広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

シアトルでの研修を終えて

● 佐田 直子さん (第5学年次)

W02_1.jpg 今回8月13日から20日まで8日間、シアトルのワシントン大学での研修に参加させていただき、Dr. McCormicの下で、多くの先生方から生命倫理について多くを学ばせていただいた。元々生命倫理についてはほとんど考える機会がなく、むしろ難しい問題であるがゆえ、考えるのを避けてきたと言っても過言ではないかもしれない。しかし倫理的問題は医療において避けては通れない問題である。今回これを機にbioethicsにはどのような問題があるかを知ることができたし、生命倫理についてきちんと考えるきっかけを持つことができた。

 多くの先生が自分の時間を割いて私たちに様々な講義をして下さり、その全てが私にとって初めて深く考えるトピックであり重要だと感じさせるものだった為、全てが印象に残ったものになったが、その中で特に印象に残ったトピックについて振り返っていきたい。

w02_5.jpg 特に印象に残った講義のうちの1つは、Ethical Issues in Geneticsの講義であった。日本での新生児マススクリーニングでは数種の疾患のみ診断するのに対し、アメリカでは多いところでは50疾患をスクリーニングすると講義を受けた。しかし中には出生前に診断出来ても治療法がなくどうすることも出来ない疾患も多くあるとおっしゃっていた。また、多くの疾患を調べるほど偽陽性も増えるというのだ。私は最初このことを聞いた時、疑問に思った。新生児スクリーニングは、実際に事前に知ることで何か対処や対策、治療が出来ることに診断を行う意義があると思ったからである。実際診断が出来ても治療法もなくどうしようもない疾患である場合、出生前診断を行う意義が果たしてあるのか。私がもしそのような診断をされた立場であったら、いつ病気が悪化するか、いつ自分は死んでしまうか恐れながら日々過ごしていたかもしれないし、絶望に打ちひしがれ、将来頑張ろうという意欲ややる気を喪失していたかもしれない。周りの人に偏見の目で見られたり差別を受けたりする可能性もある。知らなかった方が良かったとさえ思うかもしれない、最初はそう思った。  

W02_3.jpg しかし、ワシントン大学の先生からの講義や、同じく日本から行った先生方、同級生の様々な意見や考えを聞いて、色々な考えがあるのだ、と思った。というのは、まずアメリカでは、より多く知れれば知れる程良いという考えがあり、また、治療法の有無よりも“診断が出来るのに診断しなかった”ことの責任を問われる危険もあるとおっしゃっていた。そこにはアメリカの文化や宗教に基づく日本との考え方の違いがあると感じた。また、たとえ治療法がなくても、“知る”ことで心の準備が出来たり、死ぬまでの間の余生をより充実したものにすることが出来る。確かにそうだなと感じた。私がもし子供を生んで、子供がそのような診断を受けたら、余生をより子供のしたいように、より充実したものにしてあげようと行動するであろう。それに、この診断は血液検査にて簡単に行うことができる。これだけ簡易な方法で病気の存在を知れれば、発症までに残される時間のQOLを高めることもできるし、良い点も多くあるということが分かった。

w02_4.jpg 他に印象に残ったことの一つは、Role of the chaplain in providing spiritual careである。chaplainは患者の宗教に基づき患者やその家族の話を聞いたりしてspiritualなサポートをする方々のことで、アメリカにおけるチーム医療において欠かせないという。日本にはこのような職業がそもそもないので、講義にてchaplainの存在を教えてもらうまではこのような職業があること自体全く知らなかった。アメリカではこのような職業が当たり前にあるということに驚いた。この点でアメリカと日本に違いが出るのは、やはり宗教の存在も大きく関係していると思った。日本では強く信仰している宗教がない人が多い。それなら、“重大な決断をする時、どうするか、どのように対処するか”という先生の問いに対しディスカッションを行い皆の意見を聞くことが出来た。私のように重大な悩みは逆に身近な人には言いにくい、という場合など、その時第3者としてゆっくり話をきいてもらえるようなchaplainのような存在がいれば、心が安らぐだろうし重大な決断も良い方向に進んでいってくれそうな気がする。日本にはchaplainという職業はないが、私は将来医師として、chaplainのように患者に向き合い話を聞き、精神的にもサポート出来るような医師になりたいと思った。

w02_6.jpg また、この研修で様々な話題について考え、ディスカッションをする上で、先生だけでなく同級生の様々な意見や考えも知ることが出来た。今回のような機会がない限り、生命倫理等に対する同級生の多くの考えを知ることはなかったと思う。その点でも本当に貴重な経験になった。多くの考えを知ることでより広い視野を持てるようになったと思う。このシアトル研修で得たことを、これから将来医師を目指すものとして出来る限り生かしていきたい。

 最後に、今回このような機会を与えていただいた枚方療育園の山西先生、引率していただいた古山先生、ワシントン大学のDr. McCormic、杏林大学の蒲生先生、など、この研修に関わって下さった全ての方々に心から感謝します。一生の思い出になりました。本当にありがとうございました。

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