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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

シアトル研修旅行を終えて

● 前川 沙知さん (第5学年次)

W07_1.jpg8月15日から18日の4日間、アメリカのシアトルでの研修旅行に参加させていただきました。Dr. McCormick をはじめとする様々な先生方の University of Washingtonでの講義や、Fred Hutchinson Center Research Center, Harborview Medical Center, Northwest Kidney Center, Children’s Hospital, Providence Hospice of Seattleなどの施設見学を通して、新しく学ぶこと、考えることは非常に多かったです。毎日が新鮮でとても貴重な体験ができました。

 今回の研修では、遺伝子診断、尊厳死、臓器移植、延命治療、終末期医療など、各分野の専門の先生方から、幅広くBioethicsについて教えて頂きました。以前は、Bioethicsと言っても、あまり理解できていなかったのですが、先生方のわかりやすい講義のおかげで理解が進んだような気がします。

 Jennifer Guon先生による“Ethical Issues in Pediatrics”では、13,18 trisomyの胎児を妊娠したときに、妊娠継続するのか、中絶するのかという話題が取り上げられました。まず、アメリカでは13,18 trisomy の胎児は出産させなくて良いというガイドラインがあることに非常に驚きました。日本では、基本的に、妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがあるという以外での中絶は認められていないし、ガイドラインでも蘇生すべきだと示してあるそうです。この話題における問題は、胎児を蘇生させるか、させないかの最終決定は、親にあるのですが、決定に際し医師からの圧力(中絶を勧めるようなメッセージ)があったかどうかであると先生はおっしゃっておられました。胎児は、生まれる前に死んでしまう事もあるし、生命予後が良くないというのは明らかな事実です。しかし、その事実以外にも産まれてくる児のネガティブな面を並べ、医師が、児を中絶するように親の気持ちを傾かせることがあるそうです。ここで、重要なのは正確な情報をしっかり伝えられているのかどうかということです。13,18 Trisomyの場合、出生後、積極的に治療を行って来なかったから予後不良なので、予後不良だから治療を行わなかったのかもしれません。私は、今、産婦人科に興味を持っています。将来、産婦人科医となったら、このような場面に直面することもあると思います。そのときは、正しい情報だけを伝えて判断は親に任せたいと強く思いました。たとえ、妊娠継続するのか、中絶するのか、蘇生すべきかどうか、自分自身がどちらかの意見を持っていたとしても、親の選択を妨げないようにしたいです。そして、どちらの選択をすることになったとしても、以後、親が後悔はしないようにしっかりとしたサポートをしたいと思いました。

また、Tools for Ethical analysis(倫理分析のためのツール)という講義がありました。はじめに、倫理の原理を教わりました。患者を敬うこと・害を与えないこと・患者の利益になること・人々を公正に扱うことです。これらは、医師として非常に重要なことに感じました。いつも、心に置いて行動すべきだと感じました。次に、倫理分析のツールについてです。倫理問題について4つの観点から総合的に考えるためのもので1. Medical Indication 2. Patient Preference 3. Quality of Life 4. Contextual Featuresという4つのBOXからなっています。一つのBOXごとに項目が分かれており、これらは、どの倫理問題でも不変の要素だそうです。これらを埋めていくと、倫理問題を一つの問題として構成することができます。今まで、倫理問題について考えるとき、漠然と問題に向かっていっていました。だから、これだけ、系統だった考え方は初めてで、Bioethicsの論理的な考え方を知ることができました。これから、自分が倫理問題について直面したとき実際に使ってみたいなと思いました。

W07_2.jpgまた、様々な施設の見学もさせていただきましたが、患者が病院の中でも安らげるようにとの配慮が多く見られました。美しい絵画が飾ってあったり、窓からはシアトルの美しい景色を見ることができましたし、採光がよくとても明るい印象を受けました。また家族に対しても、休憩をとれるスペースや、手続に対してのサポートも充実していました。施設の点でも日本との違いに驚き、日本もこのようになればいいのになあと、強く思いました。

様々な講義を受け、Bioethicsについて、よく考えるきっかけとなりました。Bioethicsに答えはなく、各人が自分なりの倫理観や基準をもっていることが望まれると思います。特に医師は、専門家professionalとして自分の倫理観を元に決定していかないといけない場面が多くあると思います。私は、今回の研修で、自分の中の答えはなかなか出ませんでしたが、先生や友人の意見を聞いて、色々な考えがわかりました。これから、Bioethicsについて考え続け、様々な経験を通して、自分自身の中で倫理観を築いていけたらいいと思いました。

 1週間という短い期間でしたが、今回の研修で学んだことは数え切れません。ワシントン大学の先生方や学生の方々との交流の中で英語のスキルやコミュニケーション能力もわずかながら上達したと思いますし、ワシントン大学の学生のモチベーションの高さに刺激をうけ医学の勉強もさらに頑張らなければいけないと思いました。これらの経験を、医師を目指す上で、また医師となってからも必ず活かしていきたいです。

最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださった山西先生、引率してくださった古山先生、野口先生、蒲生先生、北条先生、私たちを温かく迎えてくださったMcCormick先生をはじめとするワシントン大学の先生方、スタッフの皆様、今回の研修旅行に携わってくださったすべての方に心から感謝しています。本当にありがとうございました。

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