広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

シアトル・ワシントン大学研修に参加して

● 鈴木 智大さん (第5学年次)

kanemoto01.jpg今回のワシントン大学生命倫理プログラムで、講義、見学を通して生命倫理だけではなく、医療システム・法律・教育など日本と違う部分をたくさんのものを学ばせて頂きましたが、生命倫理分野で心に残っている三つについて書かせて頂こうと思います。

1) Clinical Decision Making:17歳の患者さんのcase studyについて講義がありました。患者さんは未成年だけれども宗教上の理由で輸血を拒否しているというものでした。この講義で気になった事が、医師と患者の関係性についてです。法律的に成人になっていない患者が手術中輸血を拒否した場合に、特別に手術日だけ成人として認めるという対応ができたということに驚きました。詳しい事は分かりませんが、日本でエホバの証人の患者さんが病院に来た時、医師(病院側)がそのような患者の手術をしたくない、リスクをおかしてまでそのような患者の治療をできない状況になる事が多いのではないかと思います。ここでの医師の対応として、まず患者のニーズを把握して、患者に十分な判断能力があると判断できるほどの関係性を築いた上で、問題となる部分を明確にし、解決法を考えて行くことが必要だと思われます。十分に判断能力のある患者であれば、手術中に輸血が必要な状況になって輸血できないということが、どのような結果になるのか理解して納得しているはずです。なので、ここで問題になるのは法律的に未成年で、見かけ上判断能力がない患者に対し、輸血なしの手術を行って問題が起きた時に病院もしくは医師が責任を問われるのではないかというところだと思います。そのための解決法として、例外的に未成年であっても判断能力があるということを法的に明らかにしなければならないと思います。そのためには、医師と患者が良好な関係性、協力して問題解決を行うという関係性を築くという事が不可欠なのではないかと思いました。法律は本来、ある一定の年齢以上になるといきなり判断能力が備わるから年齢を定めた訳ではなく、問題を考える基準として考える材料になりやすいから年齢の規定を決めたわけであり、それによって不利益を被ることは本来の法律のあるべき姿ではないのだと思います。法律にしばられるのではなくて、法律が問題解決に対して的確ではないのであれば、自分たちが生きて行きやすいように変えて行く・そのような関係性を患者と築いていくということが本当の問題解決なのではないかと思いました。

 2) Chaplain: このような職種があることについて初めて知ったのですが患者さんの疾患ではなくてbackgroundを見るために話を聞くというところが印象的でした。日本でこのような職業があることについて聞いたことはありませんでしたが、自分が医学生として勉強をしていて患者の背景をしっかり聞くことが大切だということはよく耳にします。しかし、実習で医師を見ていてもそこまでしっかり時間をかけて患者さんから話を聞くというのはなかなか難しいのかなという感じがしていました。時間的な問題もそうですが、いったいどのようなことを聞いたら患者さんがどのように感じるのか、どういう話をしたらどう癒されるのかということが難しいのではないかと思いました。実際どういう風に仕事をしているのかということは詳しく聞けなかったのですが、ノートを持たずに本当に同じ目線で話を聞くということでした。患者さん個別に感じることも違うと思うので、経験が大切になってくるのかなと思いますが、chaplainになるまでにいったいどういう風な勉強をしてくるのだろうということを聞いてみたいと思いました。
また、シアトルには多くの宗教を持つ人が住んでいることがあるとおっしゃっていましたが、そのような所から患者さんを理解しなければトラブルになることが多く、病気だけではなくて患者さんのことをちゃんと知り、backgroundをしっかり考えることが重要視されてきたのだと思いました。しかし、日本でも癌の患者さんは多くニーズは大きいと思います。医師がそのような意識と知識をもつということももちろん大切だと思います。医師不足によって不可能があるのであれば、これはchaplainだけではなく、看護師・薬剤師など他の職業でも同じだと思いますが、他の職業との役割分担の範囲を変えるということが大切だと思います。その中で、コミュニケーションを患者だけでなく医療従事者みんなが家族と十分にとることが大切なのだろうなと思います。

suzuki02.jpg3) Palliative care and Critical care: 救急車で運ばれてきた患者さんの家族の気持ちを想像してみると、何が起こっているのか分からない、これからどうなるのか分からない(いつ治るのだろうか、本当に治るのだろうか)、なんでこうなってしまったのだろうか、など色々な思いが巡るのではないかと思います。そこでの医療者のコミュニケーションというのが、clinical skills と同様に大切になるということが今回初めて想像することができました。緊急で患者の治療をする場合、このようなnontechnicalなスキルが大切なのだろうと感じましたし、そういう部分にevidenceを作って行くという所が刺激的でした。超緊急の場面で、医師が救命措置をする事に関して何の治療をするのか決めて行く部分に関しては患者がdecision makingに関わることはできないためこのような問題は起こりにくいと思います。しかし、比較的安定した時に患者・家族がどのくらいdecision makingに関わりたいのかということに大きな差があるという事が興味深かったです。医師は、decision makingをする前に、まず患者のニーズ(この場合は患者の家族のニーズ)をつかむ事が大切なのだと感じました。患者のニーズをつかむという事は、本当に大切で、何のために医療行為を行うのか、医師の仕事はなんなのかという部分で、私は医療面から患者が幸せになる事をお手伝いするのが仕事だと思うので、医療行為を行う事自体が仕事だと勘違いしてはならないのではないかなと思います。この講義で、palliative specialist というのがどういうものを指すのかということが疑問に思いましたが、このような職業が日本にあるにせよないにせよ、こういう意識を持つということが大切だと思います。

他にもたくさんの事を学ばせて頂きました。患者さんに対する医療を考える上で大切になる医学以外の分野の事の大切さについて考えさせられました。今回このような素晴らしい経験をさせて頂いた、ワシントン大学のマコーミック先生、講師の先生方、枚方療育園の山西先生、古山先生、山下さん、石上さん、杏林大学の蒲生先生、兵庫医科大学の古瀬先生、通訳をしてくださったMs. Izumi Stewart、一緒に勉強した兵庫医科大学・枚方療育園の学生みなさんに心から感謝しています。ありがとうございました。

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