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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学医学部見学研修を終えて

● 伊藤 純子さん (第5学年次)

ito01.jpgこの度、2013年8月10日から8月17日の間、シアトルにあるワシントン大学医学部で研修をさせていただきました。今回の研修に参加させていただきたいと思ったのは、アメリカでの医療や医学教育を実際に見聞きし、海外ではどのような生命倫理に基づいて医療が行われているのかを知りたかったからです。4日間の講義の中で、Genetics、Premies、Malaria、Spiritual support、Palliative Care、Death with Dignity Actなどの様々な生命倫理に関する話を聞くことができ、またFred Hutchinson Cancer Research Center、Harborview Medical Center、NW Kidney Dialysis Center、Children’s Hospitalなどの施設を見学しました。講義では質問や意見を求められることが多く、きるだけ積極的に発言できるよう心掛けました。どの講義にも感銘を受けましたが、特に印象に残った3つの講義について述べさせていただきます。

 まず、Malia Fullerton先生による遺伝学における倫理問題についての講義です。この講義では、将来起こりうる疾患の診断、出生計画、疾患管理、守秘義務の項目についてお話がありました。特に妊婦に対する遺伝子検査についてはとても考えさせられました。日本では最近、妊婦に対する血液検査で胎児が21トリソミーである確率を調べることができるというのが話題になっているのを新聞で見ていたので、アメリカではすでに血液検査のNIPDが一般的であり今後ほとんどの妊婦が妊娠初期でこの検査を受けるだろうという話を聞き、日本との違いを感じました。妊娠初期の時点で自分の子供に遺伝子異常があるかどうかわかる可能性もあり、子供の出生やその後の人生にも関わることになり、親の責任も重くなるように思いました。また、遺伝子検査ではその疾患に関わる遺伝子変異があるとわかっているが症状がない子供に対して、症状が起こるような日常的な活動を制限するべきかどうかという話が最近アメリカでも話題になってきていると聞いて、検査をすることによるメリットを考えがちですが、検査が必ずしも本人の生活の質を高めるわけではないのではと感じました。誰に遺伝子検査が必要か、いつやるべきか、どのくらいの範囲で結果を伝え、どう対処していくのかなど、遺伝子検査が発達していくと共にいろんな問題が新たに生じ、医療関係者として何が患者にとって一番いい方法なのかを考え続けていく必要があると感じました。

ito02.jpg 次に、Stu Farber先生による緩和ケアについての講義です。将来自分が、癌の告知や治らない病気など患者に伝えるのが難しい話をするときにどうやって話せばいいのだろうと不安に思っていましたが、講義では実際にどんな会話が難しく、何がその会話を難しくしているのか、どのようなアプローチが難しい会話を促進するのかを順を追って考えてみることができました。患者の話をただ聞くのではなく、対話のリーダーシップをとりながら患者の話を踏まえて次の質問をしていくというスタイルは、症例で具体的に対話の様子を聞き、患者の話をどんどん引き出して最終的に心情を引き出していたので、とても印象に残りました。病気を治療する上でも、患者と対話し心情を表す言葉を引き出しその言葉を受けて次の対話につなげていくことがいかに大事かを考える良い機会になりました。またこのような対話を可能にするためにはトレーニングが必要とのことなので、この講義をきっかけに、実践し反省を繰り返すことを意識して行っていきたいと思いました。

3つ目は、Ross Hays先生による、小児患者に対する緩和ケアについての講義です。小児ホスピスで、Decision-Making Communication Toolを使って、体系的に患者が何を望んでいるか分析する方法はとてもわかりやすかったです。McCormick先生の、Medical Indications for Intervention、Preferences of the Patient、Quality of life、Contextual Issuesの4つの項目を元にした4 box methodを使って、疾患の症状や治療に伴う経過の中でその時々の患者の状態を把握し対応していくという手段を初めて知りました。実際の症例でこの4 box methodがどのように使われているのか具体的に知ることができ、この4 box methodを使って患者と対話することで、医療者側だけでなく患者本人も自分の状態やおかれている状況、自分が何を望んでいるのかをより一層理解しやすくなるのではないかと感じました。緩和ケアを行う上で、日本でもこのtoolを使ってみたいと思いました。

ito03.jpg この研修で、生命倫理に関する様々な分野の講義を受けて、生命倫理に対して深く考えることができました。また、宗教や人種、アメリカではautonomyがベースにあること、州による違いなど、日本とアメリカとの生命倫理、医療システム、考え方などの違いを学ぶことができました。講義を通してアメリカの医療を知ると同時に、日本ではどうなの?と聞かれる度に、自分がいかに日本の医療のことについても把握しきれていないかを痛感しました。先生だけでなく同級生とも生命倫理に関するディスカッションすることができ、普段はこのような深い話はしないため、この機会に周りの同級生がどのような考えを持っているのか聞くことができ、いろんな考え方があることを改めて知りました。海外での研修にチャレンジしてみて、ワシントン大学の学生とも交流することができ、短い期間でしたがたくさんの英語に触れることができたのは、少し自分の自信にもつながったように感じます。この研修に参加することができ、本当によかったです。このような貴重な経験をこれからの人生、医学や英語の勉強に生かしていきたいと思います。

 最期になりましたが、このような素晴らしい研修の機会を与えて下さった枚方療育園の古山先生、山西先生、兵庫医科大学の野口先生、古瀬先生、杏林大学の蒲生先生ご夫妻、McCormick先生をはじめとするワシントン大学の先生方、事務の方々、この研修で関わって下さったすべての方に心より感謝を申し上げます。

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