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兵庫医科大学医学会

病理学(分子病理部門)

講座(部署)紹介

当教室では、悪性中皮腫、肝疾患、消化管疾患などの病理診断を行うとともに、臨床に還元される研究を推進しています。

1.悪性中皮腫の病態解明とその早期診断法ならびに分子標的療法の開発
悪性中皮腫は極めて予後不良であり、早期診断法の確立と有効な新規治療法の開発が求められています。私達は、早期中皮腫病変の形態的特徴を明らかにするとともに、分子生物学的手法を用いて、早期診断に役立ち、分子標的療法に繋がる遺伝子異常や分子マーカーを検索しています。また、悪性中皮腫の発生に関わるエピゲノム異常についても解析を進めています。

2.肝再生医療に向けた幹細胞から肝細胞への分化機構
重症肝疾患に対して、幹細胞を用いた肝再生医療の開発が望まれています。私達は、オーバル細胞(肝幹細胞/肝前駆細胞)の発生や分化に必須の分子を見出すとともに、幹細胞から肝細胞への分化機構についても解析しています。また、肝がんの治療法ならびに血管新生制御による発癌や術後再発の予防法の開発についても取り組んでいます。

これらの他にも、炎症性腸疾患に合併する大腸がんの早期診断法の開発、遺伝子治療による炎症性疾患の制御をテーマに研究を進めています。

研究の現状

概要
病気の根底に潜む“分子異常”を解明し、早期診断法の開発や分子標的治療法の確立を目指して研究を行っている。主に、悪性中皮腫を対象としているが、びまん性呼吸器疾患や潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性疾患についても研究を進めている。また、肝再生医療を目指して、肝臓の多分化能幹細胞由来と推定されているオーバル細胞(肝幹細胞/肝前駆細胞)の特性を調べるとともにその分化機構についても研究を行っている。


主題
  1. 悪性中皮腫の早期診断法:
    悪性中皮腫では早期病変を見出すことが治療戦略の鍵である。胸水に含まれる細胞や胸膜組織を用いてCDKN2A/p16INK4a癌抑制遺伝子を解析すると、この癌抑制遺伝子は反応性中皮過形成では保存されているのに対して悪性中皮腫ではホモ接合性に欠失していた。悪性中皮腫の発生にはCDKN2A/p16INK4a癌抑制遺伝子のホモ接合性欠失が深く関与すると考えられる。また、細胞接着分子CD146の発現は中皮細胞の腫瘍化に伴って増強することを見出し、CD146免疫染色が悪性中皮腫と反応性中皮との鑑別に有用であることを明らかにした。CDKN2A/p16INK4a遺伝子診断およびCD146免疫染色を補助診断として取り入れることで早期中皮腫の病理診断精度が向上すると期待される。
  2. 悪性中皮腫の生物学的特性:
    悪性中皮腫は胸腔内進展や胸壁浸潤を特徴とする予後不良な腫瘍である。これまでに、同意の得られた患者さんの胸水に含まれる細胞や胸膜組織を用いて種々の悪性中皮腫細胞株を樹立し、これらの細胞株を免疫不全マウスの胸腔内に移植してヒト悪性中皮腫の生物学的振る舞いを模造する同所移植モデルを確立した。このような悪性中皮腫細胞株や同所移植モデルを用いて、悪性中皮腫の胸腔内進展や胸壁浸潤を担う分子を同定し、悪性中皮腫の予後との関連性について検討している。また、同定した分子を標的にして新規治療法の開発を目指す。
  3. 悪性中皮腫の発生機序:
    悪性中皮腫ではCDKN2A/p16INK4aやNF2などのがん抑制遺伝子の欠失が見出されているが、がん遺伝子の変異や増幅および転座型の遺伝子変異などの報告は少ない。一方、悪性腫瘍の発生機序には、がん抑制遺伝子の欠失やがん遺伝子の機能獲得性突然変異などのゲノム異常に加えて、DNAメチル化異常、ヒストン修飾異常、非翻訳RNA制御異常、クロマチン構造異常などのエピゲノム異常も関与し、癌細胞ではエピジェネティック制御遺伝子の突然変異が見出されている。クロマチン制御に関与するBAP1遺伝子について解析すると、悪性中皮腫のBAP1遺伝子に変異が存在することが分かった。BAP1変異以外のエピゲノム異常についても検討するとともに、エピゲノム異常に関わる分子を標的にした悪性中皮腫の治療法の開発を目指す。
  4. 潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌の早期診断法:
    潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌(併発癌)は,炎症を背景に発生するために、その微小な病変を見出すことは難しい。併発癌における種々のムチン蛋白質の発現を調べると、このような癌では胃型ムチン蛋白質(MUC5AC)が高頻度に発現していた。MUC5ACは併発癌の早期病変を検出する有用な分子になると考えられる。また、併発癌にはMSH6遺伝子の変異、CDKN2A/p16INK4a遺伝子のメチル化、遺伝子の不安定性を認めたが、潰瘍性大腸炎に合併する悪性リンパ腫ではこれらの遺伝子変化は見られずEBウイルスが感染していた。併発癌の発生にはMSH6遺伝子の変異、CDKN2A/p16INK4a遺伝子のメチル化、遺伝子の不安定性が深く関与するが、悪性リンパ腫の発生ではEBウイルスの感染したBリンパ球が長期の炎症を背景に腫瘍化した可能性がある。
  5. 肝幹細胞/前駆細胞の分化機構:
    オーバル細胞には、c-kitレセプタ−・チロシンキナーゼが発現することを示し、多分化能幹細胞からオーバル細胞への分化にはc-kitレセプタ−を介したシグナル伝達が必須であることを明らかにした。また、IL-6ファミリーのサイトカインであるオンコスタチンMがオーバル細胞から肝細胞への分化を誘導することを明らかにし、オンコスタチンMが肝再生治療に有用であることを示した。


自己評価・点検及び将来の展望

平成17年4月に、3代目の教授として辻村が着任し、学生教育や病理診断を行いながら研究に取り組んできた。光陰矢のごとしで、平成29年4月には13年目を迎える。教室の独自の研究については病理学分野で最も権威のあるAm J PatholやMod Patholなどに発表し、稀少な症例については病理学的考察を加えて伝統のあるVirchows ArchやLung Cancerなどに報告した。また、共同研究の成果についても、世界のトップジャーナルであるCell, Nature、Nat Immunol、Nat Cell Biol、J Exp Medなどに報告している。

特定の遺伝子を変化(過剰発現や破壊)させた遺伝子改変生物は、その遺伝子が生体内でどのように機能しているかを研究するために必須の存在である。病的臓器を顕微鏡で観察して病気の本質について推論することは我々の得意とするところであり、このような遺伝子改変生物の病理組織学的解析を通じて、新しい知見を見出していきたい。また今後も、悪性中皮腫などの腫瘍に対して感度や特異度の高い診断マーカーの開発に積極的に取り組み、病理診断の精度が向上するように努めたい。また、国際的に評価される研究成果を世界に発信できるように、学内外の研究者を迎え入れ、他の研究グループとプロジェクト・チームを組み、更なる活性化を促したい。


辻村 亨 主任教授
辻村 亨 主任教授
責任者| 辻村 亨(主任教授)
専門分野:分子病理学
講師| 佐藤 鮎子
TEL| 0798-45-6427
FAX| 0798-45-6426

兵庫医科大学 〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1番1号 TEL:0798-45-6111 (代)

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