広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

汕頭留学を終えて

清水 由貴さん(第2学年次)

初日、私たちは6人で関西国際空港から広州を経由して汕頭まで行きました。汕頭に着いてからは、日本語の通じる現地の先生方が迎えに来て下さっていて、そのまま車でウェルカムディナーに向かいました。そこでたくさんの現地の先生方に温かく迎えて頂き、中華料理をご馳走して頂きました。日本で食べる中華料理とは味付けが少し異なり、独特の風味の物もありましたが、どれもおいしくお腹いっぱいになるまでご馳走になりました。
01.jpg2日目、午前中に汕頭大学医学院を訪れました。まずcharitable projects の説明をしていただいてから、大学のClinical Skills Training Center を見学させて頂きました。そこには様々な検査用の人形、本物と同じつくりの手術室や分娩室などがあり、医学を学ぶための設備が非常に整っていました。午後からは汕頭大学のキャンパスを訪れ、そこの医学生と一緒に大学内を見学しました。最も驚いたのは建設中の新教育棟にある人体生命科学科でした。そこにはまさに解剖実習で見た、本物の人体がいくつも展示されていたのです。また他にも、臓器別の血管の模型などがたくさん展示してありました。いつでも本物で解剖の勉強ができる環境を羨ましく思いました。
3日目は潮州とRound Houseを観光してから田舎の方にある眼センターに行きました。眼センターでは貧しい人々を対象に、簡単な病気の治療や白内障の手術などを行っています。難しい病気の場合は汕頭大学の病院の方へ送るそうです。センター自体は新しく、周りの建物と比べるとずっと清潔でしたが、廊下や階段のいたるところにタバコの吸い殻が落ちているのに驚きました。眼センターとはいえ、屋内の禁煙をもう少し徹底する必要があると思いました。
02.jpg4日目はまず午前中に、医師と看護師の方と一緒にホスピスの患者さんの家庭訪問に行きました。午前中はなるべく遠い方のもとを訪れるようにしているそうで、私たちは片道30分くらいかけて2人の患者さんのお宅を訪問しました。1人目は膵臓癌の患者さんで、奥さんと2人暮らしでした。本当は小さい娘さんがいらっしゃるのですが、田舎の方では男性が働きに出て女性は家を守るのが一般的らしく、一家の大黒柱が働けなくなると収入がなくなってしまうので、今は親戚に面倒を見てもらっているそうです。私たちは鎮静剤がきちんと効いているかを知るために様子を見に来たのですが、看護師の方はベッドのそばに座って、やさしく患者さんの話を聞いていらっしゃいました。中国語は全然わかりませんでしたが、患者さんの顔には悲しみと不安が、目には涙がうかんでいました。この方は自分が亡くなった後のこと、特に幼い娘が自分の死をちゃんと受け止められるかをとても心配されていました。私にはこのような患者さんにどういう言葉をかければよいのか分かりませんでしたが、看護師さんは日記を書くことを勧めていらっしゃいました。日記を通して、娘さんは大きくなった時にお父さんのことを知ることができ、お父さんも今、娘のために出来ることが見つかるので本当にいい考えだと感心してしまいました。患者さんの話を全力で聞いて、本当に患者さんのことを思っているからこそ出てくる考えだと思いました。2人目の患者さんのお宅は対照的に家族が多くて、患者さんはとてもいい笑顔をされていたのが印象的でした。午後からは汕頭大学の学生さんから、ボランティア活動についてお話を聞きました。ボランティアに参加している学生の割合や活動内容を聞いて、兵庫医科大学よりもボランティア活動に対して積極的であるという印象を受けました。
03.jpg5日目は口蓋口唇裂と感染症の病棟を訪れてから、時間があったので山登りに連れて行って頂きました。その後、眼科と精神病棟を訪れました。口蓋口唇裂は、貧しい方に対しては補助金が出るので、普通より安価で治療を受けられるそうです。感染症の病棟では、たまたま学生の方と交流することができました。日本の漫画やアニメは中国でも人気があるそうで、少し日本語を知っていらっしゃって嬉しかったです。眼科の病棟では、リアルタイムで行われている白内障の手術を、手術室の前にあるモニターで見せて頂きました。しかも専用の眼鏡をかけると3Dになるという優れものでした。手術風景を初めて見ることができ、とても新鮮でした。精神科病棟では、病気の自覚のない人が入院している建物の中に入れて頂けました。私たちが入ると、そろって患者さんがじろじろと見てくるので、さすがに少し怖くなりました。その病棟は普段自由に出入りできないところなので、中に入れて頂けたこと自体が驚きでした。そして屋内には患者さんの描かれた絵や、習字などの作品が展示されていて、そのひとつひとつの質の高さに驚きました。看護師さんの、天才と精神病の患者さんは紙一重です、という言葉が印象的でした。
04.jpg6日目は僻地医療の見学に向かいました。まず健康診断を行っているところを訪問しました。ところがこれが、屋外にあるステージの様な所で行われていて、ある意味では非常にオープンであり、誰でも訪れやすい雰囲気でした。町はとても埃っぽく、あちこちに性病のポスターが貼られていました。ここでも訪問医療に同行させて頂いたのですが、中にはとても家とは呼べないようなところに住んでいる方もいらっしゃいました。今回訪問した患者さんは全て男性でしたが、みなさん独身で仕事もなく、当然収入はほぼゼロ、援助に頼るのみという方々でした。私たちが訪問した方は病気があったから援助が受けられるものの、周りで似たような生活をされている方々はどうしているのだろうと心配になりました。そのような方まで援助し出すときりがないので仕方ない事だとは思いますが、もしかしたらここでも小さな格差があるかもしれないと思いました。
7日目は産婦人科の外来を見学しました。そこでは造影剤を使った検査を見せて頂きました。検査と言っても少し大がかりで、まずはさみを使って膣を開いてから管を入れていくものでした。この時女子生徒は一緒に中に入れてもらえたので、すぐそばで様子を見学することができました。はさみを使うときには患者さんは非常に痛そうでしたし、何よりも、このようなところを私たちが見ても良かったのかと、少し申し訳なく思ってしまいました。診察もカーテン1枚で仕切ったベッドでされていて、この時は男子学生も見ることができたので、患者さんは不快な思いをされただろうと思います。先生は女医さんだったので、産婦人科医としての仕事と家庭を両立させるのは大変ではないか、と聞いてみたところ、「楽」とおっしゃったので驚いてしまいました。中国では、家事は男性も女性も一緒にするものらしく、女性にかかる負担が少ないそうです。また、先生は当直をされておらず、昼の外来だけなので楽だとおっしゃっていました。そのため汕頭大学の医学部では、女子学生の方が少しだけ生徒数は多いそうです。日本と状況が全然違うことに驚きました。その日の晩はみんなで餃子をつくり、お世話になった先生方と一緒に晩ごはんを食べました。
最終日は朝から空港に向かって、帰るだけでした。
05.jpg1週間という短い間でしたが、学ぶことが多く、中国という国に対する見方が大きく変わった経験になりました。私の勝手な印象ですが、中国の人は他人のことをあまり気にされないのだと思います。人が多くて、どんどん豊かになる人とおいていかれる人がいて、食わなくては食われてしまいそうな社会。交通ルールは守ったり守らなかったり、列の順番も抜かせるものなら抜かしてみたり。マナーが良いとは思えませんが、そのようなことをする人を誰も咎めません。私達日本人はマナーを大切にしますが、違反する人に対して向ける眼差しは中国の人よりも冷たいと思います。これはひとつの文化の違いだと思います。それでも、お互いを大切にする気持ちは万国共通で、貧しい人々を見捨てない医療からその気持ちを感じることができました。最後になりますが、現地で優しく私たちの面倒を見て下さった全ての方に、心から感謝します。今度兵庫医科大学に汕頭大学の学生さんが来られた時には、同じようにおもてなしさせて頂きたいと思います。本当に貴重な経験をさせて頂き、ありがとうございました。

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