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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学生命倫理の研修を終えて

● 杉山 誠治さん(第5学年次)

01.jpg私はこの度8月8日から8月15日の8日間にわたって、シアトルのワシントン大学における生命倫理のプログラムに参加させていただきました。私は将来ジェネラリストになりたいという思いがあります。医療技術の進歩が進む中、以前なら亡くなられていたような高齢者が今では人工呼吸器をつけて生きられるようになっています。その一方では生命倫理の問題も大きく浮き上がってきました。たとえば延命などの問題により倫理的判断を自分に課せられる場面が将来出てくるこがあると思います。その判断のヒントを得たいという思いがあり今回の研修に応募させていただきました。今回の研修では様々な記憶に残るレクチャーがあったのですがそのなかでも特に興味深かった小児の生命倫理、スピリチュアルケア、ホスピスの在り方について振り返りたいと思います。

一つ目の小児の予防接種の話ですが、このレクチャーである症例が提示されました。予防接種反対派の親に対して医師としてどう対応するかというのが議論の内容です。アメリカでは予防接種が義務化されていません。そもそもなぜ義務化されていないかというと予防接種の副作用を心配して予防接種に反対しているグループが存在しているからです。しかし医師としては他の子たちへの感染を防ぐ役割があるため義務化されていなからといってこのまま放っておくわけにはありません。そのため反対派親に対してなぜそのように考えるのか、そして予防接種しなかったときその子どもと周りの子たちにどう影響するかをしっかり説明する必要があると思います。それでも親からいろいろ言われたりすると思いますが、医師は親の考え方をよく聞き意見を尊重しながら良好な医師-親関係を築きつつ子どもにとって最善の方法を決めていく必要があると思います。

次に、chaplainについてです。人は癌の末期、小児の緩和ケア、外傷などにより手足が動かなってしまうと患者は孤立感、憤り、苦痛、喪失感などを感じます。具体的には、「なぜ私がこんな目にあわないといけないのか」「日頃の行いが悪いからかもしれない」「神様を怒らせてしまったかもしれない」といった感情です。これはスピリチュアルペインといわれ、人が感じる4つのペインでは最も対処しにくく、同時に最も患者さんがつらいと感じる痛みです。終末期になると様々な職種の人が一人の患者に関わるのですが、この痛みに対処するのがchaplainの仕事です。chaplainは宗教にとらわれず患者さんの心に寄り添い患者さんの訴えに対して耳をかたむけることからすべてがはじまります。そして「今なにを一番望んでいるか」などを話し合っていくことにより患者さんに接し、少しでも不安を解消させてあげる努力をします。これを聞いてchaplainは本当に素晴らしい職業だと思ったので、日本でも早く普及して欲しいと思いました。また医師になったとき人の最大の痛みであるこのスピリチュアルペインに対処してあげられる医師になりたいと強く思いました。

3つ目はホスピスの在り方です。私がこのレクチャーを受けて、一番驚いたのがホスピスに携わっている人たちがいかに多いかということです。医師や看護師はもちろんのこと医療ソーシャルワーカー、chaplain、作業療法士(OT)、ボランティアスタッフ、グリーフカウンセラーなどです。私が興味持ったOT、ボランティアスタッフ、グリーフカウンセラーの役割について紹介したいと思います。まずOTの役割は、失われた機能をある程度戻すことです。例えば脳性麻痺の赤ちゃんに寝る・食事の手伝い、学生なら学校生活を行うことを助けたり、また自分でトイレ行けない人に対してトイレ行けるようにするなどです。ボランティアスタッフは患者が車椅子で散歩する時の介助や年に何回かパーティーを開いたりして患者さんの心を癒しています。グリーフカウンセラーは他の職種と少し異なり、患者さんが亡くなったあとの家族の心のケアをします。私たちは生きていく中で様々な別れを経験しますが、そのなかでも家族を失くす経験は計り知れないものです。その遺族の方たちの心のケアを行います。このグリーフカウンセラーは日本でまだ普及しておらず、遺族の心のケアがないがしろにされつつあるのでこの職業も素晴らしいと思いました。

02.jpgその他にも数多くの心に残る講義がありましたが今回のシアトル研修では、先生たちが話される英語で理解できたのは半分程度でした。また自分が英語で質問しようとしても文法が悪いのか発音が悪いのか、ほぼ通じませんでした。しかし同時通訳さんがいたおかげでなんとかこの4日間は乗り切る事が出来ました。通訳さんには感謝してもしきれません。また昼食時や移動のバスでKing先生やMcCormick先生とシアトルのことを色々聞いたり日本の良さを伝えたりと英語で会話できたことで、いかに英語を話すときに発音が大事なのかを痛感させられました。もう少し英語の勉強をしていったらもっと充実した研修になっていたと思いました。また今回は兵庫医科大学からだけでなく他大学の方々も一緒に研修を受けることで、新たな交流ができ、本当にたくさんの思い出と経験ができました。

最後に今回の研修に関わり手厚くサポートして頂いた山西先生、古山先生、蒲先先生、古瀬先生、枚方療育園の先生方、McCormick先生、King先生、通訳のTuridさん、Yoshikoさんなどには本当に心から感謝を申し上げます。私は将来ジェネラリストになり緩和ケアにも携わっていきたいと思います。今回先生たちに習ったことは将来自分が倫理的判断求められたときに必ずヒントになる要素ばかりです。この研修で学んだことは私にとって一生の宝物です。本当にありがとうございます。

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