広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学研修に参加して

● 山本 節さん(第5学年次)

01.jpg私がこの「医療倫理学」というプログラムに参加させていただいた動機について少しお話させていただきたいと思います。かねてから海外の、特にアメリカの大学で医学の勉強をしてみたいと思っており、その中でも技術や知識に関する事より、患者と医者の関係、医療を行う上で何を基準にかんがえているのかを学びたいと思っておりました。私は、すでに将来働く病院が決まっております。そこは地方ということもあり、重度の疾患を抱える高齢者が多くいます。そこで患者のために学んでおきたいと思ったことが、患者とより良い関係を築くには?患者のQOLを考えるためにはどうしたらよいか?医療行う上で最も大切な考え方は?という事です。今回のプログラムで、そのことを学びたいと思い応募しました。

研修全体の流れと講義の中で印象に残った事に分けてここに述べ行く事にします。 研修のスケジュールとして二日間の観光と四日間の講義の日程となっていました。まず、スペースニードル、Pike Place Marketなどのシアトルの市内観光、郊外のアウトレットモールでshoppingに行かせていただきました。時間が限られていたので現地の人に英語で積極的に話しかけ、時間を効率よく使いかつ英会話の実践にもなったと思います。講義ですが、四日間の間9時から5時までとてもタイトなスケジュールでした。しかし、それでも疲労を感じないくらい素晴らしい授業ばかりでした。その中のいくつかをここに書き上げていきたいと思います。

“The 4 box method”、これはDr. McCormickの授業で教えていただいた治療計画を考える際に使用する方法です。その四項目として、Medical indications for intervention、Preference of the patients、QOL、Contexual issuesから構成されておりどの項目もすべて患者因子を含みます。例えば、何を信仰しており、どのよう生活をおくっているか、移民者なのか、保険に入っているかという患者背景からその患者がどのような治療を望んでいて、治療後にどこまで復帰を目指しているかという事です。それらをそれぞれの項目別に分けていき治療計画を組み立てる指標にするというものです。この方法使う際には、患者とその都度話し合うことが重要であるとおっしゃっておりました。実際、小児科病院で症例を紹介していただいた際に悪性腫瘍の小児の子供を治療する際に、”the 4 box method”を用いて治療計画を立てていました。これは、アメリカでは基本的な考え方で、全ての患者に適応しており、そこには尊厳死も含まれておりました。

02.jpg次に尊厳死についての講義を受けここでもculture shock を受けました。この授業で特に日本とアメリカの間にすごい差を感じるものがありました。アメリカでは、患者の希望があれば死ぬと分かっていても治療を中止してもよく、特にワシントン州の法律では、余命6ヶ月以内の患者で、かつ、患者の希望があれば、死を早めるような薬の処方を行ってよいというものでした。日本では、いずれの場合も殺人に相当するという考え方、法律でありえないものという感想を抱きました。私の働く病院は、終末期医療も行っているため個人的にはこの考え方が本人の希望であり、家族の同意を得るものであれば一理あるのだろうと思いました。ただ、医療というものは、患者を生かすために最善を尽くすものであるという考え方からするとこの法律に倫理的な矛盾を感じたことも事実でした。この州法には、各地から死を望む患者がやってきても制限が存在し、税をおさめてかつ住民である事が必須条件です。しかも、アメリカでこの州立が一般的ではなく西海岸の地域が許容しているだけあり、それ以外の東部や地方では、未だ議論の渦中にあります。

日本の医療と違いを感じた職業がありました。それが“Chaplain”と呼ばれる職業です。この方々は、実際患者の疾患について何か特別な治療行為を行うわけではなく、患者自身の背景、考え方、何を信仰しているのか、家族との関係等について常に患者と話をし、精神面的なサポートを行い、時には、患者家族のケアにも入ります。日本の医療現場では、医師が主にこの役割を担うことになっていますが、私が見る限りは、やはり一人一人にかけられる時間は少ないように感じます。実際、このchaplainがどこまで医療の現場に関わっているのかというと、超急性期から終末期医療まで多岐にわたり時には、災害時も駆けつけるとおっしゃっていました。少し面白いと思った事は、救急車で運ばれてきた患者は、時に意識のない方も含まれ、本人が有事の際にどのような治療を受けるかを考えるときに、chaplainが患者の家族の精神的なケアを行いつつ普段から患者本人が自分の人生について述べていた事や家族の意向をまとめて担当医に報告するという仕組みです。日本では、どのようなことがあっても説明、話し合いは全て医師がもって接することで、患者自身が家族に何かを伝えても、形として残っていなければ効力を持たない場合が多いからです。一つ質問を投げかけたのですが、もし患者がchaplainの人数を大きく上回っていても、ケアを受けられない患者が出ないように常日頃から話し合いマニュアルを作っていると答えてくださりました。

最後になりますが、このような機会を与えてくださった山西先生をはじめ、古山先生、蒲生先生、素晴らしい授業を準備して下さったMcCormick先生をはじめとする先生方、枚方療育園の皆々様、そして学内から厚いサポートをして下さった古瀬先生、鳥井さん、シアトルで素晴らしいガイドをして下さったヨシコさん、通訳Turidさん、一緒に研修をうけたみなさん、その他この研修にご協力いただいたすべての方に対して感謝の意を心から表したいと思います。今回このプログラムを通して多くの事を学び、生命倫理学というテーマで、あらゆる分野のプロフェッショナルの先生方、また、実際に現場で働くドクター、ならびにchaplain、ホスピスハウスの方々が大変貴重な時間を割いてくださり四日間というとても短い時間をとても濃厚な瞬間として過ごすことができました。私は自分が一人の医師になった時に関わる患者たちをよく話し合い理解し、よりよい医療を行っていきたいと思っております。

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