広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学医学部での研修を終えて

● 茶谷 龍己さん (第5学年次)

まず初めに、このような素晴らしい機会を与えてくださった山西先生をはじめ、引率してくださった古山先生・蒲生先生御夫妻・野口先生・古瀬先生、いろいろなお世話をしてくださった枚方療育園のみなさん、現地で本当にお世話になったMcCormick先生をはじめ、ワシントン大学の先生方や施設の方々、そしてこのプログラムに関わった全ての方々に感謝を申し上げます。

 今回の研修に応募させて頂いた理由は、二つあり、まず第一に兵庫医科大学のクリクラを回っていた時に腎不全の患者に対しての透析医療の素晴らしさを知り、その透析医療が開発された病院がシアトルのNorth West Kidney Centerだと知りいつか行きたいと思っており、このプログラムでは、そこに行くことができると知り応募しました。またポリクリでペインクリニックを回った際に4番目の痛みであるSpiritualな痛みに関して日本ではうまく管理がされておらず、アメリカでは、Chaplainという聖職者がその痛みをケアしていると聞きとても興味を持ったのがもう一つの理由です。

UW研修では、主に生命倫理についての講義だけでなく、自発的なDiscussion形式のものも多くとても興味深くわくわくするものでした。またワシントン大学以外にも外来のみで癌の治療を行うFred Hutchingson Cancer Rearch Center、透析が開発されたNorth West Kidney Center、アメリカでは小児患者に対する緩和ケアを行っている小児科病棟、アメリカのホスピスなどさまざまな施設を見学させていただきました。

研修のなかでも印象に残っているのは三つあり、まず一つ目は、生命倫理の誕生と透析療法の開発との関連の話についてでした。McCormick先生に「腎臓病のひとで透析療法の適応になるのは?」と聞かれ僕は兵庫医科大学の実習で「Crが7を切ったら」と習ったのでそう答えると、その過程に生命倫理があると言われました。つまり当時透析療法が行える機材は3台しかなく救命される腎不全患者は非常に限定されており、どのように考え誰を救命するかという議論が行われこの根底に生命倫理が誕生したのだということでした。この話を聞いて私は透析療法の適応をやみくもに覚えるのではなくなぜそのように決まったのかなど過程を追求する「なぜ?」という心がとても大事だとおもいました。これからの人生においても「なぜ?」という心を持ち続ける事で生命倫理の考えを深めていきたいと思います。

二つ目としては、Chaplain制度についてです。Chaplainについては、兵庫医科大学のペインクリニックの実習で習ったので少し知っていましたが、実際にシアトルでChaplainの話を聞くことができて良かったです。Chaplainの話ではChaplainになるにはまず4年間大学に通い卒業してから3年間の修士課程を経て1年間の臨床研修を経る事でなることができるそうです。その活動としては4つの柱があり、①患者さんの心に沿い、出会ったままを受け入れる。②emotional supportを行う。③宗教、葛藤に対する話をきく。④心の中の価値観、生活の変化に対する話を聞く。です。Chaplainのおかげで患者さんは「なぜ私が病気に?」とか「今までできていたことができなくなる葛藤」など誰にも話せないような事をChaplainに話すことで心がやすまり、終末期の患者が安らかに逝くこともできるのです。日本では、Spiritualな痛みに対してのケアが十分でなくこのChaplainの4つの柱の活動を行っている医療従事者もいないので是非とも日本でもChaplain制度を広めていくべきだと考えます。そのため、私はこのChaplain制度を日本で広めていくにはどのようにしていくべきかと質問しました。すると、アメリカでもまだみんなが知っている訳ではなく患者さんも知らないことが多く医師からChaplain制度についてこのような制度があると説明し勧めていると聞きました。そして日本に広めるには今日この講義を聞いたみなさんが広めて下さいとおっしゃっていました。その言葉に感銘を受け是非とも日本に帰って兵庫医科大学のペインクリニック部にここで学んだ事を持ち帰り伝えたいと思いました。

三つ目としては、North West Kidney Centerに行けたことです。ここにはいつか来たいと思っていたのでここに来られることができてとても嬉しかったです。ここでの話で驚いたことは国民皆保険でないアメリカではなんと透析医療が無償で受けられるという事です。アメリカでは裕福な人だけが様々な治療を受けられると思っていたので、1人約8万ドルもかかる透析療法が無償で受けられるなんてとても驚きました。そこで野口先生が、なぜアメリカでは医療費崩壊が叫ばれる中透析療法だけが保険適応であり無償で受けられるのかという質問をされ、その答えは透析療法を開発したスクリブナー博士が政府に対して涙を流し訴えかけた事のおかげであると言われました。その言葉を聞き私はとても感動しました。しかしその他にも罹患率、死亡率が高い疾患もたくさんあるのになぜ透析だけがと思いました。他の罹患率、死亡率が高い疾患に対して医療費を割くべきではないかと思いましたが、そうするとこの病気は?あの病気は?とたくさん増えたりして歯止めが利かなくなるので、この透析療法に対してのみスクリブナー博士の発見に対して敬意を払って無償にしているのだと考えました。私は兵庫医科大学の腎・透析内科で腎不全の患者に対しての透析医療の素晴らしさを知りここに来たいと思っていたので、この透析療法の発見とスクリブナー博士の涙を流してまでの訴えにはとても感動しました。

また、海外での研修ということもあり今回の研修では、日本とは違う様々な人々や文化に触れることができました。Partyでの振る舞い方やSpeechの仕方など日本では経験する事の出来ない経験をさせて頂き、とても勉強になりました。また、観光面ではヨットクルーザーは初めての体験でそこからのシアトルの夕景、夜景はとてもきれいで興奮しました。

最後にこのシアトル研修で学んだ事は今後の医師としての生活に役立てていきたいと思い、生命倫理の考え方に関しては自分が患者さんとの対応で悩んだときには是非思いだして考えて役立てていきたいと思います。そして、もう一度、お世話になった先生や皆さんにお礼を述べたいと思います。本当にありがとうございます。

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