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兵庫医科大学医学会

救急・災害医学/救命救急センター

講座(部署)紹介

(1)救急医学医療としての研究:外傷や疾病による過大侵襲と二次性臓器障害における生体反応の機序の解明と新しい治療法の開発を中心に展開している。本年度進める研究を臨床と基礎に分けて述べる。

<臨床研究>

  1. 栄養治療による侵襲反応の制御の研究
    a. 早期経腸栄養の開始が重症患者の予後に及ぼす効果に関する関西地区多施設観察研究:すでに倫理委員会を通し、関西地区で研究参加募集をかけている。また、申請者は「日本版重症患者の栄養管理ガイドライン」作成委員会(日本集中治療医学会)の委員長を務めており、発言力と指導力があるため、本研究にも多くの施設が参加する見込みである。
    b. 特殊栄養剤による病態制御の研究:昨年に引き続き、アルギニン・グルタミン・HMB配合剤とn-3系多価不飽和脂肪酸(魚油)の静脈投与剤を用いた研究を進める。特に後者は企業との共同研究で臨床応用を目指している。
    c. サルコペニアと転帰:筋肉量の減少と機能低下(サルコペニア)と転帰の関連をCT画像解析で検討している。栄養管理介入によるサルコペニアと予後の改善も検討する
  2. 瞳孔自動計測モニターの開発:現在瞳孔径の測定は目視で行われ、対光反射も主観的に判断される。そこで民間企業とともに本機器を開発し、臨床データを集積・解析している。
  3. 重症患者のIL-18遺伝子多型と予後:IL-18の遺伝子多型と病態、予後の関連を引き続き症例数を増やして検討している。
  4. TNF-alphaとIL-18のプロモーター領域の遺伝子多型と予後の関連:患者の遺伝子と健常人の血液を用いてin vitroにおける同領域の遺伝子多型とサイトカイン産生、トロンボモジュリンの遺伝子多型と転帰の関連を発見し、さらに多施設研究を進行中である。
  5. 重症敗血症における免疫グロブリン静脈投与(IVIG)の効果:重症敗血症患者の血中IG濃度と予後の関連、IVIG投与の効果に関する研究を引き続き進める。
  6. 本邦の敗血症の疫学調査:重症敗血症を対象とした日本救急医学会および集中治療医学会による多施設観察研究の結果をすでに5本の英文論文として発表した。現在、治療(特に免疫グロブリン)と予後の結果を論文化中である。

<基礎研究>

  1. 水素ガスの抗酸化作用に着目した臓器障害軽減の研究
    a. 水素吸入による肺障害の軽減:昨年度確立したラット出血性ショックモデルを用いて、引き続き実験を進めている。
    b. 水素含有水の腹腔内投与による侵襲後下腸管麻痺改善の研究:開腹侵襲後の腸管麻痺が水素含有水の腹腔内投与により改善することを確認した。現在機序の解明に取り組んでいる。
    *なお、一連の研究成果に対してアメリカNASAから共同研究のオファーもあった。
  2. 新ペプチドーム解析法による敗血症性ショック誘因物質の探索:本技術を確立し、症例集積している。網羅的解析でショックを誘導する未知のペプチドをstyle="list-style:none;"同定する予定。合成ペプチドを作成して生理活性を検討し、血管作動性ペプチド作成法を探索する。(科研費取得)
  3. 好中球NETsと病態の研究:重症患者の好中球アポトーシス、NETs、および凝固障害の関連を敗血症患者の検体を用いて研究している(科研費取得)

(2)災害医学医療としての研究:主として以下の2テーマに大きなエフォートがかけられている。

  1. 救急現場(病院前救護)をモデルとした災害現場と指導医療施設間で高品質な情報通信システムの開発
  2. 実際の災害医療経験とデータに基づく研究:特に当科はJR福知山線脱線事故では現場医療に加えて、病院でも113名の患者を受け入れ、多数同時発生患者に対するトリアージと治療の経験、さらに2時間40分の詳細なビデオ映像記録があり,貴重な研究資料となっている。また、災害医療に対応した職員が多数おり、医療者の心の研究において貴重な研究対象となっている。

  3. *なお、これらの研究テーマは、最終的には患者の免疫力、生命力を向上し、感染症を制御する治療の開発につながるものであることを明記したい。

研究の現状

概要
救急医学医療としての研究では、外傷や疾病による過大侵襲と二次性臓器障害における生体反応の機序の解明と新しい治療法の開発を中心に展開している。災害医学医療としての研究では、救急現場(病院前救護)をモデルとした災害現場と指導医療施設間で高品質な情報通信システムの開発を進めている。


基礎

[主題1]好中球(PMN)の侵襲下アポトーシス(Ap)制御:
免疫グロブリン静脈投与(iv)が侵襲下PMNのAp抑制を解除し、肺好中球集積を抑制し、肺障害を軽減した。

[主題2]侵襲下PMN Apの魚油(FO)による制御:
独自開発のFO乳剤が,3日のivでPMN膜成分をn-6系からn-3系に、LT産生をB4からB5へシフトし、全身炎症下のAp抑制作用を解除した。

[主題3]急性肺障害のFOによる防御:
FO ivが急性肺障害モデルで、肺PMN集積抑制、肺サイトカイン産生減少、肺障害軽減を誘導した。

[主題4]肺血管内皮細胞障害の制御:
in vitroモデルで、LPSによるtight junction障害を魚油が軽減した。

[主題5]侵襲下精巣細胞Ap:
男性ICU生還者の不妊の機序として,精巣細胞のApとシグナルを発見した。

[主題6]一酸化炭素(CO)の抗炎症作用:
CO吸入が抗炎症性メディエーター分泌促進、組織細胞Apの軽減、血管内皮細胞保護、血管拡張に働き、急性腎障害を軽減した。

[主題7]急性肺障害におけるIL-18の役割:
IL-18ノックアウトマウスを用いて解明した。

[主題8]ビリルビンの臓器保護作用:
ラット黄疸モデルで解明した。

[主題9]肺障害におけるヒスタミン(H)シグナルの役割:
2チャンバーシャーレ膜上にHUVEC細胞で血管内皮細胞血管モデルを完成し、Hブロッカーで検討している。

[主題10]一酸化炭素(CO)吸入による虚血再灌流障害軽減:
ラット心臓移植モデルで CO吸入による心筋保護作用を検証している。

[主題11]水素ガス(H2)の臓器保護作用:
H2腹腔還流がラットイレウスを軽減した。機序を解明している。

[主題12]新ペプチドーム解析法による敗血症性ショック誘因物質の探索:
本技術を確立し、症例を重ねている。網羅的解析し、ショック誘導する未知ペプチドを同定する。合成ペプチドで生理活性を検討し、血管作動性ペプチド作成を目指す。

臨床

[主題13]重症患者のIL-18遺伝子多型と予後:
IL-18遺伝子多型が血中IL-18濃度と予後に関連した。

[主題14]重症患者の予後予測式開発:
当科ICU患者の臨床データを統計解析し作成した。

[主題15]遺伝子多型と予後の関連:
患者の遺伝子と健常人の血液を用いてTNF-αとIL-18のプロモーター領域遺伝子多型とサイトカイン産生、トロンボモジュリンの遺伝子多型と転帰の関連を発見した(多施設研究、進行中)。

[主題16]アルギニン、グルタミン、HMBの経腸投与による侵襲下筋蛋白代謝改善:
重度外傷で大腿動静脈血アミノグラム較差に与える影響を測定している。

[主題17]重症敗血症における免疫グロブリン(IVIG)i.v.:
血中IG濃度と予後の関連を検討している。

[主題18]サルコペニア(S)と転帰:
転帰の関連をCT画像解析で検討している。栄養管理介入によるSと予後の改善も検討する。

[主題19]本邦敗血症の疫学調査:
救急医学会と集中治療医学会の多施設観察研究の結果を5本の英文論文にした。治療と予後の結果を論文化中である。

[主題20]瞳孔自動測定モニターを用いて臨床データを集積している。同時に機器の改良を共同開発企業とともに進めている。

災害
 

[主題21]避難所の食環境:
東北地震避難所で差し入れが炭水化物に偏っていた。

[主題22]病院前救護の情報通信システム:
救急隊が現場からERにビデオ喉頭鏡・現場・患者の動画を転送し医師の指示を仰ぐシステムを完成し、検証中である。

[主題23]多数傷病者受け入れ時の新トリアージ:
JR脱線事故でのトリアージ(113名)で急遽考案した新トリアージ法を英語論文化し、イギリスBBC放送に出演した。

[主題24]死亡者の家族の精神的問題:
家族の心のケアについてJR脱線事故を対象に検証した(日本語論文)。

[主題25]トリアージオフィサー(TO)の精神負担:
傷病者に黒タッグをつけるTFの精神的負担を調査で明らかにし、対応策を検討した(学会発表)。



自己評価・点検及び将来の展望
多忙な救急治療業務と平行して進めざるを得ない現状であるが、侵襲と生体反応、二次性臓器障害の発生機序の解明と新しい治療法の開発を進め、新知見を蓄積している。同時に、新しい分野である災害医学研究を行っている。今後は、さらに効率的な研究システムを工夫して研究を進めるとともに、研究成果の臨床および社会還元を推進する。

臨床准教授| 中尾 博之
講師| 宮脇 淳志
TEL| 0798-45-6514
FAX| 0798-45-6813

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