広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

ワシントン大学研修旅行に参加して

● 藤上 友輔さん (第5学年次)

W06_1.jpg まず、今回、アメリカ・シアトルのワシントン大学およびその周辺施設における研修をさせていただけたことが私にとって確実に将来の糧になったと強く感じました。今まで中学時代に医師になりたいと志して以降、大学での病院実習でようやく医師になり始めたのかなと感じる一方で、日に日に生命とはなんぞやという気持ちが強くなっていきました。ポリクリ生として初めて目にした人の死。そんな中、生命倫理に関する実習があり、しかも憧れの地アメリカでの実習ということで、実習に参加できることが決まってからは、楽しみである気持ちを抑えることはできませんでした。

 実際、8日間という長いようで短い期間ではありましたが、日本における生命観とアメリカにおけるそれとの違いを少しではありますが、わかった様な気がします。渡米後2日間は、時差ぼけになれるため比較的自由な時間を過ごさせていただき、その後4日間という非常に短い期間ではありましたが、Dr. McCormickによる生命倫理のセミナーの受講や、様々な施設の見学をさせていただきました。

 この期間の実習の中で、私の中で特に印象に残ったことがあります。それは、まずホスピスなどのターミナルケアを行う病院において、チャプランという職業が非常に重要な位置を占めているということ。もう一つは、世界で初めて人工透析治療が開発されたというNorthwest Kidney Centerにおける実習です。

 はじめに、ホスピスなどのターミナルケアを行う病院において、チャプランという職業が非常に重要な位置を占めているということについて、話したいと思います。日本において、チャプランというものは、存在するとは聞きますが、決して身近ではないですし、多いものでもありません。しかし、アメリカでは各病院やホスピスに複数人のチャプランを配置するなど、病院組織においては欠かすことのできない職業になっていることを知りました。もう少し詳しく、話したいと思います。そもそも、私はチャプランという職業自体を全く知りませんでした。少しだけ、患者の気を休める職業が一部のキリスト教系の病院に取り入れられているということも聞いたことがあります。ただ、この職業は私にとっては、あくまでも宗教的なもので、病院が個別で行っていることだと思っていました。しかしながら、今回の研修では、見学させていただいた先々の病院でチャプランという職業があり、多くのチャプランとお話しさせていただく機会を頂きました。その中で、私の考えとは大きく違ったチャプランというものを理解することが出来ました。それは、チャプランは決して宗教的なものではなくて、それは宗教の枠組みにとらわれない患者に心の安泰を感じることができるようにするというものでした。実際、死を間近に迎えた患者にとって、死を考えないということは不可能だと思います。また、おそらく人はまず死を考えることを忌み嫌うことでしょう(少なくとも日本人の多くは)。しかしながら、死を意識せずにはいられない状況もおそらく多いことでしょう。そういう患者の心理状況において、心理カウンセラーとはまた違ったチャプランという職業があるということは非常に心強いのではないかと感じました。非常に稚拙な考えかもしれませんが、日本の人はこのストレス社会で生き抜き、また宗教とは比較的離れて生活を送ってきたからこそ、余計に死を考えることが少なかった分チャプランという存在がもっともっと日本中に広まれば患者にとって非常に良いことではないかと感じました。

 続いて、私にとって非常に印象に残ったのは、世界で初めて人工透析治療が開発されたというNorthwest Kidney Centerにおける見学でした。現在、日本でも多くの人工透析を必要とする患者がいます。また、こういった患者は当然、1週間この透析治療を受けないだけで、死に至ります。つまり、慢性腎不全などの腎疾患において、人工透析が作り出されるまでは、治療困難な疾病だったわけです。だからこそ、そんな治療法が確立された病院を見学させていただくことができ、またその病院のCEO(最高経営責任者)の方に直接お話しさせていただく機会を与えていただいたことには特に感謝したいと思います。また、実際病院見学の中でも驚くべきことがありました。それは、Northwest Kidney Centerにおいて、患者は診療に対するお金を一切払わなくてよいということです。これは、保険料が高く、国民皆保険でないアメリカにおいて、そのようなことが行なわれているということに大変驚きました。この人工透析の治療費の大半が国や州から捻出されており、残りの金額も地元の方々からの寄付で成り立っているそうです。ただ、これは私の見解ですが、アメリカではほかの疾患でも治療費が払えないために治療をあきらめている患者も多くいると聞きますが、そういった人たちの為にも、人工透析に充てる分のお金を少しでも融通できないのかなと感じずにはいられませんでした。もう一つ驚いたことがあります。それは、この病院では透析の仕方を習って、自宅で透析している人も多くいるということでした。日本での状況は私も詳しくは知りませんが、おそらくそれほど多くはないでしょう。こういったことを積極的に取り入れているところにとても驚きました。

W06_2.jpg そのほかにも、Dr. McCormickの講義や遺伝診断の倫理問題、こども病院の病院見学、ガンセンター、ホスピスの見学など様々な勉強をさせていただき、非常に勉強になりました。全てについて、得た経験・知識は新鮮でした。中学時代から、アメリカにおいて勉強することを夢にしていた自分としては、夢がかない感無量でした。ワシントン大学での研修はもちろんのことですが、そのほかにもマリナーズの試合を観戦させていただいたり、ショッピングを楽しんだり、毎朝街中を散歩してみたり、大切な友人たちと大切な時間を過ごすことができ本当に幸せでした。おそらく今までの人生の中で最も幸せな時間を過ごすことができたのではないかと感じています。

 最後になりましたが、今回のこのシアトル・ワシントン大学研修旅行を開催してくださった山西先生、今回引率してくださった古山先生、野口先生、蒲生先生ご夫妻、北条先生、枚方療育園・播磨サナトリウムのスタッフのみなさん、ワシントン大学で受け入れてくださったDr. McCormick、ワシントン大学で講義をしてくださったすべての先生方、その他施設で私たちを受け入れてくださったすべてのみなさん、また今回の研修旅行にかかわったすべてのみなさんに深く感謝したいと思います。

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