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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

汕頭大学医学院での研修を終えて

● 岡野 裕紀さん (第2学年次)

saita01.jpg 私は、以前から海外の医療に興味がありました。特に、中国の医療、文化などに実際に触れ、その違いを知ることで改めて日本を見つめ直そうと思い留学させていただきました。   2015年1月10日(土)から17日(土)まで、中国広東省の汕頭大学医学院の研修で多くのことを学びました。一部ですが、ご報告いたします。

研修の日程は以下の通りです。
1日目(10日) 中国到着、ウェルカムディナー
2日目(11日) 汕頭大学医学院(SUMC)と李嘉誠基金会の事業の紹介、臨床技能センターと汕頭大学の見学
3日目(12日) ホスピス医とともに訪問診療、学生ボランティアとの交流
4日目(13日) 潮州観光、郊外の病院の眼科見学、道韵楼観光
5日目(14日) 口唇口蓋裂治療センター、皮膚科、感染症科、眼科センター、精神病センター見学
6日目(15日) 農村貧困地域への医療援助
7日目(16日) 第一附属病院の紹介と産婦人科の見学、自由行動
8日目(17日) 日本へ帰国

kanemoto02.jpg 1日目、関西国際空港から上海経由で汕頭市へ向かいました。上海では300km/hを超えるリニアモーターカーである上海トランスラピッドに乗りました。その車窓から見える都市部の景色と郊外の景色のギャップに驚きました。ウェルカムディナーでは、これからお世話になる先生方みなさんとご挨拶することができました。どの先生方もうれしそうに歓迎してくださり安心するとともに、さらに気が引き締まる思いでした。初めて食べる本場の中華料理は、東北料理でした。日本ではあまり見慣れない料理でしたが、日本人の舌にもあい、とてもおいしかったです。少し遅い時間でしたが、宿舎までの大通りは交通量が多く、特にバイクに危険を感じました。信号無視や逆走するバイクが多かったです。宿舎は、汕頭大学医学院構内にある教職員向けの寮でした。私たちのためにアメニティーグッズなども用意していただき、さらに、予め各部屋に新しくエアコンも取り付けていただいておりとても驚きました。今の時期が一番寒いそうです。しかし、日本みたいに寒くはないので、暖房機能がないクーラーのみが一般的であって、エアコンは珍しいそうです。Wi-Fiも使えました。一つ注意しなくてはならないのがお風呂のボイラーが電気温水器だった場合です。前の人が使った後、貯湯タンクにお湯が貯まるまで少し時間をおいて使用する必要があります。この日は、4人立て続けに入ったため、シャワーがほぼ水の状態で出てきて凍える思いでした

saita01.jpg 2日目、李嘉誠基金会のロウ先生から、汕頭大学医学院と李嘉誠基金会の事業の紹介を受けました。汕頭大学は世界的な資産家である李嘉誠氏が創設した大学で、李嘉誠基金会の献金で運営されています。李嘉誠氏は李嘉誠基金会を通じて他にも様々な事業に多額の献金をしていますが、特に貧しい人々への医療支援に力を入れています。口唇口蓋裂治療、ホスピス、白内障治療、健康診断などを援助しています。中国では、農村と都市との医療格差は大きく、農村では治療が受けられない人も多いのです。汕頭大学の学生はボランティア活動を教育の一環として行っています。特に、医学部の学生が多いです。汕頭大学では医学部の英語教育にも力を入れており、将来、海外で研修を積み、中国に戻って中国の医療を発展させることができる人材を育てています。また、汕頭大学の附属病院は計5つあり、第一と第二附属病院と、眼科、精神科、腫瘍のそれぞれの専門病院です。その後、程先生、陳先生と臨床技能センターを見学しました。そこでは、様々な手技が学べるシミュレーターや、本物の手術室と同じつくりの部屋があり技能の向上に力を入れています。食堂で昼食をとりましたが、食堂の料理とは思えない豪華な料理に驚きました。先生から、教職員は特別にこのような料理をオーダーすることができるシステムがあると聞き、日本との違いを知りました。その後、他の学部がある少し離れた所の汕頭大学のキャンパスに楊先生とともに向かいました。やはり、交通量が多く荒い運転をする人に気をつけねばならず、私たちの運転手の方のマイクロバスを扱う運転テクニックに感心しました。このキャンパスはきれいでとても広かったです。まさに日本で見られるような大きな総合大学のキャンパスでした。図書館はとても広くて蔵書が多く、さらにデザイン性がありオブジェや鯨の骨なども展示しており図書館とは思えない雰囲気でした。自習室には多くの学生が黙々と勉強しており圧倒的でした。また、新校舎を建設中で来年完成するそうです。設計者は鳥の巣の愛称で有名な北京国家体育場と同じと説明されました。そして、汕頭大学の学生に中国の茶道を教えてもらって体験しました。また、ひょうたんでできた中国の伝統的な笛の演奏も聴かせてもらいました。

saita01.jpg 3日目、クラクションが頻繁に鳴る朝のラッシュの中、楊先生とともに第一附属病院に向かいました。病院に来る患者が多く、とても混雑しており、車での進入に少し時間がかかりました。附属病院では汕頭市内の貧しい末期がん患者に在宅で、ホスピスの医療支援をしています。これも李嘉誠基金会の事業の一つで、薬剤なども無料で提供されます。2軒の家庭へホスピス医の訪問診療に同行しました。末期の患者本人には告知はされていませんでした。 昼食は、陶先生も合流し中華料理のお弁当をいただきました。午後から、程先生と第一附属病院の施設を見学しました。とても大きな病院で施設設備が整っていました。患者の数がとても多く混雑していました。その後、学生ボランティアと交流しました。学生が中心となってホスピスの患者の心の支援をしており、その活動の紹介を受けました。学生から感じる、少しでも苦しむ患者の役に立ちたいという熱意にとても刺激されました。夜は、陶先生とともに汕頭大学医学院構内の体育館に行き、みんなで卓球を楽しみましました。

saita01.jpg4日目、朝から雨が降っており、雨の中の潮州観光でした。お二方の陳先生とともに古府城墙、開元寺を観光しました。午後から、郊外にある病院の眼科を見学しました。同じ治療でも郊外より都市部の方が高額であると伺いました。中国では、一定額は国が負担して、それを超える分は個人負担らしく、日本と逆なのだと知り、お互い制度の違いに驚きました。ここの眼科では、貧しい人々に対し李嘉誠基金会により、白内障手術の医療支援が行われています。その後、道韵楼を観光しました。約400年の歴史がある、中国の最大の客家土楼と伺いました。防御性に優れた集合住宅で、今も人が住んでいるようでした。夕食は、中国伝統のしゃぶしゃぶでした。冷凍ではなく、新鮮な生の牛肉を店内でさばいて提供していました。

saita01.jpg5日目、第二附属病院を見学しました。楊先生から口唇口蓋裂治療についてご説明いただきました。口唇口蓋裂治療センターでは、李嘉誠基金会の支援で治療が行われていました。実際に治療箇所を見せてもらいました。生まれてすぐにサポートを受けていると、治療がうまくいくそうです。しかし、無料の支援を受けられることを知らない人や、さらに、口唇口蓋裂について親が正しい知識を持っておらず、行いが悪かったせいでなったなど非科学的な思い込みから子どもの治療が遅れることも多くあるそうです。同じフロアに、皮膚科があり重傷患者の治療をしていました。次に、劉先生に病院内を案内してもらいました。この病院は、第一附属病院と同様、施設設備が整っており大きな中庭もありましたが、こちらの方が新しい印象を受けました。病院内で驚いたことは採血所が廊下にあったことです。廊下の壁にある窓口の前に椅子があり、窓口越しに腕を差し出して採血をするようです。院内薬局は、西洋の薬局の隣に漢方の薬局があり調剤していました。感染症病棟はSARSが流行したときにできたそうです。感染症科では、劉先生の診察を見学しました。中国では、初診の患者以外は、受付を通す必要がなく、患者と医師が直接連絡を取り、予約するシステムでした。昼食は、ステーキハウスだったので中華料理以外は久しぶりでした。周りには高層ビルが建ち並び大きな道路もあり思ったより発展している印象がありました。しかし、日本に留学したことのある先生によると、街の見た目が日本に似ていても中身は日本より20~30年遅れているそうです。その後、市内を散歩し中国の盆景を見学しました。病院に戻り、眼科センターを見学しました。検査機器を実際に使い体験しました。また、白内障の手術の3D映像も見ました。次に、車で移動して精神病センターを見学しました。とても広い病棟で中庭や広場もあり、入院患者には一定の自由が与えられています。治療の一環として患者は絵画や書、切り絵、折り紙、ビーズ装飾などのアート作品を作っています。入院患者かどうかは履物で判断しており、スリッパなら患者と分かるそうです。夕食は広東料理のようでした。この日は中国では縁起がいい日のようで、ここの宴会場や近くのホテルでは何組も結婚披露宴をしていました。日本でよく見るようなウェディングドレスを着ていました。その後、寮に帰り、大学から歩いていつもより遠出してみました。街には正月の飾りを売っている店が多かったです。犬肉やスッポン、鰻を売る店もありおもしろかったです。大きな商店街にも行くことができました。少し遅い時間でしたが、多くの客で賑わっており、長い通りを歩きながらいろんな商品を見ることができました。

saita01.jpg6日目、蘇先生と汕頭大学の医学生とともに農村貧困地域へ健康診断のボランティアへ行きました。車で高速道路を通り、わずか1時間少々の所でしたが、里行村という農村に着きました。予想に反してこんなに近かったので驚きました。道路は舗装されていないところが多かったです。辺りは畑が多く、山には風力発電の風車が何十基も立っていました。公の建物を健康診断所として臨時で使っている様でした。地元の方がたくさん集まっていました。先生方は血圧を測ったり薬を処方したりします。この活動も、李嘉誠基金会の医療援助です。汕頭大学の学生も血圧測定のボランティアをしていました。地元の方は方言を使うので、汕頭出身の人しか何を言っているのかよく理解できないと聞きました。付近を歩いているとちょうど小学校のお昼休みになったようで、多くの小学生が一斉に出てきました。子どもの数は多く、活気があるように感じました。昼食の弁当を食べた後は、医療援助の白い帽子をかぶり先生とともに2軒の家庭に訪問しました。部屋の中には電球がありましたが、とても薄暗かったです。診察の時、食料支援としてお米を届けました。農村と都市との医療格差、生活水準の違いを目の当たりにしました。寮に帰ってから、少し離れたスーパーまで汕頭大学の医学生と歩いて行きました。そこで、少しお菓子やお土産を買いました。夕食は、四川料理のようでした。蘇先生とその娘さんと陳先生が合流してくださいました。前から食べてみたかった蛙を注文してもらいました。蛙の炒め物は、フグのような食感でぷりぷりとしていて、臭みもなくおいしかったです。帰りは、汕頭港の海岸沿いをみんなで散歩しながら帰りました。話しながら帰ったので案外近くに感じました。寮では明日誕生日を迎えるメンバーに、日付が変わる0:00ちょうどにサプライズパーティーをしました。

saita01.jpg7日目、朝の交通ラッシュもすっかり見慣れてしまっていることに気がつきました。第一附属病院で産婦人科と超音波検査を見学しました。超音波検査では何がどのように見えるのか、姚先生が流暢な英語で丁寧に説明してくれました。脂肪肝や心臓病などのエコーを見せてもらいました。産婦人科では、孫先生の診察を見学しました。患者が何人も次から次へと押し寄せてきました。炎症の患者が多いそうです。先生は手際よく診察を済ませます。しかし、それ以上に患者が多く、驚くことに次の患者が診察室に入ってきて診察中の患者の後ろに列をつくります。さらに、次から次に患者が入ってくるので、列が崩れて先生の机の前に横並びになることもあります。こうなると、プライバシーなんてなくなり、本人以外の周りの患者もいっしょに先生の話を聞いています。先生はこんな状況も、患者が多い今の中国では仕方がないことだとおっしゃっていました。なお、患者の数も今日は少ない方らしく、1日100人くらい来ることも多いのだそうです。昼食は、中華料理のバイキングでした。その後、自由行動では、今年兵庫医科大学に留学に来られる汕頭大学の学生さんお二方と楊先生とともに汕頭伝統の刺繍の専門店に行き、次にウォルマートに行きそれぞれお土産を買いました。寮に帰り、明日の飛行機のチェックインをメンバーにネットでやってもらいました。夕食は食堂に集まり、お世話になった先生方とみんなでいっしょに、楽しく餃子を作りました。みんなで作った餃子は一つ一つに個性が出ていました。思いが詰まった餃子の味は格別でした。今日誕生を迎えたメンバーのために、なんと先生方が大きな誕生日ケーキとカードをご用意くださっていました。みんなでお祝いしました。

saita01.jpg8日目、帰国のため早く出発しました。空港まで程先生にお見送りいただきました。掲陽潮汕空港から香港経由で関西国際空港へ帰りました。香港には高層ビルが多いことに圧倒されました。香港島の中環では急勾配の坂道を行人電動樓梯でのぼり、香港動植物公園に行き、その後レストランで昼食をとりました。

滞在中は体調を崩すこともなく無事過ごせたのでよかったです。ほぼ毎日とてもおいしい中華料理を昼と夜に、たらふくごちそうしてもらいました。どの料理も絶品で心ゆくまで堪能しました。すっかり、中華料理のとりこになってしまいました。

留学中ことあるごとに、お互い自国の医療について語り合う機会が多くありました。あらためて日本の医療について深く考えさせられました。どんな質問にも丁寧に答えてくれました。中国ではこうだが日本ではどうかとよく聞かれ、9人で意見を出し合って答えました。まるで日本の代表として答えているようで生半可なことを言わないよう慎重に発言しました。予め日本の医療、文化を詳しく知っておく必要あります。今回留学したメンバーは全員2年生でした。上級生の意見を聞けなかったのは残念なことでした。しかし、だからこそお互い気兼ねなく語り合い、しっかりと議論し、自分たちの考えをまとめることができたのでとてもよかったです。

saita01.jpgまた、日本語が使える先生方が多かったです。日本語が通じない先生方や、汕頭大学の学生とは英語で会話していました。しかし、現地の一般の方は中国語しか通じず、漢字で筆談するなど苦労があり、英語以外の外国語も習得の必要性を感じました。英語を含めよりいっそう外国語を学んで行きたいと思いました。

今回の留学でいろいろなことを見学し、体験をさせていただきました。これからの勉学に対するさらなるモチベーションの向上になりました。そして、日本と中国の医療、文化、価値観の違いなど多くのことを学び、中国の現状を実際に見ることができました。このことで、中国の印象が以前と変わり、より身近に感じられるようになりました。期待を遙かに上回る、とても貴重な経験となりました。この経験を将来に生かせるよう、日々努力していきたいと思います。

最後になりましたが、今回このような貴重な経験をさせていただきとても感謝しています。多くの方々のご協力のおかげです。この研修でお世話になった、程先生、お二方の楊先生、お二方の陳先生、劉先生、蘇先生、陶先生、孫先生、姚先生をはじめとする汕頭大学の先生、教職員のみなさま、李嘉誠基金会のロウ先生、汕頭大学の学生のみなさま、兵庫医科大学の古瀬先生、鳥井さんをはじめとする先生、教職員のみなさま、ブロードトラベルの金澤さん、ともに研修生活を過ごした兵庫医科大学のメンバーのみなさま、全ての方々に心より感謝申し上げます。

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