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兵庫医科大学医学会

外科学(肝・胆・膵外科)

講座(部署)紹介

  1. 消化器(肝胆膵領域)外科治療
    肝胆膵領域悪性腫瘍の外科的治療研究、コンピューター画像治療支援システム
  2. 肝胆膵領域悪性腫瘍の分子生物学的解析
    癌における遺伝子発現と調節機構
  3. 肝再生・肝硬変の再生医療
    HGFによる肝再生・線維よりの回復、幹細胞移植と肝再生
  4. 難治性肝疾患の分子・遺伝子治療
    肝癌の遺伝子治療、劇症肝炎分子治療
  5. 消化器疾患とサイトカインシグナル伝達
    消化器におけるTLRシグナルと免疫応答

研究の現状

概要
肝硬変を伴う進行肝癌の治療を目標に、肝線維化・肝再生・肝癌発育進展のメカニズムを研究し、線維化の抑制・再生の促進・肝癌の制御に向けたアプローチを行っている。 また、外科手術後に問題となる腹腔内癒着のメカニズムを解析し、治療に向けた研究を行っている。一方臨床研究として、3-DCT画像を利用した術前肝切除シミュレーション、領域別肝予備能把握のためのCT-アシアロシンチ、門脈圧亢進症例における脾摘術の有用性などについて研究を行っている。


主題
  1. 肝線維化の研究:
    線維肝・硬変肝における線維性瘢痕の消滅と肝機能改善を目的に、動物モデルにおける肝細胞増殖因子(HGF)(Nature Medicine 1999)およびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-1 (Gastroenterology 2003)の遺伝子導入の有用性、肝臓の再生過程における骨髄由来細胞の関与(Hepatology Research 2007)などを報告している。一方、肝線維化に関わる重要な細胞とされるヒト肝星細胞の活性化に重要である中間系フィラメント(Fascin)の同定とその役割解明を行っている(Laboratory Investigation 2012)。
  2. 肝切除後再生のメカニズムに関する研究:
    肝再生における転写因子NF-κBの活性化に注目して、 NF-κB活性化シグナルの上流に位置し自然免疫の主役をなすToll-like receptor (TLR)シグナル伝達系の関与を検討し、 TLRの共通アダプター分子であるMyD88の切除後肝再生における重要性を報告した(Hepatology 2005)。 また、門脈血流変化によるヒト肝切除後再生誘導機構の臨床研究に取り組んでいる。さらに肝再生における血管新生の重要性を検討し、報告している(Surgery. 2012)。
  3. 炎症性肝疾患の制御に関する研究:
    おとり核酸(NF-κBデコイ)の導入により、 肝マクロファージ(Kupffer細胞)におけるNF-κBの活性化を制御する研究を行い、 P.acnes/LPS投与劇症肝炎モデルにおいて炎症の制御と致死率の改善を得ている(Hepatology 2003)。 また同様の方法で、四塩化炭素投与による肝線維化モデルにおいてNF-κBデコイ効果を検討したところ、 線維化の抑制効果を報告している(Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2007)。
  4. 癌の発育・進展の抑制に関する研究:
    HGFは血管増生因子としての作用を有し、腫瘍の発育・進展に直接関与している可能性がある。そこで、 HGFのアンタゴニストとして働くNK4をマウス生体内に強制発現させ、皮下腫瘍モデル・転移性肝癌モデルにおける腫瘍の発育・進展を検討し、 有意な腫瘍増殖抑制効果を認めている(J Hepatology)。また、骨髄移植細胞によるGVT効果による腫瘍増殖を抑制や、HGFによるGVHD抑制現象を報告した(Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2007)。
  5. 3D-CT画像を利用した肝切除シミュレーションに関する研究:
    放射線科・日立メディコとの共同研究として, 3D-CT画像から門脈・動脈・静脈・肝実質成分をそれぞれ抽出・統合することで得られる画像上で、術前に任意の切除ラインで肝切除シミュレーションを行い、 正確な残肝体積の評価。 生体肝移植グラフの正確な適応評価を実施している(Hepatology 2005)。 現在シミュレーションの適応を拡大し、膵疾患、胆道疾患における手術にも応用している。
  6. CT画像とGSA-SPECTを統合した領域別肝予備能評価に関する研究:
    肝切除後の残肝機能評価として、体積のみではなく残存する肝機能の正確な評価が重要である。そこで、 肝予備能評価法のひとつであるGSA-SPECT(アシアロシンチ)に、その欠点を補う目的でCTによる解剖学的要素を統合させたCT-GSA SPECTを核医学診療部との共同研究として実施し、残肝機能を予測可能であることを報告した(J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2010)。
  7. 術後腸管癒着形成に関する研究:
    免疫学教室との共同研究であるが、手術時の組織傷害部位におけるNKT細胞から産生されたIFN-ϒがSTAT1を介して凝固系因子のひとつであるPAI-1 の発現を増強させ、癒着形成を促進させるメカニズムを解明して報告した(Nature Medicine 2008)。現在、これらの腸管癒着形成の研究結果を派生させ、私立大学戦略的基盤形成支援事業(文科省補助事業)として「外科手術後癒着形成:分子機構の解明と診断・治療技術の開発(総事業費 220,000千円)」に関する研究を2014年より開始している。
  8. 門脈圧亢進・脾機能亢進症例における脾摘術の検討:
    脾機能亢進症例において脾摘術を施行すると肝予備能が改善する傾向を認めており、近年、門脈圧亢進症合併肝癌症例に対して腹腔鏡下脾摘術先行による肝切除治療の臨床検討を行っている。また脾機能亢進を伴う肝線維化マウスを作製・使用して、脾摘後には Ly-6Clo 単球/マクロファージ分画が古典的 Wntシグナルを介して肝機能が改善されることを報告した。(J Hepatology 2015)


自己評価・点検および将来の展望
外科学を含めた医学の21世紀における重要な課題のひとつは再生医療であろう。これまでに取り組んでいる肝硬変の遺伝子治療も広い意味では再生医療であるが、新たに臓器を再生する取り組みが必要である。 肝臓の臓器再生については、 近年開発が進歩しているマトリックススキャフォールドを利用して、hepatic stem cellと骨髄由来細胞の共同作業により臓器を構築できる可能性があり、 この方面の研究を進めるとともに、今話題のiPS細胞などの多分化能を有す万能細胞の分化誘導による臓器再生も検討していきたい。 また、 臨床研究においては、 客観的で明確な残肝機能評価の確立をめざすとともに、 高度進行肝癌の治療法として、 新しい治療法の確立に向けた研究を行っていきたい。

藤元 治朗 主任教授
藤元 治朗 主任教授
責任者| 藤元 治朗(主任教授)
専門分野:消化器外科学・腫瘍外科学・移植外科学
教授| 波多野 悦朗
准教授| 平野 公通
講師| 岡田 敏弘、宇山 直樹、鈴村 和大、裵 正寛
TEL| 0798-45-6582
FAX| 0798-45-6581

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