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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学医学部見学研修を終えて

● 京田 尚子さん (第5学年次)

今回のワシントン大学医学部研修にわたしが応募した理由は、日本とは異なる文化のなかでアメリカでは患者とどのように向き合っているのか興味があったからです。アメリカと日本とでは医療制度や宗教観はもちろん、それに基づく健康に対しての個々の考え方も異なると考えます。そのような背景のなかで培われたアメリカの生命倫理学に触れたことで、わたしが将来出会うであろう患者との向き合い方に対する新たなアイディアを得ることができ、視野を広げることができたと思います。

 1週間という短い間で多くの先生方に講義していただきました。そのそれぞれに感銘をうけたり、新鮮さをおぼえたり、共感したりととても興味深いものでした。

日本では国民皆保険制度が制定されており全国民が保険に強制的に入っていますが、それとは違い、アメリカでは恥ずかしながら民間保険しかないと思っていました。しかし、65歳以上の高齢者が入るMedicareと低所得者が入るMedicaidの2つの公的保険があることを初めて知りました。これまで学校やテレビのドキュメンタリー番組などで、所得が少なく保険に入れないため病気にかかっても満足のいく治療が受けられないのがアメリカの医療制度だと極端な例ばかりを目にしてきたせいか、この公的医療制度の存在や低所得者を受け入れる病院を見学した際は少し驚きました。また、日本にいればいつどんなときでも自己負担を少なくして治療を受けられますが、アメリカではそうはいかないため現在のアメリカの保険制度は患者に対して冷たいイメージを持っており同時に医療者までもそのように思いこんでいました。しかし実際は様々な問題で治療を受けられない患者に対して、医療者はとても心を痛めているという話を聞きました。アメリカと日本で社会的背景は違っていても患者の立場にたった医療をめざしているのは共通しており、だからこそ生命倫理学の重要性を知りました。さらに、アメリカの新たな医療制度であるObamacareについての講義も聞くことができました。これまでは保険に加入したい人が加入すればよかったものがこのObamacareは国民全員が入ることになります。これを取り巻く多くの課題はあるとのことですが徐々にObamacareを採用する州は増えると予想されており、大きな医療改革後の患者の健康意識や医療者の考えがどう変化していくのか興味がそそられました。

わたしは地域に根差した医療者になりたいと考えており、高齢化社会が進む現在、医師として患者の最期をどのようにむかえさせるのが最善なのか興味がありました。今回の研修では成人だけでなく小児の終末期にもテーマを当てた講義をしていただき、これまであまり考えたことのなかったお話を聞くことができました。成人患者でも小児患者でもやはりコミュニケーションをどれだけとるかが重要となってきます。成人患者でも、患者は自分の病気を理解し受け入れることが難しいのに、小児患者ならなおさら簡単なことではないと思います。Dr. Ross Haysの講義で10代の終末期をむかえる女児患者に対してどのようにアプローチしていき、そしてその段階をふんだ時の患者の状況の移り変わる様子をお話してくださいました。わたしは初めそんなに若い患者が自分の病気を知り、そして自分の終末期について考えることが可能なのか疑いました。しかし、その患者は最終的に病気と向き合い、残りの人生をよりよく生き抜いていました。それは患者自身の精神力の強さももちろんあると思いますが、彼女のまわりの医療スタッフの力でもあると感じました。実際の告知をする時の様子や具体的にどのような言葉をかけているのか知りたく思いました。またDr. Farberの講義では患者とうまくコミュニケーションをとるためにトレーニングをつむ必要があるとお話しいただきました。わたしは病棟実習で終末期をむかえる患者との会話に困り心を痛めたことがあり、その言葉に共感し具体的な言葉かけや患者の精神状態の変化をもっと知りたいと思いました。

アメリカは生命倫理に先駆けている国だということを1週間を通して実感することが多くありましたが、その一つとして日本にはないチャプラン制度が挙げられます。病院のなかの一室にそれはあります。信仰する宗教を1つ持ち合わせたチャプランはそこで患者と向き合います。その部屋は暗い雰囲気は感じられず神聖で、ゆっくりと時間が流れているように感じられました。また、いくつか病院内を見学させていただきましたが、病院の重苦しい雰囲気が感じられないというのが印象です。特にChildren’s Hospitalは可愛らしいデザインの施設でそこが病院ということを忘れてしまう程でした。そこにも患者の精神的負担を軽くする工夫がなされており、日本ではあまり知ることのできない世界でした。

1週間という短い間でしたが、日本の生活では受けることのできない良い刺激をうけることができました。英語力に加え、これまでの自分の考えの薄さに気付き反省すると同時にこれからの学校生活のモチベーションの向上にもつながりました。この経験を活かし、真摯に患者と向き合える医療人となれるよう残りの学生生活を送りたいと思います。

最後となりましたがお忙しいなか引率してくださった枚方療育園古山先生、野口先生、古瀬先生、McCormick先生、今回の研修の支援をしてくださった山西先生、また研修のサポートをしてくださった事務の方々、他皆様に感謝申し上げます。

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