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兵庫医科大学医学会

炎症性腸疾患学(内科部門)

講座(部署)紹介

炎症性腸疾患(IBD)学講座は平成26年1月に開設された講座で、内科と外科の2部門で構成されています。内科部門はIBD、すなわち潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病(CD)などの消化管に発症する炎症性疾患を中心に、腫瘍性疾患も含めた幅広い内科診療や研究を行っています。本学は、IBDの診療において、新規受診患者数、DPCを基にした入院患者数とも国内随一のハイボリュームセンターとの評価をいただいています。豊富な臨床症例を基盤とした臨床研究を独自に行い、新規バイオマーカーや治療法の開発に尽力しているほか、厚生労働省の「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班」において治療指針の策定や多施設共同臨床研究への参加、炎症性腸疾患ガイドライン・小腸内視鏡診療ガイドライン・ベーチェット病ガイドラインの作成などにも関与しています。

取り扱う疾患:
UC、CD、腸管型ベーチェット病/単純性潰瘍、非特異性多発性小腸潰瘍症、感染性腸炎、腸結核、虚血性腸炎、放射線性腸炎、薬剤性腸炎、小腸出血、MEFV関連腸炎

研究の現状

概要

当科ではUCやCDの病態解明並びに診療に関するものを中心に研究を行っている。現在は下記に示すようなテーマを設け、病態の解明、診断法や新規バイオマーカーの確立、最適化された治療の選択を通じ、IBD患者の生活の質の向上、予後の改善を目指している。臨床研究、基礎研究のいずれにおいても、IBD外科だけでなく、消化管内科などの他の診療科とも連携し、より高度な研究体制を目指している。

主題

■病態

IBDの疾患感受性遺伝子の機能解析と発症に至る分子メカニズムの解明及びそれを標的とした新規治療法の開発
近年同定されたIBDの感受性遺伝子に対し、ノックアウト、トランスジェニックマウスを用い、またノックダウン、過剰発現系、CRISPR/Cas9システムなど分子生物学的手法を用いて遺伝子機能の解析を行っている。特に感受性遺伝子と自然免疫、オートファジー、Th17やMicrobiotaとの関連について解析を進めており、病態における中心的なpathwayを標的とした新規治療法の開発を目指している。

潰瘍性大腸炎新規発症例の臨床所見・内科治療・臨床経過に関する調査研究
2006年以降に発症した初発UC患者を対象に臨床所見、内科治療の内容や反応性・副作用発現状況、臨床経過について調査し、UC内科治療成績の全体像、時代的変遷を把握する調査を行う。

UC病変拡大例の臨床的研究:
UCは口側に病変が拡大することがあり、またこのような例は難治の経過をたどることが少なくない。UCの病変拡大の頻度やリスク因子について検討する。

妊娠合併IBDの臨床的研究:
欧米からは妊娠に対するIBDそのものの影響やIBD加療に用いる薬剤の影響について多くの報告がなされているが、本邦からの報告は少ない。当院の妊娠合併症例について検討する。

IBDに関する疫学研究:
UC,CDの発症に関連する全国多施設共同の疫学研究に参画し、成果を収めてきた。今後、患者診療に関するグローバルな疫学研究にも参画していく。

■診断

CDの診断とモニタリングにおける小腸内視鏡、MR enterographyの検討:
CDの自然史を改善するため、早期診断や客観的なモニタリングの重要性が指摘されている。CDに対するパテンシーカプセルやCEの有用性、MR enterographyとバルーン小腸内視鏡の比較試験などの全国多施設共同研究を主導し、成果を収めてきている。今後、全国多施設共同前向きランダム化比較試験の主導など、この分野の臨床研究を発展させていく。

Dysplasiaの自然史に関する検討:
UCに発生するdysplasia、とくにlow grade dysplasiaの自然史は十分に解明されておらず、その取り扱いについては統一見解がない。UC合併腫瘍を形態別、異型度別に追跡し、腫瘍の進行頻度を明らかにする調査を行っている。

IBDサーベイランス内視鏡の最適化に関する検討:
上記の早期発見に寄与するサーベランス内視鏡の制度向上と効率化は、今後の対象患者増加を鑑み、重要な課題である。UCサーベイランス内視鏡において、世界で先進的な手法とされている全大腸色素内視鏡観察群と、本邦で開発されたNBI(narrow band imaging)全大腸観察群を比較する全国多施設共同前向きランダム化試験を主導し、良好な結果を得た。今後、CDサーベイランスも含め、更にこの分野の検討を先進的に進め、国際共同研究にも参画していく。

■治療

IBD患者に対する生物学的製剤投与の最適化:
難治性UCに対し、2009年にタクロリムス、2010年にインフリキシマブ(IFX)が保険適応となったが、両薬剤の使い分けや位置づけに関する明確な基準はない。両薬剤の使い分けに関するevidenceを確立することを目的として、中等度から重症のステロイド抵抗性もしくは依存性UCに対する両薬剤の治療効果を前向きに比較検討中である。また、粘膜治癒を達成しているUC患者を対象として、IFX治療中止症例と継続症例の寛解維持率を比較検討する多施設共同前向き試験に参加している。その他、抗TNFα抗体製剤に併用する免疫調節剤や成分栄養剤の有効性を検証する多施設研究にも参画している。今後、別の分子を標的とした新規生物学的製剤が継続的に参入することが見込まれ、豊富な症例数を背景に、薬物動態的検討や効果予測に寄与する画像診断所見やバイオマーカーの検討など、translational researchを含め、治療strategyの最適化に寄与する研究を深化させていく。

潰瘍性大腸炎入院症例の内科治療のout comeの検討
入院が必要な中等症から重症のUC患者背景や検査値、疾患活動性、治療内容等を調査し、大量下血などの急激な病態の悪化による緊急、準緊急手術(非待機手術)に至るリスクファクターを明らかにする。また調査結果から、内科的治療の経過中に適切なタイミングで手術適応を決定し、安全に外科的治療に移行する判断の材料となる知見を得る。

難治性UCに対するIFX導入後効果減弱例の臨床的研究:
抗TNF-α抗体製剤であるIFXは主にステロイドに抵抗性・依存性の難治性患者に用いられているが、治療に難渋することがいまだ少なくない。難治性UCにおけるIFX治療の最適化を確立するために、IFXの血中濃度と抗IFX抗体の抗体価を測定や内視鏡検査で粘膜の評価を行い、病勢との関連を検討している。

難治性UC患者に対して実施される各種免疫統御療法がサイトメガロウイルス(CMV)の再活性化におよぼす影響に関する臨床的研究:
難治性UC 患者を対象として、それら患者で実施される血球成分除去療法、抗TNF-α抗体療法、並びに強力な免疫抑制療法である経口タクロリムス療法やシクロスポリン持続静注療法といった各種免疫統御療法の治療過程において、CMV 再活性化がどのように推移するのか、末梢血のCMV-DNA PCR(定量)を中心とするウイルス学的検査所見により臨床的に検討中である。

炎症性腸疾患患者に合併したニューモシスチス肺炎の発症及びその転帰
炎症性腸疾患に対して免疫抑制治療を行った際に合併するニューモスチス肺炎について検討を行い、発生頻度、リスク因子、予防策について検討する。

腸管型ベーチェット病/単純性潰瘍症例に対する内科治療の有用性:
腸管ベーチェット病の原因は不明であり、未だ治療法は定まっていない。抗TNFα抗体製剤であるアダリムマブとステロイドの有効性および安全性を明らかにすることを目的とした、多施設共同前向きオープンラベルの無作為比較試験を主導している。また腸管型ベーチェット病診療ガイドラインの作成に参画し、エビデンスが乏しい本疾患の診療に寄与するコンセンサスを形成している。

非特異性多発性小腸潰瘍症(SLCO2A1関連腸炎、CEAS)の検討:
本邦で発見された上記疾患の原因遺伝子を特定する多施設研究に参加し、成果を収めた。今後、病態や治療の研究にも参加していく。

自己評価・点検及び将来の展望

IBD(UC・CD)について、上記の主題を対象として、それぞれの臨床病態の解析を行ってきた。その結果については、論文、学会、研究会にて随時報告を行っている。臨床面では、当科には数多くのIBD患者が集まっており、社会的な期待は大きい。その期待に応えるためには、診療、研究だけでなく、若手医師への教育の充実も重要な課題であり、様々なプログラムを実践中である。目の前の患者の利益に直結するような臨床技術の向上や教育、そして将来の患者の利益につながる基礎研究を車の両輪として社会に貢献する診療科でありたい。


中村 志郎 教授
教授| 中村 志郎
特任准教授| 堀 和敏(兼任)、渡邊 憲治(兼任)
准教授| 樋田 信幸
TEL| 0798-45-6663
FAX| 0798-45-6790

兵庫医科大学 〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1番1号 TEL:0798-45-6111 (代)

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