広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学研修に参加して

● 永田 詩歩さん(第5学年次)

01.jpgこの研修では、アメリカの生命倫理の誕生から現在の医療における役割、またアメリカの保険制度の変化に至るまで様々な分野について学べ、本当に内容の濃い一週間となりました。
ここからは、多くの講義の中で特に印象に残ったものについて書きたいと思います。

まずは、日本では認められていない安楽死についての講義について書きたいと思います。アメリカには尊厳死法という法律があり、これはオレゴン州から始まり私たちが行ったワシントン州にも存在する法律です。これは、患者が死にたいと思えば医師に頼んで薬を処方してもらいその薬を飲んで死ぬことができるというものです。この研修に参加する前からアメリカに安楽死が存在することは知っていましたが、実際に尊厳死法が存在するアメリカの医師のお話を聞くことができたのは、私にとって新鮮ですごく刺激的な経験でした。日本では、医師は患者の延命、疼痛緩和を行うことはありますが、自らの知識を患者の命短縮に使うことはないので、尊厳死法という法律が存在することにもすごく違和感を持っていました。しかし、この講義で尊厳死法に賛成の意見を聞いたときにJames Green先生もおっしゃっていましたが、実にアメリカ的な考えの基にこの法律が存在することを知りました。そして、この考えがアメリカと日本の違いを生んでいるのかと納得がいきました。アメリカでは、個人の意見というものが尊重される傾向にあり、この法律でも患者は自主性を持って、他の誰にも相談することなく自分の命についての決定をできるという考えから始まったものだそうです。ただし、自主性が重んじられているアメリカでも、尊厳死を行った医師のほとんどがもう一度したいとは思わないという意見を持っていることも知り、このような法律が存在することで、患者の選択は広がりますが、医師が患者の命を救う以上に患者の命に向き合う時間が増え、負担は大きくなったのだなと思いました。この講義で日本にはない尊厳死法について学べたことで、日本にいては学ぶことができなかった安楽死の内側を知ることができ、この研修に参加できて本当に良かったと思いました。

次に、印象に残っているのはDr. Malia Fullertonの講義です。この講義では、アメリカでの遺伝子技術の発展とその医療における応用を教えていただきました。私は、臨床実習の臨床遺伝部で実習をしてから、アメリカでの遺伝子技術の活用法にすごく興味があり、この講義を楽しみにしていました。この講義で最も驚き日本と違うなと思った点は、アメリカでは出生前診断を日本に比べ多くの妊婦が受け、新生児スクリーニング検査の項目が多いということです。日本では遺伝子検査はまだまだ一般的でなく一部の疾患のキャリアーと思われる人々しか遺伝子検査は受けませんし、疾患を持った人々を排除するような考えにつながるとして、反対する意見も多いです。しかし、講義を聞いていてそのような話は一切出てきませんでしたし、アメリカでは遺伝子検査を受けることは普通のことで、その結果を受けて個人がどのように判断するのかに重きが置かれているように思いました。ここにも、先ほどのJames Green先生の講義でも注目された、アメリカ的考えというものが影響しているのだろうと思い、日本との違いに再度気付かされました。この講義では、アメリカの遺伝子技術の応用の幅広さや、そこに人の倫理観がまだまだ付いていっていない現状を教えていただけたことで、現在の日本の医療でもどんどん応用が進んでいる遺伝子領域への知識が深まり大変勉強になりました。

02.jpg最後に、この研修を作ってくださったDr. McCormickの生命倫理の4-boxや日本にはまだまだ少ないチャップレンについて書きます。この研修の全ての講義に共通して登場してきた4-boxの考えは日本では聞いたことがなく、その内容を最初に聞いたときは具体的にどのように使っていくのかイメージを掴むのに苦労しました。しかし、様々な講義で実際の症例をそこに当てはめていくと、どんな症例にも応用でき、将来倫理的判断を求められたときに大変役に立つ考えで驚きました。日本でももっとこの考えが進んでいくと医師が倫理的判断で悩むかことが少なくなると思いました。また、今回の研修でアメリカのチャプレンの方々に沢山会うことができました。様々な文化、宗教に対応している制度に感動し、日本ではこのチャプレンの代わりを医療従事者や家族が担っているのだろうと考え、日本にもこの制度があるだけでどれだけ多くの人々が救われるのだろうと思いました。チャプレンの方々が常におっしゃっていた「患者さん各々の考え宗教を尊重し、それに合わせたケアを行っていくべきである。」という言葉が印象的で、この考えは多くの人種、宗教が存在するアメリカだからこそ進んできた考えなのかなと思いました。

この研修に参加できたことで、私は将来医師として働いていく中で生まれてくる多くの悩みに対する答えやそのヒントを多く得ることができたと思います。そして、この経験を今後も胸に刻み、生かし続けたいと思います。

最後になりましたが、このプログラムを作ってくださった山西先生、団長として私たちを率いてくださった古山先生、素晴らしい講義を用意してくださったMcCormic先生やKing先生をはじめとする多くの先生方、研修中の発言に自信のなかった私を勇気づけてくださった古瀬先生、枚方療育園の方々、通訳の方、ガイドをしてくださったYoshikoさん、行くまでの準備をしてくださった鳥井さん、そして、このプログラムに関わってくださった多くの方々に感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

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