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兵庫医科大学医学会
海外研修報告

汕頭大学医学院の研修を終えて

● 小泉 宣さん (第1学年次)

3月15日から22日まで中国の広東省汕頭の汕頭大学にて研修をさせていたただきました。臨床医学は言うまでもなく、基礎医学も終えていない1年生にとってこの研修がどのように有意義であったかという視点でこの報告書を書かせていただこうと思います。

 その前にまず、医大生としてまだまだ赤ちゃんな1年生(李嘉誠基金顧問ロウ先生にいわれました。ベイビーと・・・)が医学的研修を行った場合、どのような点で不利かを書こうと思います。二つあります。

 一つ目は医学的な知識の不足です。一週間様々な医療施設を見学し、多種多様な患者を見ましたが、病名を聞いてもそれがどのような病気かどのような症状がでるのか分からないので、実際の患者を見ても何も感じ取ることができませんでした。例えば、右顎のリンパが腫れた患者をホスピスの訪問診療で見ましたが、ガンが転移したから腫れているという情報だけではなぜホスピスの訪問診療をうけているのか分かりません。それがどのようなサインなのか、患者にはどのようなケアが必要かが分かれば、なぜホスピスの訪問診療をうけているのか分かったと思います。また、日本では見られない病気の患者をみせてもらう機会もありましたが、なぜ日本ではみられないで中国で見られるのかを知らないので、感想が「へえー」で終わってしまいました。知識があればもっとましな感想を持てただろうにと思います。医学的知識不足は参加者の誰もが感じたことと思いますが、一年生の自分が最も強く感じただろうと思います。ただし、この知識不足は上級生や先生方に質問することで補える部分もあります。逆に知識が無いからこそ得られた印象もあったので、そういったものを大事にしたいです。

 二つ目は医療システムの知識の浅さです。研修の中で中国の学生や先生方と交流する機会がありましたが、その中で日本の医療システムや医学教育について多く質問されました。全く分からない私は先輩に丸投げしてしまうという情けない状況に至ってしまいました。例えば、中国の学生から「日本の医学部では患者の訴訟からの身の守り方を学んだりしますか」という質問を受けましたが、一年生の自分には全く答えようがありませんでした。先輩方がいたからよかったですが、自分だけだったら答えられず、日本の学生はこの程度かとなめられていたところです。難しい質問に答えられないということは、難しい質問も出来ないということです。ある先輩は「ここのホスピスはどの国の体制を取り入れたのですか」という質問をしていました。自分には到底思いつかない質問です。知識が深いからこそできる質問だと感じました。

   上記のような一年生として不利な点がありましたが、これらは研修に対して自分なりの目標があれば大して問題にはならないと思います。問題がないというのは得られるものがあるということです。私の場合、李嘉誠基金について実際に活動を目にして知ることができたということがその一つです。このことについては後で触れようと思いますが、これは上記の不利な点があっても得られることです。

 次にどのように有意義であったかについて、一日一日の活動に照らし合わせながら書こうと思います。

一日目(15日):日本から汕頭へ移動、その後一週間宿泊するホテルにて歓迎ディナーがありました。中国の空港は予想以上に綺麗でした。特に汕頭空港は最近できたばかりなので日本の空港に引けをとらない綺麗さでした。空港からのバスの窓から見える景色とのギャップが、中国の経済格差を感じさせました。歓迎ディナーは一週間お世話になる先生方が揃っていて、今思うと、まだまだ緊張し長旅に疲れている学生にとっていわゆる社会交流の場だったように思います。要するに私にとって目上の方との食事はどうふるまうべきかを学ぶ場でした。

二日目(16日):汕頭大学・李嘉誠基金等の説明、汕頭大学・臨床技能センターの見学がありました。汕頭大学は大富豪の李嘉誠氏が経済的に支援しており、見学の時も思いましたが、かなり立派で優秀な大学です。特に臨床技能センターは兵庫医科大学には無い道具も数多くあったようです。一つ一つの器具を手に取りながら、確かにこのように臨床実習ができたら現場での自信につながるのではないかと思いました。少しうらやましかったです。医学を学び、医師となり、患者のために尽くす、という共通の目的を世界中の医学生が持ちますが、過程と到達レベルは大学によってかなり差があると感じました。

三日目(17日):貧困地域でのボランティアに参加しました。村の小学校で血圧や視力を測ったり、村民に病気や予防法に関してのパンフレットを配ったりといった仕事があります。汕頭大学の医学生と汕頭大学に研修に来ていたカナダの大学の学生と活動しましたが、彼らとの交流は自分がどれくらい国際交流できるのか、どのように国際交流すればいいのかを知るいい機会となりました。海外の同じ世代の人々が日本のどういったものに興味があるのか、世界共通の話題とは何なのか、言語の壁を克服する方法は何か、といった国際協力に必要なものが少しわかった気がします。ボランティアの後、貧しい人への訪問診療を見学しました。多くの学生を引き連れて医師が患者の家を訪ね、話を聞き診察し、薬を与えたりしていました。日本では目にしない光景でしたが、周りの景色や状況にあてはめると違和感がなく、これがこの地域に今必要な医療であり、もしかしたら適切な医療なのかもしれないと思いました。今まで当たり前だと思っていたことが当たり前でなかった現実を実感したとき、自分の世界観が大きく変わると思います。「医療=日本の医療」ではなく、その地域や住民の特性によって変化しうること、医療とは患者主体であるべきだということを知りました。

四日目(18日):潮州観光、郊外病院見学、八角土楼観光を行いました。郊外病院では主に眼科を見学しました。遠い場所からも患者がきているらしく、白内障の治療を多く行っているようです。日曜日でしたが、病院は多くの人でにぎわっていました。予防接種があったようで親子が数多くいました。中国といえば一人っ子政策、という印象が強いので子どもを二人連れた親がいた時は驚きを隠せず、思わず先生にそのことを尋ねたのですが、農村やマイノリティーなどでは二人認められているそうです。三日目とは全く違った医療形態、言うなれば日本の一般的な病院と似ていた気がします。三日目に地域や患者の立場から「適切な医療とは」と思考しましたが、医師になる身としてどのような医療形態で働きたいかと考えると少し息がつまりました。自分が働きたい医療形態と求められる医療形態にズレがある場合も将来的にあると思います。それと向き合うのも医師の一つの課題なのかもしれないと思いましたし、だからこそ道徳的な教養や医師になりたいと思ったときの初心を忘れてはいけないのだと感じました。

五日目(19日):ホスピスの在宅医療の見学、汕頭大学のボランティアに参加している学生との交流がありました。在宅医療において医師も看護師も白衣を着ていません。代わりに紫色のジャージを着ていました。周りの住人にそこに病人がいると思わせないようにするためです。地域のつながりが強い中国では非常に重要なことなのだと思います。学生との交流は我々が国際交流していると最も感じられた時でした。互いに互いの国の医療や医学教育について質問しあい、自国と他国の違いを知ることで今までより深い理解や疑問と、今までとは違った視点からの理解や疑問を得られた気がします。

六日目(20日):口唇口蓋裂治療センター、汕頭大学第二病院感染科、眼科、リハビリ科、精神科治療センターの見学を行いました。発生学を学んだばかりの自分にとって、口唇口蓋裂治療は非常に興味深かったです。日本人も中国人と同じアジア人なので口唇口蓋裂になる確率は同じくらい高いです。つまり、将来的に口唇口蓋裂の幼児への対処を求められることも十分あり得ます。そのように考えると、見学に普段より力が入りました。自分の日常に必要であると具体的にイメージできたとき、見学もより有意義なものになると実感しました。今後このような研修に参加する機会があったら、下調べを行い、自分にとって何の情報が必要であるか、日常に役立つかを意識できるようにしておこうと思いました。

七日目(21日):実は、私は20日の夜から熱にかかり、無事22日に帰国できるようにホテルで一日中寝ていました。他の参加者の皆さん、中国の先生方、兵庫医科大学の関係者の方々には迷惑をかけてしまい、本当に申し訳なく思っています。医学部の研修の一つの特徴と言っていいのかもしれませんが、周りに「医師」が数多くいるので、体調を崩しても適切な対処法を教えてくれ、そのために必要なものをくれたりするので、海外で体調を崩したという危機感を全く感じることなく回復することができました。本当に感謝しています。

 このように、私は汕頭大学医学院での一週間の研修を有意義に過ごすことができました。まだまだ未熟な一年生も得られるものが多くある研修内容だと思います。私が得たものは、一つにモチベーションです。これからまだまだ続く大学生活の最大の力となるモチベーションが高くなったように思います。同行した先輩方や中国の学生たちの知識の量や医学に対する姿勢を見ると刺激になります。基本クラスの仲間と生活する学校では得られないものです。これから2年生を迎えますが、それを乗り越えるだけのモチベーションを得られたと思います。このような研修ができたのも、中国でお世話していただいた汕頭大学の先生方や李嘉誠基金のロウ先生、同じ参加者の先輩方、兵庫医科大学の関係者のおかげです。本当にありがとうございました。

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