広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学での研修を終えて

● 安倍 瑞穂さん(第5学年次)

01.jpgこの度、8月8日から15日までの8日間シアトル・ワシントン大学にて生命倫理プログラムに参加させて頂きました。今、この1週間を振り返ると生命倫理だけでなくアメリカの文化を知ることができた非常に濃く充実した毎日でした。私がこのプログラムを応募した動機は2つあります。1つは、純粋に海外の医学生はどのような環境で学んでいるか知りたかったからです。多くの先生方が「出来れば1度留学してごらん」と仰るのを聞き、その言葉の意味を実感してみたいと思いました。そして、日本とは異なる文化や思想を肌で感じ、自分の視野を広げたかったからです。2つ目は、生命倫理について自分でじっくり考えたいという思いです。以前は生命倫理は正解がないのだから考えても…と、後回しにしていました。しかし、実習が始まりたくさんの患者さんと出会い、患者さんの望みは様々であることを知り、倫理問題は結果を探すのではなく考える過程が大切であることに気付きました。ならば、生命倫理の発祥の地シアトルに行き、そのプロ達に教わるしかない!と思い、応募しました。先生方の講義はどれも初めて耳にするものばかりで印象的でしたが、特に興味深かったものをいくつか紹介させて頂きます。

まず、McCormick先生の“4 box method”です。4 box methodとは、(1)医学的適用 (2)患者の意向 (3)QOL (4)周囲の状況 とこの4つの項目を用いることで医師は患者さんの希望を知り、ケアすることができます。ただ、漠然と倫理について考えるのではなく、医学的情報を取り込みながら、出来るだけ患者さんの望みに沿ったケアが出来るので非常に論理的で分かりやすい方法だと思いました。日本では、まだあまり知られていませんが、アメリカでは多くの先生方がこの4 box methodについて仰っていました。中でも、小児科の先生が実際に自身の症例でこの方法を用いることで医師だけでなく患者さんも自身の望みを整理でき見直すことができ、それを医師と共有することができたというのを聞き、将来私もこの方法を用いりたいと思いました。

次に“Chaplain”という職種です。Chaplainとは、終末期の患者さんの話を聞き、価値観や宗教的な悩みを理解し、スピリチュアルケアを行う役職です。死への恐怖、目標や希望の喪失、家族との関係に悩む患者さんがいかに安らぎを感じ、残りの時間を快適に過ごすには何がしたいかを聞き出し、それを実行するお手伝いをするのがChaplainの目標です。日本の緩和ケアは痛みを取り除くことに重点を置いています。勿論、それも重要です。しかし、ポリクリをしてる中、患者さんは緩和ケアと聞くと根治術はなく死が待つのみと考え非常に落ち込む場合が多いと聞いたのを思い出し、日本にもChaplainのような制度があればよいのにと思いました。また、Providence Hospice of Seattleという施設を見学させて頂いたとき、Chaplainだけでなく“grief support”という役職にも出会いました。grief supportとは患者さんが亡くなったあと、残された家族にカウンセリングを行うことです。残された家族にとって、家族の1員を失うことへのつらさ、特に初めの1年は誕生日やたくさんの記念日を思い出し非常に心が傷むため、面会やキャンプをすることで心を癒してあげます。今まで、患者さんを診ることだけに焦点を当てていたので、家族のケアまで行うことを知り大変驚きました。また、1人の人間の死に対し何人もの人が関わって、サポートをしているのを知り、さすが生命倫理の発祥地と言われるだけあるなと実感しました。そして、もしこの様なシステムが導入されたとき、自分はしっかりと自分の意思を伝えられるか疑問に思いました。日本では、出る杭は打たれるという諺もあり、協調性が重視されるがため自分の意見を発する機会が少ないです。よって、普段から自分自身の人生について考えておかなければいざというときに発言できないと思い、自分の人生をどのように生きたいか非常に考えさせられました。

そして、最後は講義とは異なるかもしれませんがワシントン大学についてです。私が通う兵庫医科大学は単科大学ということもあり毎日出会う人々も限られてきます。一方、ワシントン大学は総合大学であるため、どのくらいの規模なのか非常に興味深かったのですが、見学して驚きました。想像以上に広く、歴史を感じる建物が並び、芝生や噴水など普段の生活では見られないものばかりでした。ワシントン大学の教務部長であるSuzanne Allen先生からワシントン大学の概要についての講義があり、ワシントン大学では5つの州から約4万5000人近くの生徒があつまり、医学科には245名の生徒が在籍していることを知りました。様々な宗教や育った環境が異なるため生徒同士で問題も多いのか非常に気になり、質問しました。すると、Allen先生は学生は将来医師となったとき、たくさんの患者さんと出会うため、今、生徒同士で相手の意見を聞き、尊重しあいことで社会に出る練習をしているとお仰いました。それを聞き、学校という小さなコミュニティの中で悩むこともたくさんありますがそれは将来必ず役に立ち、無駄なことではないことが分かり非常に勇気づけられました。

02.jpgそのほか、Seattle Cancer Care AllianceやNW Kidney Center、Harborview、Children‘s Hospialなどたくさんの施設を見学しました。どれも、明るく開放的で、壁一面の絵画や、瞑想をする部屋があったり、機材も充実していたりと、時間が許すのであれば、もっと見学したいと思う魅力的なものばかりでした。今、こうして報告書を書きながら、今回の研修は忘れられない素晴らしい体験になったと改めて思いました。生命倫理について知るだけでなく、疑問があれば挙手し発言するアメリカ式の授業を受けることはなかなかできないと思います。普段、引っ込み思案な私にとって、大きな挑戦でしたが自分の殻を破くことができたと実感します。また、スターバックス1号店やスペースニードルやクルーザーで夕日を見るなど、観光もたくさんし海外の魅了を感じると同時に日本の良さを知ることもできました。これからは、視野を広くし柔軟な考え方を持ちながら、日々に取り込み、理想とする医師に近づきたいと思います。

最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださった山西先生、引率して下さった古山先生、山下さん、福田さん、ガイドのYoshikoさん、不安でいっぱいだった私を支えて下さった古瀬先生、私たちを迎えどんな質問にも丁寧に答えてくださったMcCormick先生をはじめとするたくさんの先生方、通訳の方、たくさんの方に心より感謝申し上げます。そして、一緒に参加した大学の皆さん、ありがとうございました。

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