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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

汕頭大学医学院での研修を終えて

● 武田 紗季さん (第3学年次)

 今回の留学は私の中で様々なことを考え直すことのできた素晴らしい経験となりました。私は中国という国について勘違いしていたのかもしれません。今回の研修を通して、私はメディアなどから受け取る情報を自分なりに広い視野をもって噛み砕く能力がもっと自分には必要であるということに気付きました。実際、中国へ行ってみると反日などと言っている人は見かけず、私たちが日本人であるということを知っていても、みんな(バスの運転手さん、看護士さん、空港の人など)優しく親切に接してくれました。先生にそれについて伺ってみると、反日を唱えているのはごく一部の人であって、ほとんどの人は、政治は政治、自分は自分であり国は関係ないと考えているそうです。

 また、海外から見た日本、についても考えさせられました。私たちが、中国全土がPM2.5で汚染されていると考えているのと同様に、中国の方々も日本が放射能で汚染されていると考えていたことを知りました。実際、私達が行った汕頭は、北京に比べるとはるかに空気が澄んでおり、現地の人は全く心配している様子がありませんでした。それと同様に私達も、関西は安全で放射能の影響は少ないと考えています。何が真実かは分かりませんが、自分はそれについてどう思うのか、何をどこまで信じるべきなのか、ということについて深く考えるきっかけになりました。

 最も印象的だったのは中国の医学生の学習に対する姿勢でした。2日目に大学内の施設を見学させてもらった際に、現在の汕頭大学医学院(医学部)について教えてもらいました。まず、医学部には5年制と7年制があり、7年制へ行くと修士課程を取れるそうです。また7年制の学生は、1回生のときから全授業を英語で受講し、最終的にはアメリカの医師国家試験を受けるそうです。今年は11人の学生が合格しました。これは、アメリカに中国人の医師を派遣するためではなく、中国とアメリカで医学知識の共有を図るためだと先生方はおっしゃっていました。実際に4日目にその授業を受けさせてもらいましたが、私達が日本語で学んでいても難しくて理解しにくい内容を、すべて英語で行っていることに驚きました。しかし時間がたつとともに聞き取れるようになり、案外分かるようになりました。もし、日本にこのようなクラスがあったとしても、大学入学までに英語が堪能である学生はいるだろうし、そういった学生にとってはあまり苦もなく受講できるのではないかと思いました。逆に、何故日本にはそういったクラスがないのか疑問にも感じました。キャンパス内には医療に関する様々な機器がそろっていました。心音を授業で学ぶ為の人形が学生2人につき1体用意されていたり、瞳孔が開いたり閉じたりして実際に吐血する人形や出産したりする人形がありました。手術室も、手洗い場から全ての部屋が本物と同じ作りで再現されており、とても立派なものでした。この機器や施設は李嘉誠先生という、香港にお住まいの大富豪の寄付によって成り立っているそうです。この方の寄付によって様々なボランティア(貧しい人々への医療の提供や口唇口蓋裂も無償治療、末期がん患者のためのホスピスなど)が行われており、それらに汕頭大学の多くの医学生が参加していました。こういったものが学生の意欲を上昇させるのにつながるのかもしれないと思いました。

 6日目に大学病院を見学させて頂いたときに、眼科で針治療や、漢方薬による治療(漢方薬を蒸気にして目にあてるそうです)を施す部屋があったことが驚きでした。中国の伝統医療が大学病院内にあるということを知り、中国の歴史の深さに感心させられました。また、白内障の手術が別室のスクリーン上、3D画像で中継されていたことや、形成外科での術後の完成度などを見て、中国の医療のレベルの高さを感じることができました。

 しかし、逆に少し驚いた面もありました。それは産婦人科を見学させてもらったときでしたが、高齢出産の患者さんの子宮内膜生検や人工妊娠中絶の際、全くエコーを用いずに施術していたのです。そのとき、担当してくださった先生が日本に留学経験のある方で「日本では考えられないことだが、ここではエコー室が別であることや患者数が多すぎることなどにより、十分な環境下で治療ができない。」とおっしゃっていました。機械を使わずに医師の知識と経験のみによって治療が行われているのだと知り、驚いたのと同時に少し感心しました。

 全ての実習を通して思ったのは、日本と中国で医療制度や技術の違いはあっても、患者さんに対する思いやりや態度は同じであるということでした。「患者さんを尊重し、上から命令するのではなく、逆に言いなりになるわけでもなく、相手の立場に立って共に病気について考えることが大切である。」これは、日本の医療界においてとても重要視されていることですが、この言葉を中国で聞いた時、国や言語は異なっていても考えることはみんな同じなのだと思い、感動したのを覚えています。

 最後に、これからこの留学に参加してみたいと考えているみなさん!!多分、色々と不安に思うことがあると思います。私も行く前は期待の思いだけではなかったことは事実です。でもこの留学は、迷ってでも行くだけの価値があります。勇気を出して参加してみてください。トイレやお風呂など不便な点もありましたが、(それはそれで楽しい思い出になります)それをはるかに超える素晴らしい経験がたくさんありました。色々な国の方(中国人はもちろんのこと、留学しに来ているカナダ人やアルゼンチン人やイラン人など)と知り合うことができ、様々な体験をさせてもらいました。この留学で得た経験は生涯、忘れられないものになると思います。

 この留学でお世話になった全ての方々に心から感謝します。本当にありがとうございました。

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