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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学医学部研修を終えて

● 大西 政彰さん (第5学年次)

w01_1.jpg 今回の研修を通して、様々な生命倫理問題に触れることがました。その内容は小児科やホスピス、腎臓科など様々で、改めて倫理問題の大切さ、難しさを知りました。またワシントン大学は広大で緑の多いキャンパスや、まるで美術館のような図書館、アメリカンフットボールの大きな球場などがあり、どれをとってもスケールが大きく、文字通り「世界」を感じることができました。同時に、授業の内容は日本で聞いたことがある内容も多く、日本で努力すれば世界に必ず通用すること、自身の英語力や積極性の乏しいことを知りました。

 私は末期ガンで祖母を亡くした経験から、尊厳死について興味を持っていました。ワシントン州では余命6ヵ月以下の患者は、医師から致死量の処方を受け取ることが出来る事を知っていたので、今回の研修で、処方する医師の心の葛藤や、それらの対処法はいったい何なのかを知りたくて参加しました。

 授業で先生が処方を行ったことのある医師の例えを教えてくださいました。それは、ただ無心に自転車をこぐなどの運動を行い、気を紛らわすといったことでした。正直この答えは私の疑問を解決してくれるものではありませんでした。医師の精神的なケアを行う存在や、法律があると思っていたからです。また、このようなとても倫理的な内容の話は医師間でもなかなか話をされることが少なく、実際には医師一人一人の精神的なタフさでもってやり過ごしていることも知りました。これからは医師同士や医療従事者と話をすることで、精神的な問題を軽減し、次の世代に話をすることで臨床での道筋を作っていくべきだと思いました。この他にも、「胎存22週、生存率0%の胎児を助けるか?」、「先天奇形が予想されるため、積極的に治療することを両親が望まない場合どうするか?」、「人工透析機が5台しかないが、患者が100人いる場合、誰から治療していくか?」といった様々な生命倫理の問題を考え、議論することができました。

w01_1.jpg 本来医師とは、患者を救う存在であり、患者の苦しみを取り除く存在でもあります。「では、このバランスはどのように決定するのだろうか。」と、今回の研修中ずっと考えてきましたが、未だに答えは分からないままです。分かったことといえば、2500年前からヒポクラテスが医療の倫理を提示しているように、医師はずっと以前からこのような問題を考えさせられてきたということでした。ただ、医師はこのような正解のない問題に答えを出さなければならないときが、少なからずあります。その時に自分の意見を、自信を持って答えられるように、これらの問題をずっと考えていきたいと思います。そのためにも、多くの患者さんと接することや、文化やバックグラウンドの違う海外での臨床経験を通して自分の視野を広げる必要があると思いました。

 また、ワシントン大学での講義や医療施設を訪問するにあたって、アメリカではチャプランの存在が大きいことが印象的でした。チャプランとは宗教的観点から、患者さんの精神的なケアを行う職業です。日本と異なりアメリカでは宗教が生活に根付いているため、このような職業が存在しており、患者さんにとって大切な役割を果たしているのだと考えていました。しかし、授業やチャプランの方の話を聞くうちに、チャプランという職業は決して宗教によるケアだけを行っているわけではないことを知りました。宗教が生活にあまり馴染みのない日本でもチャプランという職業がもっと認識されるべきだと思いました。アメリカと違って、日本は患者さんの数が多いため、物理的に1人の患者さんに費やす時間も少なければ、チャプランのような患者さんの精神ケアを行う存在も多くありません。だからこそ、医師がその精神ケアを行うことを忘れずにいなければならないと思いました。そのためにも私は将来医師になったとき、付き添いの先生との会話で教えていただいたように「患者さんが入って来たら、なるべくカルテを見ずに患者さんの顔を見る」「前回会った時のことを覚えておく」ことを実践していくことで、少しでも患者さんに信頼感や安心感を与えられるように努力していきたいと思いました。

 今回の研修では、日本とは違う様々な人々や文化に触れることができました。レストランでの会計の支払い方や、パーティーでの振る舞い方など日本では経験することのできない経験をさせていただき、とても勉強になりました。シアトルはヨットやクルーザーの似合うおしゃれで、涼しく生活し易い街で、観光面でも非常に充実した日々を送らせていただきました。ただ、スターバックスの店舗数の多さには驚きを感じたのと同時に、こんなにも必要なのかと疑問に思いました。

 最後になりましたが、研修の機会を与えてくださった山西先生、引率してくださった古山先生、服部先生、蒲生先生ご夫妻、様々な準備をしてくださった枚方療育園の原田さん、山下さん、播磨サナトリウムの石上さん、そして、いつも私たちのことを考えてわかり易い英語を使用してくださったMcCormick先生をはじめとするワシントン大学のすばらしい先生方、事務の方々に感謝を申し上げます。本当に良い経験をさせていただきありがとうございました。

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