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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

シアトルでの研修を終えて

● 世一 友子さん (第5学年次)

kanemoto01.jpgワシントン大学の授業内容は、生命倫理、遺伝子診断、尊厳死、臓器移植、延命医療、終末期医療、ホスピス、小児科、ICU、チャプラン制度でした。私たち日本の学生のためにそれぞれの専門分野の先生方に分かりやすく説明していただきました。多岐にわたる授業の中で特に印象に残った内容について述べさせていただきます。

Ethical Issues in Pediatricsの授業で私は日本とアメリカの制度の違いに驚きました。それは、日本では予防接種は義務化されているものがある一方(定期接種のこと)、アメリカは義務化されていないという点です。どうして義務化されていないかというと、予防接種の副反応に強く危惧を感じ拒絶するグループと、予防接種を喜んで受けたいと考えるグループが存在するからだそうです。私は、予防接種は当然受けるべきものと思っていたので、拒絶するグループが存在することに驚きました。確かに、副作用で病気になってしまった事例もあります。しかし医師は目の前の患者の利益と共に、社会的利益を守ることを求められています。予防接種を受けなかった一人の患者による大きな感染の拡がりを生じる可能性があるため、それを防止する義務も負っていると考えます。親が子供に予防接種を受けさせないという場合、どうしてそのように考えるか尋ね、ワクチンを打たないとどういう結果になるかというリスクを説明する必要があると思います。また不活化ワクチンは生ワクチンに比べ安全性は高く、たとえ生ワクチンでもワクチンの接種量は微量で副作用がでる確率は低いです。もし副反応が生じた場合は日本では救援措置制度があります。但し、救援措置制度があるからといって、予防接種を拒絶するという考えをもつ親にとって、意味をなさず、怒りの対象となってしまうこともあるのも事実です。そこで医師は親の考え方を聞き、良好なコミュニケーションをとり、良好な関係を築き、患者や親の意思を尊重しながら、子供にとって一番良い方法をとることが大切だと思います。

suzuki02.jpgSpiritual Support for Cancer Patientsも印象に残った授業の一つです。癌のような重い病気の患者は、喪失感、痛み、苦痛、憤り、孤立感を感じることが多く、チャプランという職業によるスピリチュアルサポートによって、患者の心はやすらぎ、癌の進行をゆっくりさせることが証明されているそうです。アメリカは人種のるつぼといわれるほど、多民族国家で様々な文化背景を持つ人があつまります。その中には、キリスト教、イスラム教など信仰を持つ人、信仰を持たない人、宗教について意識のない人がいます。チャプランは宗教にとらわれず、患者に寄り添いながら、これからどう過ごしたいか、もう一度自宅に戻りたいか、どこにコミュニティをおいて過ごしたか、そしてどこで亡くなりたいかを意思を尊重しながら患者の決定のお手伝いをします。癌と告知された患者のほとんどはこれからの人生設計を決めていないことが多いでしょう。患者の中にはその悲しみや苦しみを打ち明けられず。抱え込んでしまう場合もあるでしょう。チャプランは患者に、世界中は思いやりにあふれていて、あなたを愛していることを伝え患者ととともに生きる意味を探求し、患者を支えます。チャプランの話を聞いたとき、本当にすばらしい職業だなと思い、感動しました。私が医師になったときに、その考え方を活かしていきたいと思いました。

シアトルの研修を終えて、アメリカと日本とでは医療制度の違いはあるものの、同じ医療人としての患者の意思を尊重する、あるべき医師の姿勢は同じだと思いました。また、常に医療は変わり進んでいく中で、限界を作ってしまわないで、視野を広げ柔軟に対応していことのできる医師にならなければならないと思いました。

この研修は私の人生の中で忘れることのできない素晴らしいものとなりました。そして私の将来に良い意味で大変大きな影響となることでしょう。この研修のために携わっていただいた皆さんには大変感謝しています。ご同行していただいた方々やワシントン大学の先生方の惜しみないサポートのおかげで実りある研修ができましたことに、感謝の念が絶えません。ありがとうございました。

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