広報
兵庫医科大学医学会
海外研修報告

リエカでの病院実習を終えて

● 益子 沙友里さん (第5学年次)

r03_1.jpg 今回私達はクロアチア・リエカ大学で交換留学生として、8月29日~9月23日の間、病院実習に参加させていただきました。以前から留学には興味があり、又医学知識もまだ浅い学生のうちに海外での病院実習に参加することで、医師とは違った視点でその国の医療を見つめ、また自国の医療も見つめなおすことができるのではないだろうかと思い、参加を希望しました。

 私は、産婦人科で4週間お世話になりました。産婦人科の病棟は数年前に2つの病院が統合してできたものだそうで、他の病棟に比べ比較的新しい施設でした。毎朝8時からカンファレンスが始まり、皆コーヒーを飲みながら和やかな雰囲気で話が繰り広げられていました。その後病室へ向かい、患者さんの様子をチェックしたり、外来を担当したり、手術に入ったり、など皆とても忙しく動いてらっしゃいました。ここでは受け身の態勢では何も学べません。自ら何がしたいのか、何を見たいのか、など自分の意思をしっかりと伝える事でやっとスタートラインに立てることを改めて実感しました。私は1週目にIVFなどの不妊治療、2週目に婦人科疾患の外来や治療、3・4週目にこの実習で一番見たいと思っていた帝王切開などの手術を中心に見学することに決め、その各々の合間に正常分娩を見学しました。

r03_2.jpg クロアチアの病院での実習で、日本との違いに驚かされることはしばしばありました。その中でも1番驚かされたものは病室の構造でした。1部屋に3人の共同部屋だったのですが、そこにはパーテーションのようなものが一切見られませんでした。産婦人科病棟で女性しかいない、とはいっても個々のプライバシーの為に必要ではないのだろうかと思いレジデントの医師に、何故病室にはパーテーションのような区切りがないのかと聞きました。すると医師はちょっと困った様子で、そのようなことを聞かれたのは初めてだと言い、少し考えた後、それがクロアチアのcustom、習慣だからだ、と言い、逆に何故そのように疑問に思ったのか、日本は違うのか、と聞かれてしまいました。病室以外でも、病棟内には分娩室が8つあったのですが、それらには軽く区切りはあったものの、誰もが行き来できてしまうくらいのもので、日本では少し信じがたい空間でした。私自身、日本、その中でも設備のかなり充実している大学病院で大半の実習をしていたため、それが当たり前ととらえていたこと、そして日本の概念でしか医療を見つめていなかった自分の浅はかさに恥ずかしさを感じつつも、プライバシーの概念の違いを本当に大きく感じました。

 リエカでは、開業している個人病院をほとんど見ませんでした。大部分が国立、公立の病院です。医療費も分娩における個人負担額はほぼないに等しく、患者さんにとって一見手厚い医療が施されているように感じました。しかし裏を返せば、医師が受け取る賃金は日本に比べ圧倒的に少なく、個人病院を開業できるほどの余裕がほとんどないのだそうです。また、リエカの病院ではIVFなどの体外受精や不妊治療の分野に力を注いでいるそうで、これらに関わっている医師の方々はとても一生懸命仕事に取り組んでいらっしゃいました。日本でもクロアチアでも、おそらく世界各国でも言える事ですが医師は研究者であるということを改めて実感しました。これは先進国であれ、発展途上国であれ、同じなのではないでしょうか。

r03_5.jpg 今回、この実習中にどうしてもこれだけはやっておきたいと思っていたのが、手術の見学でした。この短期留学のプログラムに参加されていた先輩方が口をそろえて、「手術が何と言っても速い」というのを聞き、一体何故それほど速いのか、どんな手技が行われているのかをどうしても目の当りにしたかったのです。実際見学した感想として、本当に速かったです。それが果たして良いのかどうかは私が専門医になってから分かることでしょうが、手技がとてもダイナミックかつ大胆でした。この期間中に手術のアシスタントとして清潔部に3回入らせていただきました。執刀医の先生に英語で丁寧に説明をしていただく以外に、クロアチアの方の術衣はとても大きく、また手術台も高かったので術衣をゴムで縛ってもらったり、足台を何個か重ねてもらったり、と様々なところで本当に手厚くしていただきお世話になりました。

r03_4.jpg 病院実習に、週末にはイストラ半島やドブロブニク、プリトヴィッツェ国立公園へ観光しに行きました。20年程前に内戦が起こっていたとは信じられないほどきれいな街並みや景観でしたが、時折、内戦の爪痕を感じるような箇所もありました。特にドブロブニクでは、有名なオレンジ色の屋根も古いものと新しいものがあり、新しいものが内戦で壊滅してから建て直されたものだと聞き、ただただ美しい、素晴らしいと言って観ているだけではなく歴史背景を念頭において観ることができました。

 今回のリエカでの実習は、私にとって本当に貴重な経験となり、これからの人生の糧になるはずです。医療先進国の技術や手技などだけにとらわれず、発展しつつある国の現状をも目の当たりにすることで、今まで私の中になかった概念が生まれ、様々な視点から医療について考え見つめることができるように思います。

 最後になりましたが、このリエカでの実習に携わったリエカの病院の医師、看護師などスタッフの方々、中西学長、増山センター長、古瀬先生、国際交流センターの大辻さんに感謝して、私の留学報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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