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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

汕頭大学医学院での研修を終えて

● 福井 美穂さん (第5学年次)

 この度、汕頭大学医学院での研修というすばらしい機会をいただき、春期休暇中の2012年3月15日~22日の8日間の研修を無事終了いたしましたので、ご報告いたします。

 まず、私達がこの研修でお世話になった汕頭大学医学院についてです。汕頭大学医学院は、中国広東省の総合大学である汕頭大学の医学部で公立大学ですが、世界的な富豪である李嘉誠氏が経済的に大きな支援をしていることが特徴です。私達が今回見学する口唇口蓋裂センターなどの施設の運営や、白内障の手術、ホスピス医療、農村への医療ボランティアなどの貧しい人々への医療提供は、この李嘉誠基金会の支援によって成り立っています。また、この基金は研究に対する支援も大きく、研究に取り組む環境も整っているため、汕頭大学医学院から “Nature”や“The Lancet”に掲載されるような論文も多数発表されているようです。さらに、汕頭大学医学院内にある学生のための臨床技能センターには、様々な疾患を再現できる人型のシミュレータ‘SimMan’をはじめとし、分娩シミュレータや心音、呼吸音をコンピュータから入力し再現できる胸部模型などが導入されており、教育環境も充実している様子でした。このように、汕頭大学医学院は臨床、研究、教育とあらゆる面でレベルの高い大学であります。

 そして、その汕頭大学医学院での今回の研修の内容ですが、医療施設見学では、汕頭大学医学院及びその付属医療施設である第1病院、第2病院、口唇口蓋裂治療センター、眼科センター、精神疾患センターなど、多くの施設を見学しました。また、農村での貧しい人々への医療支援、末期癌患者への訪問医療への同行といった活動、汕頭大学医学院の学生とのディスカッションなども行い、非常に充実した研修でありました。

 医療施設見学の感想ですが、大学付属病院の設備についてCT検査室など私達が見学させてもらった範囲では、日本とほとんど同じように思えました。病棟の様子も廊下にまで患者用のベッドが置いてあることなど、雰囲気など多少の違いはありますが、ほぼ日本と同じように感じられました。また、眼科センターの見学においては、病棟から研究施設までがそろった大きな施設に、中国の医療は私が想像していた以上に進歩していると感じました。ただ、口唇口蓋裂センターに入院されていた患者で、農村に住んでいたため口蓋裂があるにも関わらず、十代後半まで治療をせずに生活していたという方がいたことには驚きました。都市部では高度な医療機器や環境の整った研究施設があり、たくさんの医師もいるのに、その一方、農村ではこの患者のように全く医療を受けることができていない人が数多くいるという問題点も抱えているのだと感じました。

 農村への医療ボランティアやホスピスの訪問医療に同行した時にも、同じことを問題点として感じました。汕頭大学医学院の活動や、それを支える李嘉誠基金会がなければ、農村の人々はこのような恩恵に与れないまま、健康を損ない、命を失っていったのではないかと思われます。

 この農村への医療ボランティアは、農村と都市部の医療の差が人々の生活に与える影響を少しでも減らし、必要であれば都市部の環境の整った病院への受診促進にも重要な役割を果たしていると考えられます。これらの活動に同行でき、医師、医学生による活動を見学できたことは本当に貴重な体験であったと思います。農村への医療提供では、子供達の眼科検診を手伝ったり、医師が貧困のため病院に行けない老人の家を訪問し、健康管理について指導する様子を見学したことを通じて、どんな環境にある人にも適切な医療を受ける権利があり、それを提供するための活動の大切さを実感しました。

 また、ホスピスの訪問医療への同行では、一軒目は新患の方を訪問し、患者に必要な鎮痛剤を処方するだけでなく、家族にケアの方法を丁寧に指導したり、受けることのできる支援を的確に提示し、患者と家族の生活を少しでも良い状態にしようと努める医師の頼もしい姿を見ることができました。また、二軒目には、以前から診療しており既に信頼関係が築かれている患者及びその家族と医師が、皆で感情を共有しにこやかに笑い合う優しい医師の姿を見ることができ、心温まる思いでした。

 今回の研修全体の感想として、中国は様々な領域で発展している部分と、そうでない部分の差が非常に大きいと感じました。例えば、大学内の教育施設や研究施設は非常に発達していて、日本でも取り入れられたら良いのにと感じることがたくさんあります。しかし、農村では、小さな診療所のような設備があるのみで十分な医療が供給されているとはいえないと思われます。お手洗いや水道設備もあまり衛生的ではなく、これから整備していく必要があると感じました。現地の先生によると、徐々に農村部の環境整備は進んでおり、医療制度ももっと充実するとのことですが、現段階では汕頭大学医学院からのボランティアによる健康診断や衛生教育が、現地の方々にとって重要な役割を果たしていることが実感でき、これらの活動に取り組む医療関係者の懸命な姿はとてもいい刺激になりました。今後もこの貴重な体験を忘れることなく勉学に励みたいと思います。

 最後になりましたが、今回このような機会を与えてくださった波田副理事長先生、現地でお世話になった程先生をはじめとする汕頭大学医学院の先生方、協和会国際交流基金、この研修に携わってくださった全ての方に深く感謝します。

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