis clinicや、bronchoscopyの見学、pulmonary grand roundやmechanical ventilation roundに参加させてもらうなど、様々なチャンスを頂きました。
留学に向けて以前より医学英語の勉強に取り組み、日々英語でラジオを聞いてみるなど努力はしていたつもりですが、やはり現地の方の会話はとても速く、聞き取れないこともたくさんありました。はじめの方は、夕方になると英語がただ耳をすり抜けていくこともありました。ただホストファミリーの方が本当に良くして下さり、家で過ごす間も英語で会話できる機会に恵まれていたため、1ヶ月の間とても楽しい時間を過ごすことができました。この留学で得られたことのうち、私の中で大変印象に残っていることをいくつか紹介させていただきます。
02.jpg1つ目は、肺機能検査・呼吸生理学についてです。毎週4~6時間ほど、教授が直々に講義をしてくださる時間があり、その間に呼吸生理学について、また肺機能検査の原理や結果の解釈の仕方について丁寧に教えて頂きました。肺機能検査については、私はこれまで結果をパターン化して認識していたのですが、原理を物理学や化学の原則に基づきながら教えて頂き、ある日は朝行くとホワイトボードに質問が書かれており、「なんでこうなるのか、数式を使って今日の午後僕に説明してみてください」と自分で数式を導き出して教授にプレゼンしなければいけないこともあり、簡単ではなかったものの大変身になったと思います。また日々、患者さんの肺機能検査の結果を解釈しカルテに打ち込むこともさせて頂きました。
2つ目は、患者さんに対して初診の問診を取らせてもらったことです。留学の1つの大きな目標が問診を取ることでしたので、はじめて取らせて頂いた時は本当に嬉しかったです。Pulmonary General Clinicはfellowが1人で診察したあと、attending physicianにプレゼンし、治療方針を相談した後、再度2人で患者さんの診察に向かうという動きでした。私は基本的にfellowの方についてshadowingをすることが多かったのですが、身体診察をするときは一緒にさせていただいたりしていました。Fellowはもちろん忙しく、私のつたない英語で患者さんに問診をとり、それをプレゼンするところまで付き合ってもらうのも少々気が引けたのですが、とりわけ良くしてくださったfellowの診察日を狙い、お願いしました。英語での問診は想像以上に難しく、プレゼンについても、いざ情報を短時間の間に英語でまとめるとなると言葉もスムーズには出てこず、大成功!というわけにはいきませんでしたが、経験させて頂けて本当に良かったと思っています。
3つ目は、国民の多様性と疫学の違いです。アメリカ、特にカリフォルニア州の特徴かもしれませんが、本当にいろんな国から移住してきた患者さんがいらっしゃいました。英語を話さない方も多く、私が経験しただけでも、中国語・韓国語・メキシコ語・スペイン語・ヒンドゥー語・バーマ語と、ほんとに多様でした。手話で診察を受ける患者さんもいらっしゃいました。Doctorの中には2~3ヶ国語で診察できる方もたくさんおられ、いい意味でショックな出来事でした。doctorだけで対応不可能な場合には、病院専属の通訳の方が活躍され、またテレビ電話を通して通訳の方とやりとりをする状況もありました。
日本ではなかなか経験できないような症例も経験し、中でも特に膿疱線維症cystic fibrosisやα1-AT欠損によるCOPDは大変印象的でした。UCSDにはカリフォルニア州南部のcystic fibrosis症例が多く集まっており、独自のclinicを持っています。生後まもなく診断される方が多く、私と同じ年齢のかたや、私より若い患者さんも大勢おられました。Cystic fibrosisの患者さんは肺機能の悪化により肺移植が必要になる方も少なくありません。安定している患者さんでも状態管理としてスパイロメトリーが利用されており、自宅用のスパイロメトリーで毎日肺機能を測り、状態が悪くなったらすぐにclinicに連絡して診察を受けられるような診療体制でした。またα1-AT欠損によるCOPDの患者さんは、肺移植を受けられていました。α1-AT欠損症については全く知識がなかったのですが、実際のカルテとup to dateや論文を参照しながら、この機会に学ぶことができました。
他にも気管支軟化症Tracheomalacia、多発血管炎性肉芽腫症Granulomatosis with Polyangitis、Shrinking lung syndrome、ナルコレプシーNarcolepsyなど、多くの症例を経験出来ました。電子カルテのパソコンは同時にインターネットに接続できるようになっており、up to dateやpubmedにすぐにアクセスできる環境です。少し時間が空いた時には論文を参照でき、時間を有効に使うことが出来ました。患者さんに説明する際にも利用されており、例えば「wheezeってどんなもの?」と聞かれた時には、先生がその場でwheezeの音を検索して鳴らしていました。 以上のように医学的に有益な経験もたくさんさせていただきましたが、自分の将来のことも一生懸命考えることのできた1ヶ月だったと感じています。
03.jpg本校出身の林先生はUCSDでprofessorとしてご活躍なさっており、この留学に際し大変お世話になりました。林先生のご好意で研究室を見学させていただき、セミナーにも参加させていただきました。また同じく本校出身の石先生にお会いする機会もあり、研究の話を伺うことができました。アメリカで活躍される先輩方にお会いできたことで、自分もいつかこんな風に活躍してみたいと、大変励みになりました。
日本や自分の家が大好きな私は、わずか1ヶ月でも離れるのは寂しく、不安も大きく、特に実習が始まる前日は緊張が最高潮に達しており、一日中そわそわしていました。しかし振り返るとサンディエゴで過ごした日々でたくさんの素晴らしい出会いがあり、文化を学び、新しい土地で挑戦することの楽しさと新たな発見をする喜びを、身を持って感じることができました。これまで‘勉強’の要素が強かった英語も、今は‘コミュニケーションツール’として更に使えるようになりたいと思うようになっています。
この留学に際し、呼吸器内科学教室の中野主任教授をはじめ、万全のフォロー体制で支えてくださった古瀬先生、留学手続きにご尽力頂いた国際交流センターの鳥井さん、そして米国では受け入れてくださったDr. MorrisをはじめとするPulmonary Departmentのスタッフの方々、大変お忙しい中お世話してくださった林先生、毎日本当に楽しく安心してステイさせて下さったSkinner一家、その他この留学を応援してくださったすべてのみなさまに感謝の意を述べさせていただきたいです。本当にありがとうございました。

兵庫医科大学 〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1番1号 TEL:0798-45-6111 (代)

Copyright(c) Hyogo College Of Medicine.All Rights Reserved.