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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

汕頭大学医学院での研修を終えて

● 巌 和泉さん (第3学年次)

w01_1.jpg 昔から海外の医療について興味はあったのですが、なかなか機会がなく、海外研修は未経験でした。3年生になり臨床を学んでいくうちに、日本の医療と海外の医療との違いを学びたいという気持ちがさらに強くなっていき、ちょうどこの中国への留学の話を知り応募させて頂きました。留学先であった汕頭大学は、広東省の東に位置し、3月でも気温は25~30度、湿度50%という日本の沖縄のような気候で、大変過ごしやすかったです。また、私達が留学した時期は、ちょうど尖閣諸島やPM2.5で中国と日本は複雑な関係だった時でしたが、汕頭では反日の意識はなく、優しい方ばかりで街の空気もきれいでした。汕頭大学は李嘉誠基金会により創られた大学です。私達が参加した研修は、主に基金によって行われている活動に加わるという形でした。

 1日目、関空を朝10時に出発する飛行機に乗ったのですが、中国の国内線が遅れ、汕頭空港に到着したのは夜の10時を過ぎていました。空港には先生方が迎えに来て下さっていて、車で40分ほどかけて汕頭大学医学院へ向かいました。車から見える交通の状況を見て思った事は、みんな車の運転が荒いという事でした。交通量が多い上に我先に突っ込んでいきますし、道路もきちんと整備されていないのか凸凹で、車の中では何かのアトラクションに乗っている気分でした。また、汕頭ではスクーターが交通量の過半数を占めており、ヘルメットをかぶっていない人が多く、3人乗りや犬を乗せている人もいて、とても新鮮で移動中外の様子を眺めてばかりいました。

 2日目、汕頭大学医学院で、大学と李嘉誠基金についての説明を受けました。その後、医学部の臨床技能センターの見学をしました。センター内には学生用に、実際に様々な心音を聴診器で聞く練習用の人形、先生の遠隔操作により、人間のように症状を言ったり、瞳孔の様子を観察したりできる人形がありました。さらに、挿管の練習用・尿管を通す練習用・腰椎穿刺用・正常分娩の練習用などの人形があり、汕頭大学は臨床に大変力を入れている事を実感しました。また、この実習を2年生からすると聞き、汕頭大学の学生達をたくましく思いました。さらに、実際と同様の手術室も学生用に作られており、学生用の施設の充実さに驚くと同時に、低学年の時から教養と臨床を両立させなければならない現地の学生達はどれほど忙しいのだろうと思いました。午後からは医学院を離れ、車で20分程の汕頭大学へ移動しました。午前に行った医学院の施設もかなり広かったのですが、汕頭大学は鳴尾町くらいの広さはあると思った程広かったです。大学内にダムと池があり、山も見渡せて景色がよかったです。また、市役所くらい大きな図書館があり、中はきれいで勉強スペースが多く、とても羨ましく思いました。その日は土曜日だったのですが、休日にも関わらず多くの学生が自習していて感心しました。

W01_5.jpg 3日目、カナダの留学生達と一緒に、バスで2時間程の所にある農村地域のボランティアに参加しました。農村地域は、街の混雑した様子とは一転し、水道は通っておらず、自給自足の原始的な生活をおくっている様子でした。中国の中でもこんなに貧富の差があるのかと驚きました。ボランティアの医師に同行し、農村地域での家庭医療を見学しました。患者さんは脳梗塞の後遺症の方や、事故で全身麻痺の方などがおられ、大病院で入院しないといけないような方ばかりでしたが、医師がおっしゃるには、農村地域の人達はお金がないため十分な薬を出してあげることができないし、適切な治療を行うこともできない状況だそうです。また、中国には保険制度がないらしく、医療制度に疑問を感じました。この農村地域には休日にも関わらず多くの中国のボランティア学生が来ていて、村の人々とコミュニケーションをとったり、子供達と遊んだりしていました。また、私達はまだ血圧測定や聴診を行えないのですが、中国の学生もカナダの学生も、自分の聴診器を持参し軽い診察を行っていたので、自分の無力さを感じました。その後汕頭大学へ戻り、先生方やカナダの学生と一緒に餃子作りをしました。

 4日目、午前中は汕頭大学第一付属病院の産婦人科で、女性の産婦人科医である孫先生に説明をして頂きながら、孫先生の治療を見学しました。病院は患者さんの数がとても多く、正月のバーゲン並みの混み方でした。先生は大変忙しいそうで、1日に125人もの患者さんを診ることもあると仰っていました。このように大学病院などの都市部の病院に患者が集中する理由は、田舎の病院や個人病院は技術が低く、医療費が高いからだそうです。病院によって技術や医療費に大きな差があることに驚きました。見学中、多くの患者さんは人工妊娠中絶で来られていました。中国は1人っ子政策があるために中絶する人が大変多いそうで、患者さんから取り出された胎児を目の当たりにし、命について考えさせられました。午後からはホスピスケアを見学するという事で、看護師の方に同伴し患者さんのお宅を訪問しました。1件目の患者さんは36歳の女性で、乳癌で苦しんでおられ、化学療法による痛みと吐き気でうつ状態となっておられ大変深刻そうでした。2件目は50代の男性の患者さんで、大腸がんが肝臓へ転移してしまっており、検査をするお金がないため政府に申請しておられました。看護師の方は親身になって患者さんやご家族の話を聞いて診察をし、メンタル面を支えているという感じでした。私はホスピスケアを見学するのは初めてでしたが、家族の方達も悲しみ悩んでおられる様子で、とても心が痛かったです。

 5日目、午前中は潮州観光をしました。中国らしい建造物を見学したり、汕頭刺繍や茶器のお店に入ったりと、中国の歴史に触れられてよかったです。午後は郊外にある眼科病院を見学しました。白内障の専門病院で、年間1500程の手術を行っているそうです。また、この地域は周辺に病院もなく貧しい人が多いため、眼科以外の診察も行っており、都市部の病院よりも安い治療費で診ているそうです。

 6日目、午前中は汕頭大学第2付属病院で、劉先生に感染病棟を案内して頂きました。感染病棟は、日本のように完全に隔離されておらず、病棟同士が網戸で仕切られているのみで、これで大丈夫なのかと思いました。次にヤン先生に形成外科を案内して頂き、口唇口蓋裂の子供達と会いました。中国では、農村部で生まれお金がないために放置され、16歳になっている患者さんもいました。汕頭大学では今、そのようにお金がない人達のために、政府に申請しお金を援助してもらい、安く治療しているそうです。その後、精神科へ移動しました。中国の精神科病棟は、日本の閉鎖的な空間とは違い、自然豊かな庭があり、スポーツする場所もあり、とても開放的で明るい雰囲気でした。また、施設の中には精神科の大きな研究所もあり、精神疾患に対し熱心に取り組まれている様子が分かりました。午後は、汕頭大学の院長先生の奥さんに買い物に連れて行って頂き、お土産を買いました。

 あっという間に1週間が過ぎ、大学の先生方、学生さん達がとても優しくサポートして下さり、最後の夕食の時には涙が出そうになりました。中国の医療を学ぶことができたのはもちろん、中国の人々、文化、環境に触れることができ、大変勉強になりました。この留学をサポートして下さった全ての方々に心から感謝します。本当にありがとうございました。

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