広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学研修旅行を通して

● 丸山 和歌子さん (第5学年次)

W05_2.jpg今回のこの研修ではとても多くの経験、考えを持つことができました。5年生の臨床実習を少しでも経験した後でのこの経験は、本当に多くのことを考え、学ぶ機会になりました。多くの講義があった中でも、特に、日本のことしか知らなかった私は、アメリカと日本での違いで驚いたことがいくつもありました。

まず、Chaplainという職業の存在です。名前を聞いても全くどんな職業なのか検討が付きませんでした。幅の広い宗教的な考え、スピリチャルな苦悩、また、その人の価値観について、患者に寄り添い、より良い方向、考えへ導くことをサポートするもの、そして、医療者の精神的サポートもおこなっているもので、組織から認可されているアメリカでは一般的なものだと知り、驚きました。日本では、患者の精神的なケアという面でカウンセラーが知られていますが、病院に常駐しているイメージがありませんでした。しかし、ChaplainはChaplain用の当直室があるほど、医療現場にかなり必要とされているものだと聞きました。日本には、そのようなはっきりとした組織がありません。しかし、あまり感情を表に出さない日本人にこそ長い間コミュニケーションをとり、寄り添い支えてくれるChaplainのような存在が必要なのではないかと思いました。また、日本では、医療者は患者の死などと向き合った場合の精神的なサポートをしてもらえるものはあまりなく、経験して、自分で解決すべきといった考えがありますが、Chaplainのような存在がいれば、そのような精神的な悩みも乗り越えやすいのではないかと思いました。「Chaplainを日本に広めることはできないか」という質問をしたところ、それは難しいとの回答をいただきました。日本は、アメリカと違って無宗教の方が多く、Chaplain=宗教といったイメージがあるためとも先生方がおっしゃっていました。日本で広めるなら、Chaplainという職業にするのではなく、カウンセラーの組織や、資格についてもっと教育機関をつくったり、カウンセラーを配置するための組織を充実させていけばいいのではないかと思いました。また、素晴らしい職業だからといってそのまま取り入れるのではなく、その国の特徴を分かったうえで、その場所、その場所に対応したものに変えて取り入れていかなければいけないのだとも感じました。

ほかにも私が驚いたことは、アメリカでは透析を無料で受けられる、といったことです。透析はアメリカで初めて行われ、透析を行うだけの施設がいくつもあるとお聞きしました。その施設では、透析を受けたり、自宅での透析のやり方の講習や相談を国や州政府からの援助で、無料で行っているそうです。アメリカでは保険も皆保険ではないので入っていない人もいるなか、無料で受けられる治療があるというのは、ほんとうに驚きでした。日本では、予防や検診による早期発見に力を入れています。治療を無料にしてしまうと無駄な透析や、我が儘な患者が多くなってしまうように思います。また、透析患者数は年々増加しているようで、負担ばかりが増えているそうです。国が援助を行うなら、透析が必要となる疾患の予防に力を入れていけば、税金の負担も患者数も減るといった効果がみられるのではないかと感じました。

そして、私が一番驚いた講義内容は、尊厳死についてでした。私が講義を聞く前までの尊厳死の考えは、末期の患者が自分の人としての尊厳を保つため、人工呼吸などの様々な延命を拒否する、といったものだと思っていました。しかし、アメリカの一部の州で認められた尊厳死とは、余命6か月以内を宣告されている患者が自ら尊厳死を希望することを医師に伝え、医師から死に直結する薬の処方を受け、自らその薬を飲む、といったものでした。私の考えていたものとは大きく違った内容で、どちらかというと安楽死に近い考えだと感じました。自ら死の時期を決定する。はじめ、私は自殺の手伝いのように感じました。話を聞いているうちに、このような尊厳死を認める考えの根底には、アメリカ人の、自立、といったものがあるのだと感じました。人工呼吸などの延命下では、自己の意見は伝えられず、自立を失うと考え尊厳死を選ぶ方が多いとおっしゃっていました。しかし、州でそのような尊厳死法が認められても、病院や医師個人で尊厳死を受け入れていないところは多くあるともおっしゃっていました。カトリック系の病院では、尊厳死の申し入れを拒否しているそうです。私ももし尊厳死法の定められた土地で医師をしていても、尊厳死については拒否すると思います。自立が失われるからと言って、やはり、死につながる薬の処方は、自殺の手助けと考えてしまうからです。日本ではまだ尊厳死についてはみとめられていません。アメリカで認められている尊厳死とは定義が異なりますが、日本での尊厳死の動きについても、アメリカと比較してみていきたいと思いました。

4日間の講義ではほかにも書ききれないほど多くのことを学ばせていただきました。生命倫理の歴史的背景、遺伝的な面での倫理、未熟児に対するケア、救急治療、移植、ホスピス、緩和ケア、小児の緩和ケアについて、など興味深い内容ばかりでした。さまざまな職業、考えなど多くのことを知ることができ、また、自分の中での考えなどを深める機会にもなりました。英語は苦手でしたが、自分なりに多くの先生方に質問やコミュニケーションが取れたのではないかと思います。そして、いつもとは違うメンバーとの旅行ということで、この研修メンバーともより親しくなることができました。この研修旅行は、考えていた以上のかけがえのない経験ができ、自分の視野を広めるとてもいい機会になりました。今回学んだこと、考えたことを自分の将来に必ず活かしていきたいと思います。

最後になりましたが、このような素晴らしい機会を作っていただいた、山西先生をはじめ、引率してくださった古山先生、野口先生そして温かく迎えてくださったMcCormick先生や、講師の先生方、この研修旅行に関わってくださったすべての方に心から感謝しています。本当にありがとうございました。

兵庫医科大学 〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1番1号 TEL:0798-45-6111 (代)

Copyright(c) Hyogo College Of Medicine.All Rights Reserved.