広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学医学部見学研修を終えて

● 松井 美樹さん (第5学年次)

w01_1.jpg 今回のワシントン大学での研修では様々なことを学ばせていただきました。Lecture自体は4日間という短い間でしたが、この4日間の中でMcCormick先生をはじめとして、いろいろな分野の先生方にBioethicsに関わる話をしていただきました。テーマはGenetics、Malaria、Transplant、Spiritual support、Hospiceなど様々で実際にKidney centerやChildren’s hospitalなどの施設に出向いて見学することもできました。また、lectureは先生を中心とした少人数制の参加型形式で、発言を求められることもしばしばあり、日本の受け身の講義とは全く異なるものでした。その中でも特に印象に残ったlectureが3あります。

 1つ目はDr. KingによるChaplainやガン患者に対するSpiritual Supportに関するlectureです。このChaplainとは患者や家族のsupportやspiritual careを行う専門の職業です。Chaplainになるためには大学院まで進み、研修を受け、自身の信仰する宗教で認可を受ける必要があります。そして、時にはその対象がガンで終末期を迎える患者であったり、急性期の病院で亡くなった方の家族であったりと様々です。また、Chaplainにも教会づきの方や、病院に勤めておられる方など就業形態がいろいろあります。日本ではこうした専門の職業はなく、同じような役割を医師や看護師、心理カウンセラーの方などが果たしています。また、施設に見学に行った時に実際にChaplainを目指して病院で実習されている方にお話を聞く機会がありました。その方から「当直もあるし夜になると不安になる患者さんも多いから呼ばれてこっちが眠れないこともあるよ。」と言われました。こうして、実際にChaplainをされている方や目指している方の話を聞いて患者さんの心のケアという面では日本よりもアメリカのほうが進んでいるという印象を受けました。日本ではChaplainのような役割を医師がせねばならないこともあると思います。そうした時、私達医師はじっくりと患者さんの話を聞き、その患者さんの価値観にあった治療、そして看取り方をしてあげることが大切なのだと教わりました。

 次はDr. Tom Strandjord のlectureです。このレクチャーの中でアメリカでは22週未満で生まれた子どもや、生命予後が不良の18トリソミーの子どもには治療を行わないことがあるという事実を知りました。私は日本では新生児の救命率が高いことを知っていましたし、実際にそのくらいの在胎週数で生まれた子供や、700gくらいで生まれてきた子供も見たことがあったので、赤ちゃんは生まれてきたら週数に関係なく救うものだと思っていました。しかし、実際はアメリカのように在胎週数が22週以下の新生児の生存率がほぼ0に近いような国では“生まれてきた子どもの権利”も考えて治療をするのかしないのかを決めるそうです。治療をすることで苦しめて死なせてしまうかもしれないということもきちんと親に話し決めてもらうのだとおっしゃっていました。こうした治療に対する生存率の違いで日本とアメリカのように医師側の対応もこれだけ変わってくるのだと思いました。そして、いままであまり考えたことのない“生まれてきた子どもの尊厳”を考えるためのとてもいい機会になりました。

W01_5.jpg 私にとってこの4日間はbioethicsについて様々なテーマの問題を知り、いろいろな立場の意見を聞き、自らの見聞を深めることができました。また、それぞれのテーマは個別の内容に思えても実は他のテーマと関わりがあり、4日間を通して大きなBioethicsというひとつのテーマを学んでいるのだと気づきました。そして、日頃の実習からこのlectureで見たこと聞いたことを生かして患者さんの痛みに対して共感でき、自然と患者さんの心を開くことのできる医師になりたいと思いました。

 さて、ここでは教室・Bioethics and HumanitiesのAssociated professorであるDr. Malia Fulletonのレクチャー、遺伝学の生最後になりましたが、このような機会を与えて下さった枚方療育園の山西先生、古山先生、兵庫医科大学の服部先生、杏林大学の蒲生先生ご夫妻、そして素晴らしい講義をして下さったMcCormick先生をはじめとする先生方、研修スケジュールの調整等に尽力して下さった枚方療育園の職員の方々、私達の研修に携わっていただいたすべての方々に心より感謝申し上げます。

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