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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

Robert Wood Johnson Medical Schoolでの実習を終えて

● 中川 晃輔さん (第6学年次)

saita01.jpg この度、米国ニュージャージー州にあるRutgers大学Robert Wood Johnson Medical Schoolにて2014年4月7日より5月2日まで実習をさせていただきました。私はこれまでに留学やホームステイの経験は一切なく不安もありましたが、アメリカの医療、特にFamily Medicineには大変興味をもっていたので応募させていただきました。幸い参加させていただくことができ、本当に大きな経験をすることができました。

kanemoto02.jpg1週目は主に消化器内科のダス先生のラボでお世話になり、水曜日の午前にはダス先生の外来診療を見学させていただくこともできました。いくつかのGrand Round(内科、小児科、Family Medicineなど)にも参加できました。ラボのスタッフ(カルロス)に、クローン病と潰瘍性大腸炎について調べて発表し、コメントをもらったりする機会もありました。彼からは、最近研究をする人が少なくなっているが、勿論診療も大切だとはいえ研究は大切であり、目的はともに患者を治すことだというメッセージをもらいました。ラボの先生方は皆親切で、研究内容についていろいろ教えていただきました。他に、金曜日にはダス先生とPathology Conferenceに参加したりすることができました。
アメリカの外来診療は、日本とは逆で患者さんが部屋で待っていて、そこに医師が入っていくという形になります。一人一人の患者さんにかける時間も日本より長かったです。患者さんにとっては米国方式の方がよいように感じましたが、日本では一人の医師の診る患者さんの数が多いのでこのやり方は難しいだろうとは思います。

saita01.jpg 2週目はFamily Medicineのリン先生のチームに参加して、入院患者さんに対する診療を見学させていただきました。毎朝7時に病院のカフェテリアでカンファレンス(当直したレジデントからの引き継ぎ)をした後、チームで回診しました。感じたのは、それぞれの患者さんにとても時間をかけて丁寧に診ていること、非常にしっかりと患者さん(とその家族)とコミュニケーションをとっているということでした。これはFamily Medicineの特徴なのか、アメリカの医療全体の特徴なのかわかりませんが、先週水曜日の消化器内科の外来でも同じようなことを感じたので、全体に共通していえることなのかもしれません。アメリカの患者さんは、日本のように全て先生にお任せしますという感じではなくて、遠慮しないで何でもきいてくることが普通なので、医師も患者さん(とその家族)が納得のいくまで何でも答えるということになり、そういう理由でコミュニケーションがしっかりとれていると感じたのかもしれません。これは文化の違いかもしれません。また、この週は医学部3年生のクリスも同じチームで、彼からもいろいろ教えてもらいました。鎌状赤血球症の患者さんなど、日本ではまず遭遇することのないような症例にも出会いました。

saita01.jpg家庭医療のシステムについても興味があったのできいてみたところ、各科のドクターはその科のことしか診ないので(3年の内科研修をしているがその後の2〜3年の専門の研修をした後内科全般のことはもう忘れているという)、いろんな疾患を抱えた患者をトータルにみるマネージャーが必要であり、それが家庭医だということでした。入院患者のトータルなマネジメントを家庭医がして、手術など特別な場合に専門医にコンサルトをする、そしてその後はまた家庭医にまわってくるということでした。それではホスピタリストとどう違うのかと尋ねると、ホスピタリストは、家庭医の診ている患者が入院したときに病院でその患者の治療を担当するが、病院だけで働く(診療所officeでは診療しない)。また、病院で雇われていて、学生の教育はしない。一方、リン先生たち家庭医は、学校で雇われていて学生の教育をするしレジデントの教育もする、シフトで診療所officeと病院の間を行き来して、どちらでも診療するという違いがあるということでした。また、総合内科医は大人しかみないが、家庭医は子供から老人までみるという違いがあるということで、家庭医は家族をみるから遺伝病などがあった場合はその子供を早くから治療することができるということもいっておられました。さらに、アメリカの家庭医は正常分娩なら分娩もやります。分娩に立ち会う機会はありませんでしたが、生まれたばかり(当直のレジデントが分娩に立ち会った)という赤ちゃんを診させていただく機会がありました。家庭医は「ゆりかごから墓場まで」患者さんにかかわるのだなと実感しました。

saita01.jpg3週目は主にMonument Square(大学病院から徒歩で15分ほどの所にある)でのFamily Medicineの外来診療を見学させていただきました。Family Medicineの中でも、先生がたはそれぞれの得意分野をもっておられることが多く、リン先生は鍼治療など代替医療が得意であり、リン先生の外来では鍼治療がほとんどでした。その他、スポーツ医学を得意とするMorton医師のステロイド注射などを見学しました。また、この週も医学部3年生(ケイラ)に出会うことができました。ケイラが先に一人で患者さんを診察してカルテを書き、リン先生にプレゼンをしてからリン先生が患者さんを診るという流れでしたが、非常に優秀だと思いました。3週目は、他に放射線科のレジデントの仕事ぶりや、ダス先生の外来も再び見学させていただきました。この週で特に印象深かったのは、The Promise Clinicの見学でした。ここは学生がボランティアで運営している、無料で保険をもっていない人たちを診察し、薬を出したりする診療所です。診察は学生のチーム(1年〜4年各1名ずつくらい)が行い、指導する先生(ボランティアで来ている)にプレゼンし、その先生が診て、それから指示を出す流れです。検査担当の学生、薬局担当の学生もいます。学生たちは1年生のときから実際の診療に携わる機会を得ることができるし、患者さんにとっても無料で診てもらえるというメリットがあるので、保険をもっていない人も多いアメリカならではのよい試みだと思いました。僕が見学したチームには3名の女子学生がおり、そのうちの1人はスペイン語がペラペラで、スペイン語で患者と話をしていました。患者さんはほぼスペイン語しかできず、何をいっているのかさっぱりわかりませんでしたが、その学生がみんなに通訳してくれました。アメリカではこのようにスペイン語しか話せない患者さんを診ることも珍しいことではないようです。問診は懇切丁寧、身体診察も丁寧に、各学生がしっかりやっていました。上級生が先生にプレゼンし、先生が患者さんを診て診断をくだしておられました。その後、今後の治療について学生たちが患者さんに話している間に時間がきて帰ることになりましたが、アメリカの医療の一端と医学生の凄さをみることができたこの日の体験は貴重でした。

saita01.jpg4週目は、Family Medicineの朝のレクチャーや、Monument Squareでのリン先生の外来診療の見学、Surgical ICU、Medical ICUの見学もさせていただきました。リン先生の外来では、患者さんに問診をさせていただき、カルテも少し書かせていただきました。nursing home(老人ホーム)の見学もできました。火曜日にはEscobar先生に今回の留学で学んだことのプレゼンテーションもさせていただきました。

今回の実習を通して感じたことでは、アメリカの医療制度が日本の国民皆保険制度とは異なっており、患者さんそれぞれがいろんな保険を持っていて複雑なこと(保険を持っていない患者さんもいる)、アメリカの医学教育が日本と異なっていることの2点が大きかったと思います。アメリカの医学生は4年生大学を卒業した後4年間医学校で学ぶわけですが、日本の医学生より成熟していて、患者さんとのコミュニケーション能力、問診や身体診察のスキル、指導医に対するプレゼンテーション能力などは日本の医学生よりもずっと優れているように感じました。アメリカでは学生や研修医が先に患者さんを診てから指導医にプレゼンする機会が多く、このような訓練を経て鍛えられているように思いました。また、同じ学年だけでなく、異なる学年で一緒に患者さんを診て、上級生が下級生を教えるという機会があり、これは日本ではあまりみない光景ですがよい教育方法だと思いました。特に3週目にThe Promise Clinicを見学させていただいたときにこのことを感じました。

最後になりましたが、小谷先生、渡先生、古瀬先生、大辻さん、鳥井さんはじめ、今回の留学にあたり御尽力いただき大変お世話になった先生がた、関係者の皆様に心から感謝いたします。アメリカでもリン先生、エスコバール先生、ダス先生はじめ、多くの方々にお世話になりました。ホームステイ先の家族はみんな優しく接してくださり、何の問題もなく楽しい生活を送ることができました。皆さんに本当に感謝しております。とりわけ、Remyがいなければ今回の留学生活はありませんでした。Remyにまた会うときにはもっと成長した人間になっているように、これから励んでいきたいと思います。

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