広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学留学を終えて

● 夏秋 愛さん (第6学年次)

kanemoto01.jpg 今回、私は2014年5月9日~6月6日までの約1ヶ月間にわたって、シアトルのワシントン大学に留学し、Seattle Children’s Hospitalにて臨床実習をさせていただきました。兵庫医科大学からワシントン大学へは、Bioethics (生命倫理学)の短期プログラムとして第5学年次の学生10名が毎年8月の1週間を利用して留学しており、私も去年そのプログラムに参加していました。そして去年の夏季短期プログラムの際、第6学年次の学生を臨床実習生として派遣し、またワシントン大学の第4学年次の学生(アメリカの医学部は4年生であり、第4学年次は最高学年)をわが兵庫医科大学に実習生として受け入れるという交換留学プログラムが先生方のご尽力のおかげで制定され、今回私はその第一号としてこのプログラムに参加することになりました。私は将来小児科医になることを考えていましたので、実習科は小児科を第一希望で提出したところ受け入れ可能となり、アメリカの中でも有名な  Seattle Children’s Hospitalで実習をすることとなりました。果たして私の英語力で海外実習できるのか、どれほど成長して帰ってくることができるのか、何もかもが初めてで不安と期待が混ざり合った複雑な気持ちでシアトルに向けて出発しました。

 Seattle Children’s Hospitalはワシントン大学病院の中でも小児科に特化した病院で、60以上の小児専門の科が存在します。病床数は200床以上でほとんどが個室となっており、病室の中や廊下、エレベーターの中にはかわいらしいデザインの絵が描かれていたり、また小さな子供の患者さんが多いので、その家族が泊り込めるように予備ベッドが置いてあったりと、こども病院ならではの工夫がたくさん見られました。実習初日の午前中は、同じく実習初日のワシントン大学3年生10人とともに主に施設内の案内と予定説明、実習科の説明などがありました。ワシントン大学の学生は院内実習を3週間行い、残りの3週間は院外という合計6週間の小児科実習ですが、私は4週間院内の実習プログラムで、私は、前半2週間はTeam 6 (形成外科とリウマチ科)、後半2週間はTeam 4 (呼吸器内科と脳神経内科)に配属になりました。チームは4~5人のレジデントのみで構成されており、学生はチームリーダーを務める2年目のレジデントにつく形で、実習はすべてチーム単位で動きます。午前中はTeam Roundというチームごとの回診があり、その後昼食をとりながらのnoon conferenceに参加し、午後は学生向けの講義やチームごとに上級医からのlectureがあり、帰宅までの時間は指導医のレジデントに患者さんの病態について質問して疑問はその日のうちに解決して家に帰るというのが実習1日の流れです。

suzuki02.jpg 前半2週間に私が配属になったTeam 6は形成外科とリウマチ科の混合チームでしたが、特に形成外科分野では口唇口蓋裂や、口唇口蓋裂に他の奇形が加わった疾患(Golden-har症候群、CHARGE症候群など)などの珍しい症例をたくさん診ることができました。後半2週間は呼吸器内科と神経内科の混合チームのTeam 4で実習し、主に呼吸器分野で、cystic fibrosis (嚢胞性線維症)のこどもたちをたくさん診ました。この疾患は常染色体劣性遺伝の疾患で、日本人では1年間の受療率が150万人に一人と極めて稀ですが、白人ではこの遺伝子の保因者が多く2500人に一人が発病する疾患です。この疾患のメインの病態はclチャネルの異常です。消化管や気道の粘膜で水の分泌が困難になり、粘液の粘調度が増すことで、呼吸器感染を繰り返しそれによる呼吸不全が主な死因です。また、膵酵素分泌不全による消化吸収障害をきたし子供たちはうまく成長することができません。平均寿命は18歳と短く、確率した治療法はまだないため、現在アメリカでは治療薬の開発を急いでいる状況です。Children’s Hospitalの呼吸器内科に入院するこどもたちの多くがcystic fibrosisに罹患しており、私も回診の際に一緒に診察させていただきました。日本で見る機会はほとんどないこの疾患を目の当たりにしたことは、とても貴重な体験でした。そして、自分も小児科医になったら、病に苦しむ子供たちに寄り添える心の強い医師になりたいという思いがさらに大きくなりました。

 実習をしていく中で驚いたのは、アメリカの医学生の臨床実習のあり方です。彼らは3週間の中で患者さんを3~4人担当し、朝早くから患者さんのところを訪れ、日々の問診と診察を担当し、その詳細をカルテに書き、そして回診の時にチームに対してその情報を的確に伝えていました。彼らはそれを求められなくとも自らやっていました。振り返ってみれば、私は日本の臨床実習では与えられた事をこなしていたことの方が多く、彼らの自律性をもっと見習うべきであると感じました。次に驚いたのは、Team Roundに参加するのが医者だけではないということです。看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーがRoundに一緒に参加し1人あたり15分ほど時間をかけて活発に意見交換を行っていました。また、Team Roundには必ず患者かもしくはその保護者が参加しており、これぞまさに理想のチーム医療を目の当たりにすることができました。

 チームでの実習以外でも様々な経験をしました。Student Lectureで講義に来られた先生方にお願いして、彼らの小児専門外来(糖尿病外来、リウマチ外来、消化器内科外来)につかせて頂いたり、消化管の内視鏡検査や肝生検、移植腎に対する腎生検をみせていただいたり、Children’s HospitalのChaplainのshadowingをしたりと1ヶ月という限られた時間の中で多くのことを学び、吸収することができました。また、3週目には、実習担当責任者であるDr. Bennettのもと、学生各々が自由にテーマを決め10分程度のプレゼンをお互いに講義するかたちで発表するというStudent Presentationにも参加しました。私はテーマを食物アレルギーに決め、中でも食物依存性運動誘発アナフィラキシーに関してのプレゼンを行いました。うまく伝えられるか不安もありましたが、プレゼンも発表後の学生からの質問への受け答えなども思っていた以上にスムーズに行うことができ、自分の成長を実感することができました。

 今回の留学では、Children’s Hospitalでの実習の他にもうひとつ参加したプログラムがありました。それは去年の夏に伺ったワシントン大学のBioethicsの教室が開講している”Spirituality in Health Care”です。この講座はワシントン大学で毎週月曜の夕方から90分程度の講座で、受講していたのはワシントン大学の医学生、看護学生、薬学生やソーシャルワーカーやChaplain修練生などで、医療の現場におけるSpiritual Careについて学ぶコースです。この講座を仕切っていたのが、Seattle Cancer Care AllianceでChaplainを務めるDr. Kingで、私は去年のワシントン大学での短期夏期プログラムで彼の講義を受けていました。そして彼は私に、今回の講座の中で私の思う日本のSpiritual Careについてプレゼンをする機会を与えてくださいました。テーマとしては非常に難しく、どう伝えたら良いのかプレゼン作りの段階からかなり苦戦しましたが、日本人の”絆”という概念に着目し、医療の現場におけるSpiritual Careで最も重要なのは医師と患者との”絆”であるという内容でプレゼンを行いました。受講していたメンバーからの反響も良く何とか自分の役目を果たすことができました。

 留学中の1ヶ月間、私の生活をそばで支えてくださったのがホストファミリーです。ホストマザーのEllenさんは医師で、ワシントン大学医学部教務担当副学部長を務めておられ、ホストファザーのJeffさんは小児科医でChildren’s Hospitalで小児消化器のスペシャリストとして活躍しておられます。このお二人のお蔭で私は何不自由なく生活できた上に、2週目と3週目の週末には国立公園へ旅行にも連れて行ってくださいました。アメリカの大自然は想像をはるかに超える壮大なもので、大地のエネルギーを肌で感じる事ができました。また、その他にもワシントン大学の友人と買い物にでかけたり食事に行ったり、去年お世話になった方々に再会したりと、1ヶ月間を本当に有意義に過ごすことができました。最終日には、夏のワシントン大学短期留学でお世話になったDr. McCormickに再会し、1ヶ月の成果報告をすることもできました。

 このワシントン大学留学で学びえた事、経験したこと、そこで得た人との繋がり全ては私が医師になるうえで、また私の人生の大きな財産となりました。このような素晴らしい留学プログラムの制定にご尽力くださった山西先生、古山先生、Dr. McCormick、私を推薦してくださり準備の段階から一緒に歩んでくださった古瀬先生、ホストファミリーのEllen CosgroveさんとJeff Fahlさん、Children’s Hospital のDr. Bennettやレジデントの先生方、そして日本で支えてくださった国際交流センターの皆さん、友人たちそして家族に心から感謝いたします。本当にありがとうございました。

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